手紙 1
ぼくは今もあの旅を思い出す
きみは元気にしていますか?
いつものように、自信たっぷりに
初めての街を地図も持たずに歩いて
結局迷ったぼくを
駅の見える通りまで案内してくれた
たったそれだけの
ほんの20分くらいの出会いだけど
10月になれば人道支援活動に参加すると言って
学生のころテレビで見たニュースに心を痛めて決めた夢だと
笑ったきみの笑顔が今も
忘れられない
元気でいますか?
いつか日本にも行ってみたいと言っていたのに
元気でいますか?
天国でも
きみは
あの、どこかおどけた様子でみつめる目の
そばかすだらけのほっぺで
笑っていますか?
ぼくは
あれから3年経ったのちに
きみの名前と顔写真を
海外メディアのニュースで見かけた
だけど
ぼくは誰をも憎むことはしない
日本の夏は猛暑
でも、気づけば、ほら
ぼくの小さな庭で、もう
秋の虫たちが鳴いている
こんな夜は
きみを思い出す
ころころと笑っていたきみを
ほら、あそこに駅が見えるでしょ
もう大丈夫ね
じゃあ、気を付けて
そう手を振って、少し進んでから
「Bon voyage!」と叫んだきみに笑顔が
頭から離れない
だから ぼくは
世界の平和を祈り続けるよ
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