【ある錬金術師の話(仮題)22】

  「ちぇっ、相変わらずだな。だから、いつも客が来ないんじゃないのか?」 


カールはそう言いながら、舐め回すように診療室をみた。

 薄暗い部屋の中には、試薬ビンやら怪しげなタイトルの本やらが散乱している。 


 「客、じゃない。

 患者、だ。

 そもそも、医者が暇なのはいいことじゃないか。

 医者が暇ということは、それだけ世の中が平和ってことさ。」 


 「そうは言っても、これだけボロだったら、実験どころか生活もままならないだろう?」 


 「だったら、もう少し早く治療費を払ってもらいたいものだな?」 


 「おっと、藪蛇だったかな。

どうも、具合が悪いや。」

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