見出し画像

禁断ポトフジコ・ヘミング

間もなく暮れる令和六年(2024)
今年も多くの著名人が肉体という古い衣を脱ぎ捨てて新たな次元へと旅立たれた。
鳥山明、楳図かずお、西田敏行、中山美穂、アラン・ドロン、オリビア・ハッセー等々。
四月に発たれた世界的なピアニスト、フジコ・ヘミングを妄想しながら自分的には禁断の食材を料理した記録。


材料

あらびきウインナー 4本
ロースハム     半分
大根        1/4
ジャガイモ     3個
人参        半分
玉葱        1/4
大蒜        1欠け
塩麹        大匙2
オリーブ油     適量
白ワイン      150㎖
黒胡椒       好きなだけ
粉チーズ      好きなだけ
水         600㎖

まずは言い訳。
なんちゃってベジタリアンとかゆるベジタリアンを名乗っている私ですが、お歳暮の御裾分けということでソーセージを頂いてしまった。
頂いた物はきっちりと使い切るのが信条。
食肉も生きていたのに人間の都合で殺されたのだから、美味しく命を繋がせて頂く意識で料理。
普段は肉食を控えている私の希少な肉食レシピ。永久保存版?


あらびきウインナーを茹でる。圧力鍋で一緒に煮ると破裂する恐れがあるため。

1931年、ドイツのベルリンで誕生したゲオルギー=ヘミング・イングリッド・フジコが後のフジコ・ヘミング。
父親はスウェーデン人の画家、建築家、母親は日本人ピアニスト。
生後、すぐに日本へ。
父は日本に馴染めなかったようで母、フジコ、弟を遺して1938年にスウェーデンに歸國。
母からピアノを學び、東京藝大へ。
卒業後、ヨーロッパへ。
長らくピアノ教師をしていたが、母の死をきっかけに歸國。
テレビ番組で紹介されたことをきっかけに有名に。
というのが大まかな経歴。
そんなフジコの最晩年の四年間を追ったドキュメンタリー映画を鑑賞。


監督の小松荘一良は2018年のドキュメンタリー映画『フジコ・ヘミングの時間』に続いてフジコを撮った。
この映画が追っているのは2020年から2024年まで。つまりコ▢ナ茶番デミックな時期。
フジコ程の大物でも影響。
コンサートが無観客開催だったり、何の意味もないフェイスガードを装着したりといった場面。
後々、茶番が露見した時には如何に狂った時代だったかを示す証拠映像になりますな。


細切り玉葱、微塵切り大蒜をオリーブ油で炒める。

フジコの死後、完成、公開されたこともあり、最晩年だけではなく彼女の人生の軌跡も描かれていた。
幼い頃に別れた父が画家だったこともあり、フジコも絵を描く。展覧會も開催された。父から絵画、母から音楽の才能を受け継いだことがよくわかる。
因みに父が描いたポスターは今でも日本郵船博物館に展示。
日本郵船といえば、日本人棄民という國家ぐるみの人身売買に加担。
父のヨスタ・ゲオルギーは経営に関わった訳ではなく、ポスター描いただけなので無関係と思いたい。
戦時中の1945年には母の郷里、岡山県に疎開。その時に小學校で弾いていたピアノと再會。子供達の前で演奏という場面。


乱切り野菜とハム、調味料を圧力鍋に投入。

歌手で牧師でもある陣内大蔵と『アヴェマリア』を演奏。
フジコ自身もクリスチャン。因みに母は佛教徒。
家族については弟の大月ウルフは『大鉄人17』や『仮面ライダー』シリーズ等の特撮番組に多く出演した俳優で2020年に逝去。
そんな風にフジコの人生や最晩年がスクリーンに映し出される。
ドキュメンタリー映画ということで劇映画のような緩急とかクライマックスというものもなく、淡々とした風。
正直な所、眠くなる所があったが、フジコの演奏が始まると目がパッチリと開いた。迫力や情熱が迸る演奏。
特に彼女の代名詞とも言える『ラ・カンパネラ』は素晴らしい。
クラシックやピアノに詳しくないド素人の私でも聞き惚れるというのは、本物のプロフェッショナル。
ピアノを弾く人の意見では、フジコの演奏にはミスタッチも多いというが、完璧な演奏が聴きたいなら機械にやらせればいい。フジコが出す音には血が通っている。そこがいい。


10分加圧後。

フジコ・ヘミングは音楽家として平坦な道を歩んではいない。
ヨーロッパ留学中、レナード・バーンスタインに手紙。
自分の演奏を聴いて欲しいと頼んだ。
映画『ウエストサイドストーリー』の音楽等で有名な人物。
バーンスタインに認められてソロ・コンサート。ところがその直前、風邪をこじらせて中耳炎。聴力を失った。
当然、コンサートは散々。大きなチャンスを棒に振った。
幸い左の聴力は回復。ピアノを教えて生計。
最初の方で書いた通り、テレビ番組で有名になった時には67歳。
かなりな遅咲き。


半分に切ったウインナー、チーズ、黒胡椒投入。加熱しながら混ぜ合わせる。

「いつの時代も、どこで暮らしても、私は私らしく生きた」というのが、この映画の惹句。
サンタモニカ、パリ、東京に家を持ち、犬や猫と共に暮らすフジコ。
パリの家に空き巣が入ったが幸い、フジコの宝物は無事。
小学生の頃から持っているという人形等。財宝とか宝石よりも思い出を大事にしていることをよく示している。


禁断ポトフジコ・ヘミング

圧力鍋を使うと根菜も短時間で柔らかく仕上がる。
ハムやソーセージからいい出汁。
塩麹の甘くしょっぱい味に黒胡椒のピりッと感がアクセント。
オリーブ油やチーズがコクを加えてくれる。
根菜たっぷり、食物繊維もたっぷり。
私の料理にしては珍しく動物性タンパク質たっぷり。
大根からB群、ジャガイモにはCとビタミンたっぷり。
玉葱のアリシンが食欲増進。

フジコが子供の頃、母が弾いていたというショパンの『ノクターン』を始め、『別れの曲』やドビュッシーの『月の光』等々の演奏も聞き入ってしまう。
映画のタイトルは『恋するピアニスト』
誰に?或いは何に?と考えると、フジコは人生に恋していたのかもしれない。様々な困難もあったが、最終的には人生の帳尻を合わせて去っていった。
不世出の天才ピアニスト、フジコ・ヘミングを妄想しながら、禁断ポトフジコ・ヘミングをご馳走様でした。




#つくってみた

いいなと思ったら応援しよう!