読書まとめ『APIエコノミー』→シェアリングの時代、競争から共創へ
『APIエコノミー 勝ち組企業が取り組むAPIファースト』佐々木 隆仁
一言でいうと
シェアリングの時代、競争から共創へ
概要
API(Application Programming Interface)を中心とした経済圏について解説した本です。仕事での課題解決や、学習しているPythonの運用のためには、APIの活用方法を理解する必要があると感じ、APIの本を読んでみました。
APIとは「ソフトウェアの機能を別のソフトウェアやサービスなどと共有する仕組み」のことです。Webページ上へのGoogleマップの埋め込みが代表例ですね。
本書では、技術的な解説というよりは、ビジネスとしての視点でAPIが語られます。APIを公開して誰でも使えるようにすることは、企業が自社の商品を無料で配っているようなものです。それでも企業が利益を生み出すためには…?と考えるヒントを与えてくれる本です。
本書からの気づきを3点でまとめます。
① 新サービスは、既存サービスの組み合わせ
日々生まれてくる新サービスは、ゼロから作られたものはほとんどなく、既存サービスを組み合わせたものです。例えばUberは、GoogleMAPと決済サービスとコミュニケーションツールのAPIを利用した、マッチングサービスと表現できます。
APIの公開が進むことで、組み込める既存サービスの選択肢が増えています。公開されたリソースが活用できることで、持たざる者=新興企業でも戦いやすくなったと言えます。前述のUberもまさにそうですね。持てる者=大企業は、蓄積されたデータや技術をAPIで提供し、他社を囲い込んで主導権を握る選択肢が出てきています。
② 技術を公開し、エコシステムの中心に陣取る
APIを公開する側のメリットとしては、自社の技術をより早く市場に提供できること、パートナーと協業することで自社がコア事業に集中できること、利用データを収集しやすくなることなどが挙げられます。これらのメリットが組み合わさって各関係者がWin-Winになるとき、そこに経済圏が形成されます。経済圏の形成に成功している事例を2つ紹介します。
オーストラリアのソフトウェアベンダーNuix社は、不正調査にも使われる高度なデータ検索技術を持っています。それをAPIで公開し、SIサービスやフィールドサービスをパートナー企業に任せることで、Nuix社は製品開発やエンジニア育成に集中することができました。また、資格制度やトレーニング制度を作って収益化しているそうです。
アドバンスト・メディア社は、国産の音声認識エンジン「AmiVoice」の開発元です。特に医療業界やコールセンター、製造物流分野、自治体などで高いシェアを誇り、業界の専門用語の音声認識率に優れています。APIを一般公開したことで、利用者が増えて音声データをより多く収集でき、音声認識技術の改善につなげることができました。また、個人情報や企業の機密情報の音声データを受け取る場合は、個別に秘密保持契約を結んでデータを厳重に管理しています。こうすることで、競合他社よりも多くのデータを集めることができ、同社の競争優位性につながっています。
※図解未作成
③ API取引所がビジネスを加速させる
API利用を普及させていくために、本書では「API取引所」の必要性が説かれています。APIの提供者と利用者をつなぐ役割を担うプラットフォームですね。世界的に見ると、韓国の「API STORE」、米国の「Rapid API」、中国の「API Store」などがあり、お国柄によって特色があるそうです。日本市場向けに著者の会社が立ち上げたAPI取引所が「APIbank.jp」です。
API普及のための課題としては、統一規格がないことや、企業への導入支援ができる人材が少ないことなども挙げられています。上記の課題を解決し、APIの普及をリードする人材を「APIキュレーター」と称しています。APIキュレーターの資格やトレーニングの制度が今後作られるかもしれないですね。