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ノートルダム
2019年の4月15日にパリのノートルダム大聖堂が燃えた。
あの塔が、屋根が、焼け落ちてしまった。
悲しい出来事だった。
あの惨劇から1年半たった今日、ふと思い出したこと。
2018年の1月末、ノートルダム大聖堂を訪れたとき
老いたシスターがひとり
観光客で混雑するなかで、
行き過ぎる人たちにカゴを差し出しながら、
言葉をかけていた。
何を言っているのか聞き取れない。
「Vous voulez………des sœurs ......?」
あなた方も姉妹に……なんだかそんな風に、勝手に思った。
その手には、聖母マリアのカードを握りしめて。
小さな女の子がカゴにコインを入れた。
聖母マリアのカードをどうぞと、
微笑みながら差し出すシスター。
「メルシー」
老シスターのその笑顔が、とても素敵だった。
女の子ははにかみながら受け取り、母親の元へ走る。
あっ募金、してもいいんだ。
そう気づき、私はそっと
小分けして持っていた5ユーロ紙幣をカゴに入れた。
シスターが微笑みながら「メルシー」
聖母マリアのカードをどうぞーと差し出す。
今度は私が「メルシー」
1枚、ありがたくいただく。
あなたのその笑顔に、とても癒されましたよ。
出来る限りの笑顔で返した。
何故かふと、あの老シスターの
輝くような笑顔を、今日、思い出した。
何故だろう。
たぶん、今日、何かが不安だったからだ。
たぶん、今日、何か寂しさを感じていたからだ。
たぶん、今日、何かが怖くなったからだ。
あの老シスターはお元気だろうか。
大聖堂の火災にもパンデミックにも
心を痛めているのではないか。
「メルシー!」
シスター、
私は、
あなたの、その笑顔に癒されましたよ。
今日、思い出したら元気が出ましたよ。
「メルシー!」
いつかきっと、私も
誰かの幸せのお手伝いができますように。
世界が平和でありますように。
時折、虚空から降ってくる寂寥感も
奇妙な不安感も
みんな浄化されますように。
シスター
あなたからいただいたカードの聖母マリアも
ずっと、ここで微笑んでいますから。
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