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ある錬金術士の話(仮題)

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2014年9月の記事一覧

【ある錬金術師の話(仮題)25】

「行くと決めたのなら、急ごう。 

なにせ、アグリッパにも依頼しようか?と言ってのだから。」 

 コルネリウス・アグリッパ:

 ホーエンハイムと同じ、ドイツ人でいわゆる魔術師として知られる。

 その著書である「オカルト哲学について」(全3巻)はルネサンスの魔術師層の集大成となっている。その内容は、フランセス・イエイツによれば、「マルシリオ・フィチーノが教えるヘルメス主義敵魔術とピコ・デラ・ミ

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【ある錬金術師の話(仮題)24】

ホーエンハイムの眼の色が変わる。 

 それはそうだ。

 解決が困難な症例というものは、彼にとっては大の好物なのだ。

 これだけ医院が閑散としていても、変にプライドだけは高い。 

自分が儲かっていないのは、腕が悪いせいではなくて、自分を必要とされる症例が無いだけ、と思っているのだ。 

 だからこそ、こういった症例は見逃せない。 

 しかも、それが金払いの良い患者とすれば、断る理由はない。

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【ある錬金術師の話(仮題)23】

 
こう言った時は、話を変えるに限る。
どれだけ言い繕った所で、勝てる相手ではないのだ。
ちょうど、蛇がカエルに勝てないように。

「なあ先生、コーネリアスの奴の具合が悪い、って話、聞いたかい?」

「コーネリアス?
ああ、あの貿易商か。」

地中海貿易は東ローマ帝国商人がその場を独占していたが、1202年の第四回十字軍以降、様々な都市国家にその中心が移っていた。
コーネリアスもその内の一人で、地

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【ある錬金術師の話(仮題)22】

  「ちぇっ、相変わらずだな。だから、いつも客が来ないんじゃないのか?」 

カールはそう言いながら、舐め回すように診療室をみた。

 薄暗い部屋の中には、試薬ビンやら怪しげなタイトルの本やらが散乱している。 

 「客、じゃない。

 患者、だ。

 そもそも、医者が暇なのはいいことじゃないか。

 医者が暇ということは、それだけ世の中が平和ってことさ。」 

 「そうは言っても、これだけボロだ

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【ある錬金術師の話(仮題)21】

  しばらくすると、種の表面がゼラチン質で覆われ、まるでカエルの卵のようになる。 

 それをそっと手に取って、右目の中を軽く拭いてやる。

 「ただの結膜下出血だ。2週間もすれば良くなる。まあ、お前の場合は飲み過ぎだから、もっとかかるだろうがな。」

 そう言いながら、軽く処置を終えた。

 「なんだい、まるで俺がいつも飲んだくれているようじゃないか。」 

 「実際そうだろう?

酔っ払いで無

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【ある錬金術師の話(仮題)20】

【ある錬金術師の話(仮題)】

病人でなければ、隣に住んでいるあいつだろう。
そう思って戸を開けると、案の定、カールだった。

「なんだお前か」

「先生、お前か?じゃないよ。
一体どれだけ無視するんだよ。
もう少し遅かったら、扉を壊してやるつもりだったぞ。」

「忙しい時にやってくるお前が悪い」

「こっちも急いでいたんだよ!
朝起きて見たら、右目が真っ赤でさ。
痛くも痒くも無いんだけど・・・」

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【ある錬金術師の話(仮題)19】

こんな不躾なことをしてくるのは、心当たりでは一人しかいない。

 そもそも、この街での彼の評判は最悪だ。 

 どうも腕の良い医者がいるらしい、という噂はある。 

しかしその医者は、話し方と言い行動と言い、ともかく変わりものであるという噂も同じだけ流れている。

これでは普通の人なら、足が遠のくのは仕方がない。 

 なにより、他の医者だけでなく、アリストテレスやガレノスの批判までするものだから

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【ある錬金術師の話(仮題)18】

だからこそ、一度決めたタイミングというものは、逃してはならない。
ちょっとしたミスで不純物が交じるのと同様に、不純なエネルギーが混じり込むからだ。

そして彼にしては親切なことに、扉には「本日、休診」と札をかけておいたし、出る必要もないのだ。

彼は、出来上がったチンキに「ローダナム」(ラテン語で称賛するという意味)、と名前をつけ遮光瓶に入れた。

ドンドンドンドン!

何を言っているのか、よく聞

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【ある錬金術師の話(仮題)17】

だから、なんの属性の薬か?と同時に、どのタイミングで?というのが非常に大事になる。

 このタイミングには、それこそいくつもの方法がある。

 土星のハーブに、火星の力を加えたい場合を例に挙げよう。

 1.火曜日の土星時間に採取する

 2.土星時間に採取したハーブを火星時間に調合する 

3.土星時間で最も火星が強くなる時間に採取する

 1や2の場合、一日に3~4時間程度しかチャンスはない。

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【ある錬金術師の話(仮題)16】

まずその第一段階として、土星の属性のハーブを採取する必要がある。

次に重要なのが、採取する”タイミング”である。

そして、そのタイミングには、やはり占星術が不可欠なのだ。

現代でも全ての人が、曜日を意識して生きている。
その名前の由来は、言うまでもなく惑星である。

土曜日は土星の力が支配的であり、日曜日は太陽の力が支配しているものなのだ。

それと同様に、実は、我々の”時間”にも惑星が関連

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【ある錬金術師の話(仮題)15】

チンキ剤のみならず、精油を作るときに重要なのが、”時間”である。

少し難しい内容ではあるが、古代の医師たちがどのように診断治療をしていたかを書いてみる。

まず診断のためには、ホロスコープが不可欠だった。

それは、患者が病によって寝込んだ時間なり、診察のために尿を持ってきた時間、はたまた家族が医師に相談に来た時間を用いる。

場所は、医師のいた場所を使う。

その2つを元に、ホロスコープを作成

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【ある錬金術師の話(仮題)14】

その中でも、注目していたのは、アヘンであった。

 アヘンは、麻薬の一種なのではあるが、その鎮痛作用はすこぶる良い。

 また、あまりにひどい咳や下痢にも、利用できる。

 とはいえ、常習性についても気になるだろう。

 しかし、がん性疼痛がある場合、痛みが取れる容量までは、中毒になることはない。 

 また、喫煙とは異なり、経腸管吸収のため常習性が低い。 

 ホーエンハイムはそこに注目し、最も

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【ある錬金術師の話(仮題)13】

これは強力かつ簡単な錬金術の治療薬である。 

 作るために必要なのは、バーナー、容器、ビーカーくらいである。 

 まず、100gくらいのハーブを、500ml程度の蒸留酒を入れる。

 これを1日1回かき回し、40日間漬け込む。

 濾して、液体と沈殿物を分離する。液体はとりあえず、容器に入れておき、固形物の生成にとりかかる。

 まず、バーナーで黒い灰になるまで焼く。

 次に、その灰を挽き、

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【ある錬金術師の話(仮題)12】

これを読んでいる人の中には、ハーブティーを好んでのんでいる人がいるかもしれない。
もしかしたら、漢方薬も煎じてのむ人もいるかもしれない。

しかし、どれだけお湯で煎じても、水に溶けるものしか抽出できない。
つまり、水溶性のものしか、水には溶けないのだ。

それでは全ての成分を抽出している、とは言えないのではないだろうか?
ビタミンにしても、水溶性と油溶性のものがある。

そうであるなら、油溶性のも

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