【ある錬金術師の話(仮題)24】
ホーエンハイムの眼の色が変わる。
それはそうだ。
解決が困難な症例というものは、彼にとっては大の好物なのだ。
これだけ医院が閑散としていても、変にプライドだけは高い。
自分が儲かっていないのは、腕が悪いせいではなくて、自分を必要とされる症例が無いだけ、と思っているのだ。
だからこそ、こういった症例は見逃せない。
しかも、それが金払いの良い患者とすれば、断る理由はない。
カールの方はというと、うまく話を逸らせたといった様子で、ニヤついている。
「もし良かったら、俺が紹介してやるけど?」
もちろん、はじめからそのつもりで来ている訳で、既に相手方には「腕の良い医者がいる」と、紹介料をもらっているのだ。
治ったら、治療費からも分前を頂こうと思っているところが、彼の小ずるいところなのだが。