「蔑視」とは思わなかったけど
素直に内容を見れば「ジェンダー平等はスローガンにするまでもないぐらい当たり前のこと」と言いたいのは伝わります。「働きながら育児する女性が生き辛さを感じない社会にしよう」というメッセージも。
2019年12月に発表された日本のジェンダーギャップ指数は153か国中で121位。前回からダウンしています。つまりいまだに「ジェンダー平等」をスローガン止まりにしている政府を批判していると解釈できます。そう捉えれば、必ずしもこの動画は批判されているような「女性蔑視」には当たらないと考えられます。
ただ私がわからないのは、登場する女性の設定です。何の仕事をしているのでしょうか?
ずっとリモートワークだったと言っていますけど、それが可能な業種は限られています。医療従事者や清掃員、スーパーのパートなどリモートをできない人たちこそコロナ禍で大変な思いをしているのです(もちろんリモートワークで頑張っている方も大勢いらっしゃるわけですが)。
「国の借金が~」と最後に付け足すのも意味不明。借金を減らすために税収を増やせと言いたいのでしょうか? 同じCMの15秒バージョンでは「消費税が上がってもお金を使おう」というニュアンスが強くなっていました。税率アップが生活を直撃しない人なのかな?
率直に言うと、私はこの動画から「庶民生活に対する無理解」を感じました。少し前に阪急の「月30万円だけど仕事楽しい」という広告が炎上しましたよね? あれを見た時の感覚に近いです。仕事をセーブしても月30万もらえる業種だけで世の中は回っているわけじゃない、と。
私の知る限り、書店員で手取り30万もらえるのは正社員の課長クラスです。でも大多数を占める契約社員やバイトがいないと営業できない。この動画を作った人はそういう知識や視点を欠いているのでは?(「給料が安いなら副業で稼げばいい」というのはまた別の議論)。そしてその疑問はコロナの恐怖を必要以上に煽り、視聴率を荒稼ぎした報道番組への不信感に直結するのです。