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「いま読めてよかった」一冊
今月も折り返しを過ぎました。
2月は通常28日しかありません(次のうるう年は2024年)。ゆえに時給で働く非正規書店員は3月にもらう給料の明細を見て「うっ」と硬直します。
あと何気に大変なのは読書メーターです。
「20冊&5000ページ読破」を毎月の習慣にしています。雑誌やコミック、絵本なども平等にカウントするので、冊数はどうにかなる。でもページ数はある程度意識しないとクリアできません。
だから、というわけでもないのですが、重い腰を上げて600ページを超える↓に取り掛かりました。
凄かった。この余韻をどう綴ったところで正確に伝えられる気がしません。率直な感想は「いま読めてよかった一冊」です。
ページが進むにつれて、今作が帯びているであろう使命(直木賞受賞の理由ではない)が頭に浮かんできました。舞台は日露戦争前夜から第二次大戦に至るまでの満州。帝国主義、五族協和、領土収奪、石油、地政学、援蔣ルート。どうしたって現在進行形の世界情勢に目が向きます。
序盤は柳広司のスパイ小説「ジョーカー・ゲーム」に近い雰囲気を感じました。意図的なのかたまたまなのか、ちょっとスロースターター気味なのです。ただ筆が乗ってきた中盤以降はまさに一大巨編。様々な立場で生き抜く者たちの理想と思惑が交錯し、血腥い現実を突きつけられ、いつしか己を当事者のひとりみたいに感じます。そしてどうしたらいいかわからなくなる。
たしかに満州国は傀儡だった。しかしソ連の脅威を感じつつ帝国主義下の厳しい世界を生き延びるうえで、日本には資源が決定的に不足していた。中国共産党のやり方はどうかと思う反面、日本軍が大陸でおこなったことのすべてを正当化することもできない。じゃあいったいどうすれば。。。
メディアや知識人やSNSが提示するわかりやすい答えに飛びつかず、いちいち悩み、考える。安易な二元論を避けると共に「どっちもどっち」みたいなもっともらしい結論で思考停止することもしない。何が正しいかを問い続ける。結局はその姿勢だけが答えなのかもしれません。
ただひとつ、不勉強な自分にも確信できたこと。それは431ページに記されていた↓に集約されています。
「未来を予測することは、過去を知ることの鏡なのではないか」
歴史を学ぶことの意義、それは同じ過ちを繰り返さないこと。過去に起きた出来事から教訓を引き出し、よりよい未来を作るために活かすこと。なぜあの戦争が始まったのか? 本当に避けることはできなかったのか? そしていま我々はどういう道を選ぶべきか?
640ページが必然の傑作です。分厚さに怯まないで本当によかった。よろしければぜひ。読んで共に考えましょう。
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