【こはる日和にとける】#10 音痴はうたう
かつてわたしの音痴は、ぺらぺらのベールに覆われて危うくも巧みに存在していた。
それは両親でさえ気づかない。
なんなら小学校の音楽会でソロパートを任せる先生なんかもいて、音楽の時間はいつバレるかとひやひやしたものだった。
慎重にまわりを見て、歌えるふうに背伸びして。
それはまるでつま先立ちでよろよろしながら歌っているようで、ほんとはずっと居心地悪かった。
けれどよほど巧く立ち回れていたのか
そのベールは剥がれることなく無難に大人になり、しかしそれはある時あっけなく露見する