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先生と私の日常譚

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この世には、ドッペルゲンガーと呼ばれる者が居る。 「最期へのカウントダウンが始まる明日なんて、来ないはずだったのに」 ──先生と私が織りなす、平凡で時々不思議な短編集。
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記事一覧

【連作】絶対愛主義

 先生がホログラムになった。  スマートウォッチよりも細くて、繊細を極めたアクセサリーの…

吾妻燕
4年前
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【連作】恐怖を呼べる宇宙

 政府から【『mkpsでkんv』粛清命令】が出た。  初冬の昼下がりの出来事である。  何を言…

吾妻燕
4年前
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【連作】十色中の一色に過ぎない幸福論

 幸福とは何か。  美味しいものを食べることか。  例えばカツ丼とか。ショートケーキとか…

吾妻燕
4年前
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【連作】リア充は難しい

 丁度、昼食の時間を少し過ぎた時間。街中で女性に声を掛けられた。  女性は皺一つない、け…

吾妻燕
4年前
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【連作】内行的食文化

 先生は極めて不思議な生命体だ。  見た目は十代中頃。  所謂、高校生と呼ばれる年頃で、セ…

吾妻燕
4年前
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【連作】ワンダーランドの終焉

 先生が根城にしているアトリエ『ミラ』にお邪魔したら、先生が鬼二体と納豆巻きを食べていた…

吾妻燕
4年前
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【連作】赤チェックの死神

 商店街を闊歩しながらコロッケを食べていたら、背後から衝撃を受けた。  不意打ちの衝撃だった。  痛みなどは特に無く、ただただドスっと腰辺りに押し込められる様な、鈍い圧迫感の後にカッと熱い感覚が全身を支配する。余りにも唐突すぎる出来事に、私は珍しく混乱した。本当に、自他共に認める混乱の極みっぷりだった。瞬時に訪れる暗転。  私の視界が次に光を認識したのは、病院のベッドの上だった。ナースステーションの間近にある一室で情けなく四肢を投げ出しながら、目蓋を押し上げて眼球をウロウロ

【連作】おはようさようならを繰り返す

 万年床で目覚める。瞼を押し上げた先、茶色いシミがポツポツと目に入る見慣れた天井を数秒眺…

吾妻燕
4年前
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【連作】角度

 未知のウイルスによる大量殺戮が発生し、世界は混沌を極めていた。  アトリエ『ミラ』にも…

吾妻燕
4年前
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【連作】ポーカーフェイス

 先生の表情が死んだ。  元々、表情筋の活動量が乏しい人ではあった。笑顔は精々微笑み程度…

吾妻燕
4年前
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【連作】運命を切り開く

『来ないはずの明日』→(略)→『鮮度』→(本記事)  先生が銃殺されたので、私は犯人探し…

吾妻燕
4年前
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【連作】鮮度

『来ないはずの明日』→(略)→『ボケゴロシ』→(本記事)  人間には“三つの欲求”なるも…

吾妻燕
4年前
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【連作】ボケゴロシ

『来ないはずの明日』→(略)→『嘘も×××回吐けば、』→(本記事)  名前も知らない顔見…

吾妻燕
4年前
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【連作】嘘も×××回吐けば、

『来ないはずの明日』→(略)→『バイパス』→(本記事)  先生から一〇七四三五四二六九八九五四七五二三回も「君は過去を語り継ぐ選ばれし者」と嘘を吐かれたので、彼女の頬を平手打ちした。咄嗟に出た右手だった。  嘘に苛立ったわけではない。否、小指の先程には苛立ちを覚えた。けれど、それ以上に暴力を振るいたくなる何かがあった。果たして、“何か”とは何なのか。  咽喉の奥が堰き止められた様に、息が詰まる。 「何で、そんな嘘、言うんですか」  私の問いに、先生は苦笑いを浮かべて「嘘