【連作】ワンダーランドの終焉

 先生が根城にしているアトリエ『ミラ』にお邪魔したら、先生が鬼二体と納豆巻きを食べていた。夢か幻覚かと思って、人差し指で眼球を摩擦する。何度見直しても、目を擦っても光景は変わらない。
 体躯が立派な青と赤の鬼と、標準体型な人間の先生が仲良く肩を並べて納豆巻きに噛り付いている。

「あの、如何いうことです。なぜ鬼さんがここに?」

 私の質問に、先生が「虐められてるんだって」と言った。

「ご先祖様の不祥事を一部のヒトが、未だに血尿を流すほど怨んでるらしくて。彼らが被害を受けているんだと。ついさっき『証拠映像をユーチューブに晒せ』で議論が落ち着いた」
「……まあ、自分に直接関係ないことで斬られたり臓物を突かれるよりはマシですね。じゃあ、何で納豆巻きを食べているんです?」

 確か、途中で寄ったコンビニには無駄に具沢山な太巻きが売っていたはず。他にも沢山、納豆巻き以外の巻物があるのに、何故それをチョイスしたのか?

「『粘り強く生きて欲しい』って願掛け」

 なるほど、めちゃくちゃ納得した。
 赤鬼さんに「一つ如何だ」と勧められたので、有り難くご相伴にあずかる。明日から御伽噺のラストが一部変更になるかもしれないけれど、私の知ったことではない。それらは当事者と、先生が関与していることなので。

(了)

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