【書評】『喜びは悲しみのあとに』上原隆
どれも興味深い人間たちの心模様ばかり。この人に書かせると、まるで自分がそこにいるみたいに思えてくる。たぶん駅前ですれ違う一人ひとりがこういう何かしらのドラマを背負って生きてるんだろうなぁ。
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脳に障害のある子を持つハードボイルド作家、
倒産した地方新聞社の元社員たちの困難な再就職、
「子殺し」の裁判ばかり傍聴し続ける女、
十年間第一線で活躍しながらある日突然
「戦力外」通告されるプロ野球投手。
人は自らの存在を道端の小石のように感じる時、
どのように自分を支えるのか?
安らぎと感動のコラム・ノンフィクション第二弾。
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脳に障害のある子を持つハードボイルド作家、
というのが打海文三だったのでびびった。
積読してあった彼の本を読みたくなった。
どれも興味深い人間たちの心模様ばかり。
いつどこでどんなときに読むかで
響くところがかわってきそうだ。
この人に書かせると、まるで自分がそこにいるみたいに
思えてくる。
たぶん駅前ですれ違う一人ひとりが
こういう何かしらのドラマを背負って
生きてるんだろうなぁ。
ちょっとセンチに都会の雑踏をながめてしまう。
ブロンクス生まれの黒人ウェイターが
生き生きとしてて読んでて元気になった。
彼は店の中で、テキパキと親切に働きまわる。
常連らしい、目の悪い人を導いていき、
あんたがいて助かるわぁ、とお礼をいわれ、
コチラコソ!マタキテクダサイ!
とたどたどしい日本語でこたえる。
著者がきく。
なんでそんなに親切なの? 誰に教えてもらったの?
「家族の中で、お父さんが毎日毎日いったの。
人はね、いつ死ぬかわからないでしょう。だから、
あまりいいことしないで死んじゃったら、
あなたの名前すぐ忘れちゃうでしょう。
だから、いいことして、死んでも名前、
まだあるようにしなさいって」
すばらしい教育だなぁ。
黒人ウェイターときいて、あのボビーがそうしゃべってる
姿しか浮かんでこない自分に苦笑した。
「タイムマシーンに乗って」の章に出てくる女性、
安田は中学生のときいじめにあっていた。
「ブス」「バカ」「死ね」「安田菌」「学校くるな」
本当によく耐えたと思う。
その話を著者にしている最中に、安田加奈はこういった。
「ああ、タイムマシーンに乗って、あの頃の自分に
教えに行きたい。大丈夫だよって」
安田加奈、現在23歳。
高校生からは友達もできたし、恋愛もした。
現在、彼女を美しいといい、結婚しようといってくれる
恋人もいる。
冬は永遠には続かない。
だから今いじめにあってる人、
自分で自分を殺すようなことだけはしないでほしい。
何もできないけれど、これだけは
この場をかりて発信しておきたい。
TVではよく、いじめられる方にも問題はあるのよ、
なんて訳知り顔のパネラーが発言してるけど
断固として反対したい。
「いじめはいじめる方が100%悪い」
僕はそう思う。
いじめる側にも理由はあるんだろうけれど、
でもやっちゃダメだ。やらせてもいけない。
いじめてる子にも悩みはあるはずだから
大人がそれと向き合っていかなきゃ。
感想からそれちゃうけれど、
いじめられてる人、自分だけは自分を
いじめたりしないでくださいね。
水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。