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内幕8:本が売れない時代でも、多くの新刊が出るのはなぜか
1996年には1兆円以上もの書籍が売れていましたが、2020年には7,000億円を下回りました。
売上高が下がっているにも関わらず、年間約7万点もの新刊が出版されています。
一日あたり約200点の書籍が発売されていることになります。
本屋の数も1万店を割り、全体の販売額も減っているのであれば、当然新刊点数も減りそうなものですが、新刊点数は20年前と比べても減っていません。
本屋の店頭には、昔も今も、多くの新刊が並んでいるんです。
もちろん、毎日それだけの数の書籍が出版されるので、本屋の店頭に全て並ぶことは有りません。
雑貨や文具など、本以外の商品は売れ残ると値引きされますが、本には値引きがありません。
再販売価格維持制度という制度があるからです。
また本は、売れ残ると出版社に返品されます。
こうした仕組みのおかげで、出版社は自分の決めた定価で本を出すことができ、本屋は価格競争することなく、安心して定価販売ができるのです。
本屋は、新刊が入ってくると、既刊と入れ替えるために返品します。
新刊点数も毎日200点以上でているので、多くの本は店頭に並ぶ期間があまり長くありません。
売れ筋などは残したりしますが、売れ残った本は冊数を減らしたり、全て返品したりします。
そして、なんと本の返品率は、30%以上にもなります。
これは、取次(本の問屋)にとっても出版社にとってもかなりの負担になります。
出版社は、返品されてしまうと売上が立たなくなるので、売上を上げるために新刊を出します。
新刊を出すことで、また本屋に並びます。
有名な出版社や販売実績のある出版社なら取次に多く仕入れてもりったり、本屋にも多くの本を並べてもらうことは出来ますが、中小の出版社は一冊並べてもらうだけでも大変なんです。
出版社は、本を取次に本を卸します。
卸した時点ではまだ返品の可能性がありますが、売上代金が入金されるケースもあります。
つまり、新刊を出せば、すぐに現金を手にすることができるのです。
なかには、手元の現金が足りない場合に、新刊を出すことで現金を手にして、支払いにあてる出版社もあるといわれています。
他の業界では経営の苦しい会社は、新商品を出せなかったり、出しても売れると限らないので出せないことも多いのですが、出版社の場合は、経営の苦しい会社が新刊を次々と出すこともあります。
会社として成り立たせるための、資金繰りとして新刊を出すことが多いので、本屋の数や書籍の販売価格が減少しても新刊点数は増えて居るのです。
本来は、出版社も多くの人に長く読みつがれるような『良い本』を作ることに注力することが大切だと思います。
とりあえず新刊を出して資金を生み出すを繰り返していると、売れなくなるので、いつかは閉業になってしまう可能性があるかもしれません。
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