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「自分なりのスタート」を切る一冊
さあ2022年。
昨日までの日常ががらりと変わったわけではありません。暦やカレンダーは人の都合で決めたもの。12月31日と1月1日はほとんど一緒です。外は寒く、コンビニのスイーツは安く、財布の中身は物悲しい。
一方、元旦や誕生日など「区切り」を迎えることが気の持ちようを改めるキッカケになるのもたしか。「今年は去年よりもいい一年にしよう」と決意するだけでだいぶ違うはず。根拠はないけどそう思っています(←レミオロメン「粉雪」)。
というわけで、新年一発目の読書にオススメな一冊をご紹介します。
巷では「伊坂幸太郎の集大成」「伊坂全部載せ」と評されています。たしかに過去作のキャラクターが再登場したり「○○の××に似ている」というリメイクっぽい人が出てきたりします。その意味では、他の伊坂作品を多数読んでから本作を開く方が王道なのかもしれない。ちょうど村上春樹における「騎士団長殺し」のように。
実際私も「騎士団長~」のレビューでは「これを最初に読むのはもったいない」と書いています。でも考えが変わりました。「書かれた順番に読むのもいいけど、興味を持ったところから入る方がより個人的な体験になるのでは?」と。
たとえば私は「ビートルズが最も輝いていたのは中期である」と考えています。でも友人Aは「いや、いちばん彼ららしい音楽は初期のものだ」という説を曲げません。友人Bも「最高傑作はホワイトアルバム」と当たり前のように言い張ります。
よくよく話を聞いてみると、最初に体験したアルバムがみんなバラバラでした。私は「ラバー・ソウル」でAは「ハード・デイズ・ナイト」、Bは案の定「ホワイトアルバム」。誰も一枚目の「プリーズ・プリーズ・ミー」からスタートしていなかったのです。
邪道といえば邪道。でもだからこそ、各々が誰にも影響されない自分なりの「ビートルズ観」を作り上げ、自由な楽しみを積み上げられたのではないでしょうか?
「ラバー・ソウル」のレコーディングじゃないけど、伊坂さんの小説を最新作から逆回しするのも楽しそうです。この人は同じスタイルを長年続けてきたと見られがちですが、実はかなり試行錯誤しています。「ん?」と首を傾げたくなる企てもありました。でもその後の作品を読むとちゃんと活かされているのです。もちろん今作にも。
何かの本で読みました。「失敗なんてない。上手くいかない方法がひとつ見つかっただけだ」と。そして「成果」を「実験」より先に体感できるのは後追いの特権です。ぜひ自由な読書をプロデュースし、そこで得た何かを仕事やプライベートに応用してみてください。
「みんなそう言っている」や「順番通りに読まなきゃ」みたいな一部の決めつけに従う必要はありません。直感を信じ、読みたい作品から読みましょう。本はいつ読み始めるのも途中でやめるのも自由です。本書から「伊坂を巡る冒険」に乗り出してもいいし別の旅を閃いてもいい。何かのキッカケにしてもらえたらそれだけで嬉しいのです。
マイペースに、自分なりのやり方で心地良いスタートを切りましょう! 今年もよろしくお願いします。
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