食べてみたい練り物と、
練り製品で思い出すもう一度食べてみたい味がある。
昭和40年代前半であろう。母の手に引かれ兄と私は近所に在った広い空き地に毎月一と五のつく午前中に立つ『市』に必ず行った。たくさんの屋台の並ぶ市は子どもの私にとって当時まだ行ったことのない遊園地の中を歩くような感覚だったと思う。その中に練り物屋があった。大きな鍋に黒くなった油が煮えたぎり、そこで魚のすり身を揚げていた。ここにあった餃子巻きが妙に美味かった。兄と私は二つずつ買ってもらいその日の昼メシのオカズになった。本物の餃子を今