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何にでもあてはまるものは科学ではない【憂世で生きる智慧】
アドラーの心理学理論の中心は「優越コンプレックス」にある。
彼は、「あらゆる人間の行動は、自分を向上したいという欲求(優越性の追求、または理想の追求)から生まれる」と主張した。
つまり、人は常に自己の価値を高めたいと考え、それが行動の原動力となるということだ。
1919年、哲学者カール・ポパーはアドラーと面会し、アドラー理論では説明がつかない子どもの患者の事例について話した。この時、アドラーはその患者を見たこともないのに、持論に基づいて容易に分析を行った。
ポパーは驚き、どうしてそれほど確信をもって説明できるのかと尋ねると、アドラーは「こういう例はもう1000回も経験しているからね」と答えた。
ポパーはこれに対し、「ではこの事例で、あなたの経験は1001回になったわけですね」と皮肉を込めて返した。
ポパーが指摘したかったのは、アドラーの理論がいかなる場合にも当てはまるように見えるということだ。例えば、川で溺れる子どもを助けた男について、アドラーは「自分の命を危険に晒してでも子どもを助ける勇気がある」と説明するだろう。しかし、同じ男が子どもを助けなかった場合でも、「社会から非難を受けるリスクを冒してでも子どもを助けない勇気がある」と説明できる。
どちらの場合でも、アドラーの理論ではその男の行動は優越コンプレックスの克服として説明できてしまうのだ。
ポパーは続けて、「人間の行動でこの理論に当てはまらないものを、私は思いつかない。だからこそ、あらゆるものが裏付けの材料になるからこそ、アドラー支持者の目には強力に説得力のある理論だと映った。一見すると強みに見えたものは、実は弱点でしかなかったのだと私は気づいた」と述べた。
このポパーの指摘は、科学的理論が持つべき反証可能性の重要性を示している。あらゆる事象を説明できる理論は、一見すると強力に見えるが、それは科学としての信頼性を欠くことを意味する。
反証可能性がない理論は、あらゆる結果を自分の理論に組み込むことができるため、実際には何も証明していないことになるのだ。
ポパーの洞察は、科学的探求において重要な視点を提供している。
[失敗の科学より]
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