藤 琉

「聖武天皇素数秘史」にて第7回ゲンロンSF新人賞優秀賞。電子書籍にて刊行予定。手書き筆文字PCフォント「バジョカフォント」シリーズ作者。2005年9月より1年2ヶ月、ヨーロッパ・アフリカ・中東・アジアと海外23ヶ国を旅した経験も。

藤 琉

「聖武天皇素数秘史」にて第7回ゲンロンSF新人賞優秀賞。電子書籍にて刊行予定。手書き筆文字PCフォント「バジョカフォント」シリーズ作者。2005年9月より1年2ヶ月、ヨーロッパ・アフリカ・中東・アジアと海外23ヶ国を旅した経験も。

最近の記事

「政治がSFをはらむことの危険性」〜百田尚樹氏の「子宮摘出」発言について〜

 百田尚樹氏の「子宮摘出」発言が炎上している。「(女性)は三十を超えたら子宮を摘出するくらいのことをしないと社会は変革できない」という発言だ。どう考えても女性蔑視であり、人権意識が欠落していることは言うまでもない。だが百田氏は、あくまで「小説家として、SF(仮定)の話をしたまで」と言う。しかし氏が出演したネット番組は政治番組であり、氏は国政政党の党首だ。そこでの発言を小説家という立ち位置に全振りするのは苦しいだろう。  だが本人は、小説家として仮定の話をしたという建前が、言

    • ぽっかり、詩とつながる。

      僕は、詩から始まりました。 詩を書くということは、 胸にぽっかり空いたなにかを見つめることであり、 目の前にぽっかり空いた不思議な空間を見つめるということです。 内と外のぽっかりが同調する時、詩が湧いてきます。 いえ、流れ込んできます。 文学的にも天文学的にも、 たぶん、銀河と呼ばれるあたりから。 詩人とはなにか。 詩を書くという状態にある人のことをいう。 詩を書くということは、 職業でも、態度でもない、”状態”です。 詩人という状態に入ったとき、人は詩が書ける。 誰でも

      • 全元号を体で感じる書展について.4 元号

        お疲れ様でしたー!  さてさて。9月28、29日をもって長野県朝日村のBLUE HOUSE STUDIOで開催された「全元号を体で感じる書展」が終了しました。バタバタしていて少し時間が経ちましたが、今回のテーマの「元号」について、できるだけ語ろうと思います。 なんで元号?  総勢248。「大化」から「令和」まで248の元号が日本にはあります。ギャラリーで見てくださった方々に皆一様に聞かれたのが「なんで元号を書こうと思ったんですか?」ということ。ギャラリーの壁という壁を埋

        • 「全元号」を体で感じる書展について.3 筆

          さてさて今回、「大化」から「令和」まで全ての元号248枚を書きおろすという、気の遠くなるような作業で大活躍してくれたのが京都 龍枝堂さんの筆。大きめの筆は龍枝堂さんのものをよく使っていた記憶はあったんだけど、改めて確認してみたら、すべて龍枝堂さんのものでした。しかも「百錬」が三つもある。確かに今まで使っていた和紙との相性もあり、一番自分の求めている表現ができるのが「百錬」でした。なので今回も、当然「百錬」を使って書き始めました。 だけど意外や意外、ビタッとハマるものもあれば

          「全元号」を体で感じる書展について.2 和紙

          今日もヘトヘトになるまで書き終えた。朝の5時過ぎ。ヘトヘトです。 というところで紙について話そうと思います。 元号を書くにあたって、どんな和紙を使おうか、いろいろと探していたところ、手漉きの、未晒(みざらし)の楮紙(こうぞし)を見つけました。 未晒とは、漂白していないこと。紙本来の自然な色合いが出るんです。 楮紙とは、楮という植物を原料とした和紙のこと。聖徳太子の時代から使っている伝統的な和紙で、繊維が強いので和紙自体にも腰があり、書きごたえがあります。 僕はもともと楮紙が一

          「全元号」を体で感じる書展について.2 和紙

          「全元号」を体で感じる書展について.1

          いやー、元号が248もあることは覚悟してたけど、かなり大変だ。 マラソンみたいなもので、コツコツ地道な積み重ねがゴールにつながる。 今夜(というかもう朝だけど)ようやく230まで書けた。あと18だ。 夜中だろうと墨の匂いは好きだし、硬い筆より柔らかい筆の方が自分には合っているんだと20年以上筆を使い続けて分かった。羊かな、羊だよな。毛。 昭和、平成、令和が残ってる。これは本当にクライマックスで、どうなるんだろ。 ここだけ力入れるのもどうかと思うけど、少し前に「昭和、期待して

          「全元号」を体で感じる書展について.1

          ボブ・ディラン と時空のねじれ 2.幻想の河

          2. 幻想の河1/600の必然  ライブ当日は会場入り口で、突如チケットの交換(座席の交換)などがあり、開演17:00間近になっても入場がままならず、かなしいかな、会場の扉を開けたときには一曲目がすでに始まっていた。いそいで席を見つけて座り、何度か深呼吸して曲に耳をすます。『Watching the River Flow』。過去の曲はそれほど演奏しないと前回述べたばかりだが、一曲目は過去曲から始まった。  この曲は1971年にシングルでリリースされているが、のちに収録され

          ボブ・ディラン と時空のねじれ 2.幻想の河

          ボブ・ディラン と時空のねじれ 1.脱栄光主義

          1.脱栄光主義新曲で世界をまわる81歳  先日、ボブ・ディランのライブを観に行った。「Rough and Rowdy Ways Tour」と銘打たれたその日本ツアーは、じつは2020年に発売されたニューアルバム「Rough and Rowdy Ways」にあわせて同年4月に組まれていたのだが、新型コロナウィルス感染症の拡大により、公演は直前になって中止になってしまい、それっきり頓挫したままだった。しかしあれから3年、コロナ禍の長いトンネルを抜けた今年4月、ボブ・ディランは日

          ボブ・ディラン と時空のねじれ 1.脱栄光主義