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(詩)永遠の朝に

きみが去ってゆく日に
ぼくが少しも
かなしくないのは

いつもと同じ朝を
ひとりむかえたのは

誰もが
かなしみにうつむく朝に
きみが
遠くへいってしまうと
誰もが泣き崩れる朝に

それでもぼくが
少しも沈んでいないのは
ぼくがただの愚か者であり
またぼくが
ほんとうにきみを
愛しているからでもあるのです

ぼくがきみのことを
きみが誰かをちゃんと
知っているからなのです

世界のどこかの
そのどこかの世界のかたすみで

一本の草の
一枚の草の葉も
今日この日この朝
一枚の葉も

朝露と
別れてゆくのです

出会ってすぐに
自分の体の上を流れ落ちてゆく
朝露の一粒を
見送ってゆくのです

けれど彼は嘆かずに
嘆くことも知らず
笑いながら
見送ってゆくのです

そんなふうに
別れをかなしむ生きものは
おそらくこの世界の中で
そういう生きものは
たぶん
人間だけなのです

きみが去ってゆく日
今日この日この朝に
けれどそれでも
陽は上り
雨は降り
時は流れ
やがて夕闇が
都会をつつむ頃

どこかの
さびれた街の居酒屋では
一組の男と女が出会い
また別の男女は別れ
また別の男と女は
安ホテルのベッドの上で
永遠を誓いながら
結ばれてゆくのです

きみが去ってゆく
その瞬間にも
この世界は
生きつづけてゆくのです

そしてそれは
きみだって同じなのです

きみが去ってゆく日に
ぼくが少しも
かなしまないのは

そういうわけです

ぼくはきみのことを
きみが誰かを
ちゃんと知っているから

きみが去ってゆく
この静かな朝に

風がきみを
きみのことを
なんと呼んだか
きみを

えいえん、と

確かに呼ぶ声を聴いたから

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