【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】太陽病と鍼灸
千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。
以前に、『風邪の食養生と鍼灸治療』という記事のなかで、風邪に対する東洋医学的な考え方と養生方法についてご紹介をしました。
今回は、風邪の中でも『太陽病』と呼ばれるものについて詳しくとりあげていきます。
少し専門的な内容にはなりますが、どうぞ最後までお付き合いください。
1.太陽病とは
まずは、質問です。「太陽病とはなんでしょうか?」
東洋医学のことを全く知らない方で、漢字から連想をした場合、太陽にあたることで発症するあの熱中症のことではないか??と思うかもしれませんが、そうではありません(笑)!
WHOの定義によれば「太陽病とは、太陽経証と太陽腑証の総称。熱病の初期に出現し、主に頭痛、項が強ばって痛み、悪寒と浮脈を呈す」とあります。これを分かりやすく言い換えると、次のようになります。
太陽病とは、いわゆる風邪のひきはじめの状態のことであり、外気の冷え(風寒邪)の侵襲を最初に防衛する段階、つまり身体の防衛の第一関門であるといえます。
風寒邪というのは、その特徴として、身体の上背部分から侵襲をしてくることが多く、太陽病の段階では、邪気(病の原因となるものの総称)は身体の最も浅い部分(表・ひょう)にある、といえます。
その症状の代表としては、悪寒発熱、頭項強痛、浮脈があげられます。
2.営衛不調とは
東洋医学では、あらゆるものは『気』から作られるとされますが、この『気』には、定義上、様々な種類があります。
その中でも、太陽病に深く関与するのは『衛気』と『営気』です。
『衛気』とは、飲食物から作られ、脈外(=身体の外側、体表面)を流れて外邪(=外界からやってくる病気の原因となるもの、風寒邪など)の侵入を防御し、肌表面を温めて腠理(=毛穴)の開閉を調整し、発汗調整を行う働きをし、その性質は上昇発散して活動的です。
『営気』とは、飲食物から作られ、血とともに身体の内側を流れて全ての臓腑(=東洋医学でいう内臓)や組織を栄養する働きをし、その性質は沈潜降下して静かです。
この2つの気は、その性質をあらわす呼び方として、衛気は『水穀の悍気』、営気は『水穀の精気』というように呼ばれることもあります。
両者は身体の内外を流れてお互いに拮抗することによりバランスをとりあい、それにより身体の表面を守り固めて腠理の開闔を主る、という生理機能が保持されています。
この状態を、東洋医学では『営衛調和』といいます。
一方、外邪は、まず身体の表面から侵襲し、身体の内側に入り込もうとしてくることから、衛気と営気はその影響を受けて、そのバランスが崩れて営衛不調という状態がおこります。
このように、外邪の侵入は、体表面の浅い部分(表・ひょう)から始まりますが、もしこの段階で外邪を身体の外に追い出すことができない場合には、次第にそれは体内の奥(裏・り)のほうに入り込んでいき、次第に病が深刻化していくこととなります。
では、次に、太陽病と営衛不調についてみていきましょう。
3.太陽傷寒証
麻黄湯証、表寒実証
寒邪>風邪
邪気の侵襲位置は太陽中風証に比較すると浅い
脈浮緊 ピーンとはった糸のような緊張した、浮いた脈
悪寒(寒け)
侵襲する病邪(寒邪>風邪)の勢いは軽く、まだ体内深くに侵入していない、つまり寒邪が体表のごく浅い位置にある状態です。
まるで、肌表(=身体の表面)が寒邪というラップでピタッと覆われたような状態で、身体としては発汗をしたいのだけれども、肌表にある寒邪がそれを邪魔してしまい、汗を出せなくなり、無汗となります。
寒邪の性質は、陰に属して、営気を損傷しやすい、という特徴を持ちます。
営気の沈降・凝集・静かである、という性質は、寒邪の影響によりますます増強されて、営強衛弱という状態を発生させます。
結果、「営衛調和」の状態が崩れ、衛気は肌表の内側に抑鬱され外に発散して肌表を温めることができなくなり、悪寒(寒気)が発生します。
また、内側に抑鬱された陽気は外に発散することがでないので、上昇して発熱・頭痛・関節痛を発症しやすくなります。
麻黄湯証に対する治則治法の代表は辛温解表。
体表にある風寒邪を発散させ、衛気鬱滞を解消し、腠理を開いて発汗を促すとともに、経脈をあたためて、営気と衛気を調和させる働きをします。
