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Moulin Rouge ~レシピ編
前回で全てまとめ込むはずがヒマに任せて深掘りした結果、ネーミングから膨らんだ考察に終始してしまった。
今回はスロージン使用レシピとそのアレンジ回。
これで完結させたい。
そもそもの発端はスロージンを使ったカクテルをプッシュしたいと思っていたところ、スローテキーラをオーダーされたり遊びに行ったBARでブラックホークが作られていたり、インスタでスロージンを使ったカクテルのちょっとした企画(非公式)があったりと、何かやたら耳目に入ってきたから。「求めよ、然らば与えられん」てヤツですね。
まずは知っているカクテルを書き出してみる。
Bentley
Black Hawk
Black Thorn (No.2 / English)
Charlie Chaplin
Moulin Rouge
Sloe Tequila
日本においてはマイナー揃い。おそらく世界的にみてもそんなに人気はないと思うけどどうだろう。
個人的にベントレーは好きでエイジングさせたものを作っている。機会あればぜひ(宣伝)。
さて、そんな中でなぜムーランルージュをチョイスしたかというと、これもたまたま話題に上ったから。まあ理由なんてそんなもんでしょう。
おさらいとして、前回でも表記したカクテルブック記載のレシピ。
Moulin Rouge
<stir or shake / cocktail glass>
Sloe gin 2/3
Sweet vermouth 1/3
Orange bitters 1dash
スウィートヴェルモットで香りの複雑さを出してオレンジビターズをアクセントに、といったレシピ。
しかし、ストレートで飲んでみるとわかるけどスロージンはかなり骨格が細い。リキュールというには頼りないくらいに。
後を引かないさっぱりとした甘味はヴェルモットにまるまる持っていかれてしまうほどだ。
試作を数度して出した自分なりのレシピが以下。
Moulin Rouge
<shake / cocktail glass>
Sloe gin (Gordon)55ml
Sweet vermouth (Noilly Plat)5ml
Absinthe (Pernod)2dash (注いだグラスへ最後にドロップ)
骨格の細さはボリュームでカバー。スロージンを全面に押し出す。
エアをしっかり含ませるシェイクをすればヴェルモットの香味はこの程度でも十分に引き出せる。オレンジのヒントやアクセントはビターズなしでも取れるので(足りないと感じる場合はオレンジピールを1枚、アンゴスチュラ1dash入れてシェイクすれば似たようなニュアンスが出せる)、ヴェルモットのニガヨモギ感を膨らませるのにアブサンを使用。
しかしこれにはもう一つ理由がある。
ムーラン・ルージュと聞いて僕は一も二もなくパリのキャバレーが浮かんだ。というかそれしかイメージできなかった。そこからさらに連想を進めるとロートレックに思い当たる。
なぜなら彼は入り浸っていたらしいことを読んだことがあったから。そしてアブサンも飲んでいたと言われている。彼の作品は「アブサンによって描かれた」と言われるほどに。
19世紀後半~20世紀初頭のパリ。界隈のアーティストとくればアブサンを嗜んでいて当然くらいのイメージはある。
ボードレールやゴッホ、ヴェルレーヌ、ワイルド、ピカソなど枚挙に暇がない。
そのイメージに重ねた。…というより重ねたかった。
つまり個人的な憧憬みたいなもので出来上がったのがこのレシピ。
「日本人はフランスに憧れ、イギリスを尊ぶ」みたいな事を誰かが言っていたけど、なかなかに否定できない気がする。
要するに、これは個人的なそういうものの結果として生まれたようなところがある。だからそれを指摘されても「そうですね」と苦笑するしかない。
しかし出来として悪くないと思っている。
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