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60年前の作品にも関わらず
すでにコロナ禍を
予見していたかのようだと
一時TV、新聞等に取り沙汰されました

「復活の日」

約1年前にドキュメンタリー番組を見て書きましたが
【エッセイ】復活の日からのメッセージ~小松左京氏~

今日は読書感想文を書かせて頂きます!

およそ理性や知性をないがしろにした
国家の科学利用により
人類は引き返せない道を辿ることとなる
という大まかなあらすじです。

ですが
SF科学を通して
著者の信条や哲学が
述べられているような一書

最終的には
過去、現在、未来、全てに
訴えかけるような
人間そのものの在り方を問うような
スケールの大きな作品です。

マニアックなほどの
科学的データや解説は難解で

正直、私にはとても
読みづらい部分もありましたが

翻って冒頭では

うっとりするような表現が
水際立ち
息を呑むほど美しい

それは例えばこんな表現

(南極観測隊の船が
赤道近くに差し掛かったときの表現です↓)

〜海洋(ポセイドン)の愛娘(まなむすめ)は、←観測隊の船のこと

群れ泳ぐ鱗(いろくず)をかきわけつつ、
ただひたすらに
南へ南へとくだって行った

緯度を一度、また一度とくだり

今は北斗も北の水に沈み
ゆく手に十字星がのぼったであろうが

潜望鏡をあげて天測しようともせず

ただ磁針(コンパス)と
積算距離計をたよりに
舳(へさき)を南にむけて

まっすぐに進んでいった

〜目もあやな珊瑚の森に
極彩色の胡蝶の舞う

熱帯洋(トロピカルシー)の景観が…

―そうだ

熱帯の島々の濃緑(こもみどり)のもと

椰子の梢が白砂におとす
濃い紫色の影の間(あわい)に

太古より鳴り続ける潮騒にこたえて

太古より変わらぬ陽の恵み
海の幸を讃える歌を歌い続ける(一部割愛)

小松左京先生は
とてもロマンティックな方であったに違いないと私は思います。

"南極観測隊の船が赤道を越えた"
というだけの話が
左京先生の手に掛ると
こんなにも素敵な表現になるのです
(勝手に恋♡)

更に後半部分
余命いくばくもないひとりの科学者が
熱く激しく講義する部分では

卓越した科学知識を持った
著者ならではの信条が
語られていると思います

また、戦争経験者であるゆえの
言葉に言い尽くせぬほどの

祈りにも似た痛切なる願い

遥か昔より未だ人間同士の
殺戮が繰り返される事実と

権力者を戦争へと駆り立て行く
心の真ん中を貫く

その本質を

左京氏は

”幼稚な恐怖”と鋭く洞察します。

かつては人を幸福にするための
道具であったはずの科学が
その輩の掌中に収まることの
あまりの恐ろしさと惨たらしさ

人類は二度と引き返せない道を行くのか…

それを越えるためには一体…

60年前左京氏が世に投じた
憂い訴えは
今も変わらず
警鐘を鳴らし続けています。

そしてそれでも尚
左京氏はあるひとすじの道を
信じている。

左京氏は
西洋の知識に対する
東洋の知恵と精神性の復活を

限りなく信じている。

私はこの書から
そんなメッセージを受け取りました。

最後までお読み下さりありがとうございました。

アラフォーからの豊かな人生をガイドする
ライフクリエイター朝比奈📚


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