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覚書

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わたしが消えたくなった夜のための
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2021年5月の記事一覧

何者

何者

 五月になった。あと二十日で誕生日だねと、祖父は嬉しそうに言うのに、なぜかわたしはひやっとした。永遠のティーンエイジャーが終わる。

 何者かになる。ならなければいけない。ずっと急かされていたように感じる。だれに?だれでもいい。考える間もなく、ただ焦っていた。何者かになる。名前をもたず、替えが利くわたしであるならば、わざわざ生きなくていいと思った。何者かになる。それがなければ、わたしはわたしになれ

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反応

反応

 高校で受けたこどもの発達についての授業で印象的だった話。生まれたばかりの頃は、出来事に対する反応が快か不快かの二種類しかないが、成長するにつれて段々と、喜怒哀楽や恥ずかしさ悔しさといった複雑な感情を知っていくらしい。感情というのは、目の前のできごとに対しての後付けの脳の反応でしかないんだけど。感情が複雑化していく図を見たのを憶えている。

 人間修行十九年目、最近のわたしは、猛烈にうれしいことが

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十代最後の晩餐

十代最後の晩餐

 このあいだ、もうすぐ二十歳になっちゃうよー、大人になってしまうよー、いやだー、と駄々をこねていたら、「二十歳になったからといって、大人になれるわけではない」と言われた。なるほど、真理だ。しかし、年金の支払いは始まる。

 「十代とかいうたった二文字に未練を残さない、が今年の目標です」と、去年のわたし、元日に言っていた。

 9歳のとき、こどもでいることは特権なのだと気づいてしまった。こどもらしさ

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