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Bon voyage

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旅の途中で出会ったかけがえのないものたち。 いつもの見慣れた場所に留まっているとしても、そこではないどこかを歩いているとしても、いつだって旅。終わることのない旅の途中。
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#思い出

無事かえる

出勤途中の電車の中で気づいた。

カバンの中。

家の鍵が無い!

自宅出た時、確かに入れた。

いつものここに。

思い当たるとしたら、Suica出した時だ。

電車を降りて、会社へ向かう途中

乗車駅に電話した。

落とし物の届けないですか? 

鍵を落としたようなんです!

駅員さんは言った。

「今朝、届け物はありますが・・・」

あった、良かった。

「因みに、どんなものですか?」

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ノートルダム

ノートルダム

2019年の4月15日にパリのノートルダム大聖堂が燃えた。

あの塔が、屋根が、焼け落ちてしまった。

悲しい出来事だった。

あの惨劇から1年半たった今日、ふと思い出したこと。

2018年の1月末、ノートルダム大聖堂を訪れたとき

老いたシスターがひとり

観光客で混雑するなかで、

行き過ぎる人たちにカゴを差し出しながら、

言葉をかけていた。

何を言っているのか聞き取れない。

「Vou

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ひぐらしが聞こえない

ひぐらしが聞こえない

ふと気づいたことがある。

カナカナ~が聞こえない。

いつから? 

そういえば、去年も聞こえなかった気がする。

都会にお住まいの方にはピンとこないかもしれない。

程よい田舎にある我が家、狭い庭だけど、毎年蝉が地中からはい出し、抜け殻が百個以上みつかる。(今年は時間がなくて数えていないけど)

ミ~ンミ~ンとか、ジージーとか、オーシンツクツク、ツクツクホーシとか

去年も今年も聞こえた。確か

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手紙 1

手紙 1

ぼくは今もあの旅を思い出す

きみは元気にしていますか?

いつものように、自信たっぷりに

初めての街を地図も持たずに歩いて

結局迷ったぼくを

駅の見える通りまで案内してくれた

たったそれだけの

ほんの20分くらいの出会いだけど

10月になれば人道支援活動に参加すると言って

学生のころテレビで見たニュースに心を痛めて決めた夢だと

笑ったきみの笑顔が今も

忘れられない

元気でいま

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学生時代を懐かしむ

学生時代を懐かしむ

コロナウイルスのために世界中で大騒ぎしている。

できるだけ外出は控えましょう~と言われているけど、コロナ騒ぎが大きくなってから何かと用事ができて、何度も出歩いている。

いつもたくさんの人がいる中央線も総武線も山手線も京浜東北線もガラガラ。駅も人が少ない。

そんななかで、たまたま母校の近くに用事があった。

何年振りかで母校の前を通った。

校舎が立て替えられて様変わりしたけど、周囲の景色には

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ひとり旅でもひとりじゃない

ひとり旅でもひとりじゃない

「クロッカスが咲いちゃったよ」と言って、母はこっそり涙をぬぐった。

な、な、何? 今、旅から帰っただけなのに。

大学生の時、どうしても流氷が見たくなった。

初めての北海道、しかも真冬の。スキーをするでもなく、ただただ流氷を見に行く。節約の旅だから宿泊はユースホステルの予定だし、大まかなスケジュールしかたてず、気分と状況次第で決めようと、初日の宿泊しか予約していなかった。

そんな適当な旅を母

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人を信じるとは           ヘッセを探しに行った旅での出来事

人を信じるとは           ヘッセを探しに行った旅での出来事

聖地巡りじゃないけれど、憧れる人物に関わる場所、物には触れてみたくなるのは当然のこと。大好きなヘルマン・ヘッセの故郷カルプと、愛してやまない作品「ナルチスとゴルトムント(知と愛)」の舞台でもあり、また、ヘッセ自身も通った神学校、マウルブロン修道院(作中ではマリアブロン)へどうしても行きたい気持ち止みがたく、私は旅に出た。

シュトゥットガルト中央駅から急行に乗りミュールアッカーという駅で降りる。マ

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