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カラマーゾフの兄弟 人間の生への讃歌
著者 ドストエフスキー
訳 原 卓也
出版 新潮文庫
この作品と「罪と罰」、カミュの「異邦人」とサルトルの「嘔吐」は、僕の選書などの読書スタイルや読書を通しての思想にかなり影響を及ぼしている本だ。
※光文社の亀山訳ではなく、新潮文庫の原卓也訳を強くお勧めします(翻訳文章としての凄みが、原卓也訳にはあり、まったく古臭くなく、重厚な語りが体験できます。しかし、亀山訳にはそうしたものが僕には感じられませんでした。また、亀山訳には意訳も散見していることが理由です)
再再読での感想
女と金の事しか脳にないダメ親父フョードルの3人の息子達の三男である主人公アレクセイ(=アリョーシャ)の物語
物語のコアは長男ミーチャとその恋人グルーシェニカ
放蕩、女好きでダメな奴だけど自分に正直な長男ミーチャが、最終的に真人間となり、父親殺しの裁判判決にて、酸いも甘いも知らない若造裁判官に判決を言い渡される最後は、何とも言えない気持ちになる。
また、親になってからの初再読として、子どもの虐待の話や、少年たちで描かれる子ども特有のコンプレックスなども印象に残る。
とりわけ、次男イワンの叙述詩、大審問や、少年コーリャを通して痛烈なイエズス会への苦言を読み返すと、当時の社会に対するドストエフスキーの思想と信仰が垣間見れる。
ドストエフスキーが、生涯テーマとした超人哲学の集大成を、アリョーシャというスーパービジョン的立場の主人公を登場させた事により、成し遂げているのかなといった感想。
3つのキーが見え隠れする。
愛、自由、罪深い欲望とも取れる生への讃歌
ゾシマ長老👉🏻愛
無神論者イワン👉🏻自由
フョードルやミーシャ👉🏻畏怖、欲望、道化、正直といった強い生への讃歌
アリョーシャ👉🏻フョードル、ミーチャ、イワンそしてゾシマを見届けるスーパービジョン的位置付けの象徴
と言ったところだろうか?
冒頭にある、
一粒の麦が地に落ちて死ななければ、
それはただ一粒のままである。
しかしもし死んだなら、豊かに実を結ぶようになる
(ヨハネによる福音書 第十二章)
これに対しては病床にてゾシマが明確にアリョーシャへ答えている。
「人生はお前に数多くの不幸をもたらすけれど、お前はその不幸によって幸福になり、人生を祝福し、ほかの人々にも祝福させるようになるのだ。
これが何より大切な事だ。」
第二部より引用
親になってから再読してみると色々と深く考えさせられる。
また、誰しもが、卑しきスメルジャコフになり得るし、男は大なり小なり、フョードルやミーチャ的な部分も持ち合わせているかもしれない。
いつの時代も、人間は権力、金、男女のもつれに左右されやすいが、だからこそ欲深い人間の生への讃歌が生き生きとする。
人間の生への讃歌=カラマーゾフとも言える。
今回の再再読では、本作品の登場人物全てが自分自身に内在する欲望であり、自身への問いかけのような錯覚も覚え、読後の余韻が抜けない。
何度読んでも得るものがあるのは凄いの一言。
kindle版には光文社と新潮社があるようだが、新潮文庫版をお勧めします。
※理由は本記事の冒頭参照。
第一部で読むのに苦労する場合
カラマーゾフ家やそこに関わって来た登場人物の相関図や時系列、年表などノートに書きながら読むと、それらを埋める為に自然と読みやすくなるかもしれません。
第一部で登場人物の背景を綿密に描かれた事により、第二部からのダイナミックな展開が読み手を惹きつけて離さないものとしているように思います。
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