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そんな風に笑って 小説 第七話
「かんぱーい!」
四人の声と共にグラスをぶつけあう心地いい音が店内に響いた。
私はあまり飲まないビールを今夜ばかりは皆と同じものという理由で注文した。苦味の強い液体を一気に喉に流し込むと苦味は初夏の夜のような涼しい炭酸が強調されて喉元を走り抜けた。
「改めて優勝おめでとう!」
賑やかな居酒屋の中でもひときわ大きな声を出す安田に不思議といつものような苛立ちは無かった。
「今回の勝因はやっぱり高
そんな風に笑って 第六話
夕日がカフェを橙の光で染め上げる。
夏を感じさせるような強い日差しは時計の針が下を向いていても依然と室内に濃い影を落としている。
窓際に座る涼介に伸びる影は机の端にまで届きそうなほど長く、大きな影を作っていた。
いたたまれない空気の中に平静の声で神原は声を掛けた。
「皆、今日はお疲れ様。無事に一次通ったね」
「そうそうよかったっすよね!」
神原の声を皮切りに中浦も努めて相槌を打つが堰き止めら
蝉と星12 終わりです。
ただ黙って彼女の背中をさすっていた。
女性の背中に初めてちゃんと触れたかもしれい。
小さく震える彼女の背中は熱がこもっていた。
自分は震える小さな背中をいつまでもさすり続けた。
詩歩はそれを拒むこともなくひたすら大きな声で泣き続けていた。
静かな海に響く詩歩の泣き声にこたえるように日が昇り強い光が差し込んだ。
彼女の初めて見る泣いている姿にどうしようと考えることはなくただひたすらそばにいよ