2023年元旦の「名人芸」
帰宅後にABEMAで観戦しました。
終盤に放送チャンネルが切り替わり、決定的瞬間を見逃しました。でも無料で視聴できたことに感謝しています。↓で確認できましたし。
「ムタ……イヤァオ!!!」というシンプルなマイクに泣きました。
中邑選手の入場を見たときにも、会場にいるわけでもないのに涙が込み上げました。久し振りって。細かいしぐさや指の動き、そして表情のうねり。無言で見入ってしまう色気がますます進化していて驚きました。「真輔も間とか空気感で闘えるレスラーになったのか」と。
軽々しく触れられるテーマではありませんが、ある種の円熟の領域へ入ったように感じました。
円熟といえば、少し前に読んだ↓もそうでした。
何だろう? いいとか悪いとか面白い面白くない、伏線がどうのストーリー展開がどうの、そんなオートマチックな評価の俎上に乗せること自体が野暮に思えてくる短編集なのです。そんなこんなのすべてを作者はとっくの昔に飲み込み、消化したうえでここに至ってるんだから、つまらぬ粗探しはやめてじっくり味わおうよみたいな。
もちろんその境地へ到達していない者が形だけ真似てもダメです。単に「伏線回収がない」「物語が平坦」と評され、未熟者の烙印を押されてしまう。専門学校で創作を学んでいた頃、先生方がよく嘆いていました。「村上春樹っぽい小説を書きたがる学生が多いけど、あれは村上春樹だからできることだ」と。
「ムタ vs SHINSUKE」は今年のプロレス大賞でベストバウトに輝くかもしれない。でもあえて獲らない方がらしい気がします。両者ともにその種の勲章はもはや必要としていないし、そういう価値観を超越した別次元の名人芸だったから。
目指せば必ず辿り着く、なんて甘いものではないでしょう。いま私にできるのは本屋で働きながら「ハードボイルド書店員日記」を毎週書き続けること。精進します。