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「予期せぬ形で叶うこともある」と教えてくれた一冊

まさかです。

新日本プロレスの社長兼エース、棚橋弘至選手が2026年1月4日で現役を引退すると発表しました。あと1年2か月。

年上である彼の奮闘から「俺も頑張ろう!」という活力をいただいてきたひとりです。何度かnoteでも取り上げさせていただきました。

ずっと固定されていた「プロレスラー=馬場か猪木」みたいなイメージはかなりアップデートされ、いまでは棚橋選手の名前を真っ先に挙げる人も多くなった気がします。ぜひ動画配信サービス「新日本プロレスワールド」などで試合もチェックしてほしい。

彼は著書もいくつか出しています。オススメを一冊紹介させてください。

2015年に出版されました。版元は飛鳥新社です。

タイトルを見て「全力でやれば夢は叶う系」かと危惧されましたか? 大丈夫です。棚橋選手はあくまでも天才ではなく逸材だから。自らを「特筆すべき能力はない」と評する人だから。

実際、彼の子どもの頃の夢はプロ野球選手になることでした。でも才能の壁を感じて挫折。次は新聞記者か大学の先生になりたいと考え、マスコミ系に強い大学へ入ったそうです。しかしその道も険しそうだと悟り、目標をプロレスラーに軌道修正したとのこと。

教科書にはさまざまな偉人が登場する。その多くは「夢をかなえた成功者」たちだ。だけど、それは突出した才能を持ち、順調にその芽を伸ばして、ついに「子どものころの夢」を叶えてしまった、本当にごく一握りの「選ばれし人」なのだ。
僕を含めて、世の中の大半の人間は「子どものころの夢」はかなわない。

「全力で生きる技術」 棚橋弘至著 飛鳥新社 18P

そうかもしれません。

一方で励みになるのは、彼が新日本のトップスターになって「エース」の称号を手に入れたこと。つまり最初に憧れたプロ野球の世界ではないけど、独自の形で夢を叶えているのです。さらに新聞記者を志して磨いた文章力を活かし、こうして本も出している。

かつてスティーブ・ジョブズが伝説のスピーチで語っていました。過去に学んだ何かが将来思わぬ形で役立つことがあると。目の前のことに全力で取り組み、ひとつひとつ点を刻んでいけば、それらが結果的に繋がり、未来の自分にとってかけがえのない財産になると。

棚橋選手はまさに「Connecting the dots」の体現者なのです。

私自身、子どもの頃の「小説家になる」という夢は叶っていません。諦めたわけではないけど、当初の予定では二十代のうちにデビューするはずでした。その意味では「挫折した」と言い切れます。

しかし作家になりたくて多種多様なジャンルの書籍を読み、本を好きになったことが書店員という天職に繋がりました。働き続けるうちに埋もれた名著の存在や業界の実情をもっと伝えたいと考えるようになり、数年前にnoteを始めました。

いまは毎週日曜に「ハードボイルド書店員日記」を発表しています。読んでいただくだけでありがたい。有料の小説をご購入いただいた際はそれこそ夢のようでした。本当に感謝しています。

夢は必ず叶うとは限らない。むしろ叶わない方が多い。だからといって自棄にならず、いまを精一杯生きていれば、予期せぬ形で実現してしまうこともある。棚橋選手から学び、かつ私自身が人生を通じて実感した真理です。

「全力で生きる技術」ぜひ。

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