内幕11:なぜ、どの本屋にいっても本の品揃えが同じなのか
『どこの本屋に行っても品揃えがほとんど同じ』
そう思ったことはないだろうか。
入ってすぐの正面目立つところには、新刊や売れ筋の専用棚が作れている。
レジまわりなど手前の方に雑誌や週刊誌が並んでいる。
ビジネス書や文芸書の棚には、売れ筋本が並んでランキング形式に展開されているところもある。
ほとんどの本屋で品揃えしているものは、ほとんど変わらない。
というよりもどこの書店に行ってもほぼ同じものが並べられている。
そうした品揃えは、世の中で何か求められているのかを知る上では良い。
「今は投資に興味が持たれているんだな」とか「健康志向に意識が向いている人が多いのかな」などを把握できる。
しかし、売れ筋ばかり並べられていては、欲しい本を買うことができないこともある。
それでは、本屋に行く意味がないのではないだろうか。
Amazonで注文した方が在庫もあり、早く届くので便利ではないだろうか。
最近よく言われる“独立書店”は、「雑誌やコミックは置かない」「分野を絞った選書」など、店主が選書しているために店舗ごとに特色ある品揃えになっている。
他のチェーン店などと違って、同じような品揃えではないので、見ていて楽しい。
今まで読んだことのない本に出会える可能性もある。
すなわち本との出会いの場、人と人との繋がりの場である、本来の“本屋”としての役割を果たしていると言えるのではないだろうか。
ではなぜ、多くの本屋はどこも同じような品揃えになってしまうのだろうか。
それは、“売れる本しか置けない理由”があるからだ。
“売れる本しか置けない理由”とは何なのか。
主に以下の3点があげられる。
① 売れる本しか刷られない
② 売れる本しか入ってこない
③ 売れる本を並べないと生き残っていけない
それぞれについて詳しく説明する。
■ 売れる本しか刷られない
出版社も本が売れなければ会社として存続は難しい。
そのため「売れる本を作る」ことに注力する。
売れる本を作るために、インフルエンサーやベストセラー作家などに偏ることもある。
売れる本を作った方が早く回収できることから経営を成り立たせるためには、仕方ないことかもしれない。
■売れる本しか入ってこない
出版社は売れる本は多く刷られるが、売れる見込みがないものに関しては、初版を抑える傾向にある。
そのため、売れる本は多くの書店に行き渡るが、冊数の少ない本に関しては、全ての本屋に出回ることがない。
これは、返品問題が関係してくる。
返品されると本の問屋である取次も出版社もコストがかかりリスクとなるからである。
最初から売れる部数だけに絞ることでコストもリスクも減るため、必然的に売れる見込みのある本以外は、発行部数が少なくなるのである。
これでは、本屋に行く意味がないと言われても仕方がないかもしれない。
■売れる本を並べないと生き残っていけない
本屋も生き残るためには必死である。
売れない本をいつまでもおいていても、明日の生活がどうなるかはわからない。
そのため、売れる本を売らなければ生き残っていけないのである。
こうした問題の根本にあるのは、“本屋の利益率の低さ”であると言える。
例えば利益率が30%あり、売りたい本を売れる環境が整えば、それぞれの本屋の特色がでて、その書店の“ファン”ができることで、全国から訪問してきたり、通販で欲しいと注文する人もいるかもしれない。
出版社は、長く良い継がれる良い本を作り、それを以下にして売っていくかを考え、取次は、流通の構造を根本的に見直して返品率を下げる取り組みをし、本屋は、送られてきた本を並べるだけでなく、自分達が売りたい本を読者に届けるための施策(イベント開催など)を真剣に考えていかなければいけないと私は考える。
どちらにせよ、今のままではさらなる読者離れを引き起こし、本屋で本を買う人を減らしていくのは間違いないと言える。
他力本願から自力本願にならなければ、業界全体として明るい未来は見えてこないのかもしれない。