4.太陽中風証
桂枝湯証、表寒虚証
風邪>寒邪
邪気の侵襲位置は太陽傷寒に比較すると深い
脈浮緩 緩くしまりがなく、浮いた脈
悪風(ゾクゾク感)
侵襲する病邪(風邪>寒邪)の勢いは軽く、まだ体内深くに侵入していない、つまり、風邪が体表のごく浅い位置にある状態です。
風邪の性質は、陽に属して、衛気を損傷しやすい、という特徴を持ちます。
風邪が侵襲すると、衛気は邪気を体内に侵入させまいとして、衛気の昇散活動性がますます増強します。
また、風邪の開泄性により腠理は開き、衛気は体表を守り切れず、腠理の開閉調整が上手く機能しなくなります。
それにより、営気の一部である汗が漏れ出て、身体がしっとりと汗ばんだ状態(自汗)になり、衛気による体表の温煦作用が低下することから悪風(ゾクゾクした感じ)が生じます。
このような状態を「衛強営弱」とよび、侵襲する外邪に対して肌表で衛気が相争していることを「衛強」と表現し、営気が身体の内側を守り切れずに、身体の内側からその一部が漏れ出してしまうことを「営弱」と表現しています。
桂枝湯証に対する治則治法の代表は辛温解肌、調和営衛。
衛気を補い、体表の衛気を助けることで、穏やかな発汗作用により邪気を除去するとともに、内側の営気を補って、汗が漏れ出ないようにし、経脈をあたためて、営気と衛気を調和させる働きをします。
風寒邪の侵襲に対しては発汗により邪気を身体の外に追い出す必要がありますが、太陽中風証は腠理が開いている状態ですので、麻黄湯証のような積極的な発汗は、正気(人間がもともと持っている生命力や自然治癒力、病を防いで健康を保つ抵抗力のこと)を漏れ出させてしまうため、かえって危険です。
そのため、内側の営気を補って正気を助けることにより、邪気を駆除する方向にもっていきます。
5.太陽病と鍼灸
これまで、太陽病についてみてきました。
では、漢方でなく鍼灸の場合には、どのようにして太陽病を治療していくでしょうか?
基本的には、漢方と鍼灸は東洋医学の同じ仲間ですので、考え方には違いはありません。
鍼灸の場合、問診とお身体の状態から、太陽病かどうかの診断を行い、適切な経穴に対して鍼灸の施術を行います。
ここから先は、鍼灸による太陽病に対する対応についてみていきましょう。
5-1.太陽傷寒証に対する鍼灸
太陽傷寒証であると診断するポイントは、以下のとおりです。
(問診)
・悪寒がする
・喉の渇きはなし
・自汗なし
・舌がいつもよりも湿潤する
・鼻水が出やすい
・咳や痰が出る
・関節痛、首から肩にかけてのこりの悪化
・微熱が出る
・頭痛がする
(身体と経穴=ツボの状態)
・脈浮緩
・外関、合谷 冷えて実、無汗
・申脈 冷えて実、無汗
・身柱、肺兪 冷えて実、無汗
・大巨の邪が顕著
(処置)
対象となる代表穴としては以下があり、実の経穴に対して瀉法を行う。
・外関
・合谷
・後渓
・身柱
・肺兪
・申脈
5-2.太陽中風証に対する鍼灸
太陽中風証であると診断するポイントは、以下のとおりです。
(問診)
・悪風がする
・喉の渇きはなし
・自汗する
・舌がいつもよりも湿潤する
・鼻水が出やすい
・咳や痰が出る
・関節痛、首から肩にかけてのこりの悪化
・微熱が出る
・頭痛がする
(身体と経穴=ツボの状態)
・外関、合谷 冷えて虚、自汗
・申脈 冷えて虚、自汗
・身柱、肺兪 冷えて虚、自汗
・不容~滑肉門あたりの冷えて虚、自汗
(処置)
対象となる代表穴としては以下があり、虚の経穴に対して補法を行う。
・外関
・申脈-後渓ー三陰交
・合谷
・後渓
・身柱
・肺兪
・申脈
6.まとめ
今回は「太陽病と鍼灸」を取り上げて、少し専門的なお話をしてきました。
風邪をひきやすくて困っている、また風邪様の症状がなかなか改善されずに困っているなどの場合には、鍼灸治療をぜひ一度試してみるのもよいでしょう。
今回はここまでとなります。最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!
鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
千葉県 千葉市中央区新町1−6 ラポール千葉新町202
TEL:070-8525-6132
画像の出典:
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?