【こはる日和にとける】#4祖父とレンゲ草
そろそろ上京して30年になる。
胃がしくしくと泣くような痛みが記憶に染みついて、いまだ東京の春は苦手だ。
それは大学時代。
嫌がおうにも突きつけられる"自分"という、存在。
不安のかたまりのようなわたしには、春はにぎやかで無邪気で眩しすぎて。
特段、苦しく、そして寂しかった。
大学構内には幾種類もの花がぎっしりと咲き誇り、複雑で甘ったるいにおいを漂わせ、そこかしこで新入生たちが眩しい光を放って溢れかえっていた。
二十歳のわたしは3年目となっても慣れない東京で、めいっぱい