「幻の」花嫁はどこへ?
あまり期待せずに何となく観賞した印度映画が予想外に面白かったので、映画に名前だけ登場する料理を妄想しながら作ってみた記録。
2001年頃の印度の田舎が舞台。
ティーパクとプールという若いカップルの結婚式。
花嫁、プールの村で挙式を終えた二人は満員電車に乗り込んで、新郎のティーパクの村に向かう。
この日は印度では吉日。車内には他にも新婚夫婦。
込み合う車内で何度か席を変わったり譲り合ったり。その内に日が暮れて、ティーパクは転寝(うたたね)。
目が覚めると降りる駅。
慌てて新婦の手を取り、降車。
最終バスに乗って、夜半になってようやく村に到着。
友人や親戚が歓迎してくれている中、花嫁が被っているベールを取ると、それはプールではない別人。一同、驚愕。
花嫁を取り違えるという有り得ない勘違いから、この物語は始まる。
蓮根 半節
玉葱 半分
大蒜 1欠け
酢 適量
白摺り胡麻 大匙1
ガラムマサラ 小匙1
塩 小匙1
ターメリック 小匙1
クミン粉 小匙1
チリパウダー 小匙半分
印度では結婚式の後、花嫁はベールをすっぽりと被って顔を隠すというしきたり。
顔が見えず、背格好が似ていたために寝ぼけていたティーパクが間違えてしまったという次第。
連れて來てしまった花嫁はプシュパと名乗るのですが、実は偽名。
夫や住所も偽る。
ティーパク達にはそれはわかりませんが我々、観客は彼女の本当の名前はジャヤだとわかる。
何故かというと、彼等が乗っていた列車が終着駅到着。そこで降りた新郎がジャヤを探しているから。
やはり背格好が似ているプールを見付けるが、ジャヤではないので放置。
プールもジャヤの花婿が強面なので、間違えられたことを告げられず。
駅に取り残されたプールは途方に暮れて、取り合えずその夜は駅のトイレに隠れて眠る。
プールは内気で従順。というかそういう教育を受けてきた女性。
女性は良き妻、母であるべしとして自己主張は控え、何事も夫に追従。
ということでプールはティーパクに財布も携帯電話も切符も預けたまま。夫の村の住所もわからず。乗り込んだ場所も切符がないのでわからない。こうなると駅長もお手上げ。
困り果てていると、駅で軽食の屋台を出しているマンジュという女性が手を差し伸べてくれる。
マンジュの手傳いをすることになるのですが、何しろ働いたことなどないので、戸惑うことばかり。
一方、ティーパクと友人達はプール捜索を頼みに警察へ。
担当したマノハル警部補は平氣で賄賂を受け取る汚職警官。
なのですが、まったくの惡徳警官とも言えず、話を聞いて取り違えられた花嫁、プシュパ(ジャヤ)の素性が怪しいと睨んで捜査。自分なりの正義感があるのか?黑とも白とも言えない人間のグレーな部分を体現している人物がマノハル。
ジャヤもなかなか警察に行きたがらず、ティーパク達が留守にしている間に奇妙な動き。
マノハル警部補が尾行して観察。何かを故物屋に売ったジャヤはATMでどこかへ送金。インターネットカフェで何かしているが、履歴をすべて消去。
折しも、新聞では結婚詐欺の報道がされている。もしかしたらジャヤも?
果たしてジャヤは何者なのか、プールは無事にティーパクと再會出来るのか?というのが大まかなストーリー。
印度映画、よく知らなかったので、派手な衣装の俳優が歌って踊るミュージカルっぽい映画を想像していましたが、この『花嫁はどこへ』は違っていました。
BGMに流れる曲の歌詞が状況やキャラクターの心情を語る。
製作のアミール・カーンは『インドの國宝』とも呼ばれる俳優。監督のキラン・ラオは元奥様だとか。離婚しても仕事は一緒にするんですね。
この映画を日本に配給しているのは松竹。
松竹とは『男はつらいよ』や『釣りバカ日誌』等を製作してきた会社。
この『花嫁はどこへ?』も人情喜劇であり、松竹のカラーに合う。
二人の花嫁は体格は似ていても、性格は対照的。
プールが内気で従順。ジャヤは聡明で自己主張がはっきりしてる。
登場人物も本当の惡人はほんの数人。ちょっと怪しい所も最後にはそういうことかと納得出来るストーリー。観終わった後も幸せな氣分。
古いしきたりが濃く残っていることを20年程前の田舎という舞台で表現。
見合い結婚が当たり前で、女性は家事と育児に専念すべしという風潮は昔の日本でもよくあった話。
何事も夫次第で、夫の名前もみだりに口にすべきではないとか、ベールでしっかり顔を隠したままだったのが、そもそもの発端。
20年前という少し昔の話ですが、今の印度では女性の社会進出は進んでいるのだろうか?というか製作や監督の狙いはこれは昔話で今は違いますよとアピール。國際市場への売り込みを意識している?
マンジュが屋台で提供しているのはサモサや具を食パンに挟んで揚げた天ぷら。手傳い始めたプールも次第に人と接して役に立つことの喜びを知るようになり、無事にティーパクと再會出来たら、小さくても何か仕事をしたいと思うようになる。
屋台飯も魅力的ですが、もう一人の花嫁、ジャヤがティーパクの村でご馳走になり、とても美味しいと絶賛していた料理がレンコン炒め。
しかし名前が出て來るだけで実物は登場せず。
氣になって仕方ないので、こういう物だろうかと妄想しながらクッキングしているという訳。
名前は出て來ても実物は登場しない幻の料理を妄想で作ってみた。
食物繊維豊富な蓮根にスパイスがよく絡む。
辛いというより少し甘い。微かなスパイシーさが却って蓮根の甘味を際立たせる。
ターメリックには強力な抗酸化作用があるクルクミンが含まれ、肝機能を改善してくれる。
クミンもやはり抗酸化食品。食欲増進や消化促進効果。
勿論、胡麻もセサミンやゴマグリナンという抗酸化物質含有。
炒めた玉葱の甘味と大蒜の風味が味を引き立てる。
プールもジャヤも間違えられたことで新たな出會いや氣付きを得て、成長。
女性の自立や社会参加というテーマをエンタメを交えて見せてくれる。
印度映画、甘く見ていましたがスパイスのようにピリッとしている。
流石、映画大國と呼ばれるだけのことはある。
最近のハリウッド映画にはあまり魅力を感じませんが、こういう映画の方が面白い。
予想外に良かった印度映画に名前だけ登場した料理を妄想して作った「幻の」花嫁はどこへ?をご馳走様でした。