
「本屋を守りたい」系の記事を書くメディアに伝えたいこと
最近こういう記事をよく目にします。
関心を持ってもらえるのはありがたいことです。本屋を「文化のインフラ」と呼んでもらえるのは誇らしいし、各地の取り組みを紹介してくれるのも助かります。
一方で、どうしても視点が偏っていると感じます。仕方ないのかもしれませんが、現場の最前線で働く者への配慮に乏しい。「書店みずからの努力は欠かせませんが」なんてサラッと書いているし。
出版不況といわれるけど、書店員は暇な職業ではありません。少なくともチェーン展開している本屋には、日々膨大な数の荷物が来ます。雑誌が売れなくなった? でも手作業で一冊ずつ付録を挟み込む労苦はいまも同じです。ゴムで留めたりひもで縛ったり。ものによってはプラスチックの袋に詰めてシュリンク。テープショットを使っているお店もあります。
女性誌と幼年誌が一緒に入る月の頭とかどれだけ大変かわかりますか? 雑誌が前日午後に入荷するのはごく一部の大型店のみ。大抵は発売日の朝です。開店までの限られた時間にやらないといけない。梱包を開け、付録を挟み、棚に出す。
最新号が入る前日にはリストを見つつ、棚から古いものを抜いていきます。もちろん営業中に。大量の雑誌を抱えているのに問い合わせをしてくるお客さんが普通にいます。そして返品の荷物を作る際は付録を別にする。付けたものをわざわざ外す。この作業の意味がいまだにわかりません。
あと重要なこと。繁忙期じゃなくても、土日祝日は一年中混雑しています。電話も多いです。人件費を削られ、給料は底辺。心ない声を浴びることもしばしば。それでも我々はフル回転してお店を守っています。
「本屋を守りたい」という記事を書くメディアは、実際に本屋を守っている末端の声にもっと耳を傾けてほしい。じゃないと問題の実情を理解できず、正義感を煽る精神論か机上の空論にしかなりません。
たとえば書き手や著名人がPRしてお客さんが一時的に増えても、従業員が少なければ対処しきれない。出版社が重版やサイン本に関するツイートをし、それをご覧になった方々から電話が殺到しても情報が来てなければ何もお答えできません。その対応に時間を取られれば品出しなど他の業務が滞り、お店へ来てくれた皆さまにご迷惑をお掛けすることになります。
何が言いたいかわかりますか?
「お客さんを増やすこと」はもちろん大事。でもいまは「売り上げを維持しつつ、書店側の利益率を上げる」改革こそが急務なのです。しかしこれは出版社が協力しないと始まらない。国の要請も必要でしょう。各メディアには「出版不況」「本屋を減らすな」と騒ぐ前にこの論点を掘り下げてほしい。そう願っています。
業界を現場から変えていきたい。ご理解いただければ幸いです。
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