マガジンのカバー画像

加速主義

248
運営しているクリエイター

2022年9月の記事一覧

美馬達哉『リスク化される身体』読んだ

美馬達哉『リスク化される身体』読んだ

生権力的なものに関心はあるが、いきなりフーコーとか読んでもなあと思って、これ読んでみた。面白かった。

ちなみに先日紹介した熊代亨先生の本でも引用されている。

著者の美馬達哉氏は神経科学を専門とする医師、研究者のようだが、著書の多くはフーコー等をベースとした医療、健康、社会の相克を主題としている。

本書はリスクという概念がいかに個人や社会に影響を与えてきたかを論じるものである。リスクには、計算

もっとみる
熊代亨『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』読んだ

熊代亨『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』読んだ

精神科医で著名ブロガーである熊代亨先生が一昨年出された本やっと読んだ。

タイトル長いね。

内容はタイトルのとおり。私たちは自由で快適な生活を求めて社会を消毒していった結果なにを失ったかというもの。著者はその象徴として、立ち小便をする隙間もないほどコードが敷き詰められた東京という街を挙げている。

一つには、労働者に求められるクオリティが爆上がりしたこと。かつてならちょっと鈍臭い人程度の扱いだっ

もっとみる
第76回日本食道学会総会参加した

第76回日本食道学会総会参加した

都内某所でやってる日本食道学会総会行ってきた。

まず開会式で島田英昭会長より「私はいつまでもコロナコロナ言ってても仕方ないと思っている。正常化を進めていかなくてはならない。今回は批判は覚悟の上で準備を進めてきた。特に上級演題の司会、演者の皆さんには現地参加をお願いした」との力強いお言葉いただいた。

外科だけでなく、内視鏡医、腫瘍内科医、放射線科、病理も参加する横断的な学会だけど、まあマイナーな

もっとみる
西村賢太『二度はゆけぬ町の地図』読んだ

西村賢太『二度はゆけぬ町の地図』読んだ

今年の序盤に亡くなった西村賢太さん。
老害化する前にちゃんと死んだのは立派というか、まあ大して長生きする気もないし、そういうつもりで不摂生をしていたようだ。

老害になる前に逝きたいと考えている私は、そういう立派な作家の書いたものが気になる。

というわけで読んじゃった。『貧窶の沼』などを収録した短編集である。

作家の分身たる、北町貫多とか「私」は日雇い労働で食いつなぎつつ、怠惰に暮らしている。

もっとみる
王力雄『セレモニー』読んだ

王力雄『セレモニー』読んだ

あまり評判の良くなかったCOCOAの運用終了のお知らせがあった。

アプリの質については素人なのでよくわからないが、我が国は曲がりなりにも自由な国家なのだから、監視がスムーズに行くとは思えなかった。

そんなことを思ったのは、最近たまたま王力雄の『セレモニー』を読んだからである。

著者は中国の反体制派として有名な作家である。
テーマはパンデミックとテクノロジーによる監視だと聞し、すごくタイムリー

もっとみる
『男性権力の神話』やっと読んだ

『男性権力の神話』やっと読んだ

昨日、男性特権()の話をしてしまったのは、遅ればせながらこの必読書を読んだからである。

内容は、いかに男性が差別されているかを統計や実例から丁寧に綴っていくというものである。

ちなみに日本語版の推薦文はそれ以上いけない社会学者こと山田昌弘氏である。

本書で列挙される男性差別の事例のほとんどはTwitterのアンチフェミ界隈で見慣れたものだった。

ちょうど昨日も小山(凶)さんが男性差別につい

もっとみる