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佐藤二郎さん舞台「そのいのち」と、ハン・ガン著の「菜食主義者」に共通するテーマ

佐藤二朗さんのXアカウントをフォローしている。夜中に突然「うんこ。」とつぶやいたりする軽やかさが、すきなのだ。

その佐藤さんがお知らせしてくれた『そのいのち』という舞台の先行チケットを、かなり前に購入した。なんの前情報も入れずに。舞台当日、おそらくおもしろいだろうという予感は、当たっていた。

脚本は、佐藤さんが書かれている。そして、障がいのある妻の夫役も演じられていた。佐藤さんは、生きている人間が誰しも持っている、エグミやアクのような部分を、ユーモアをたっぷりに演じられるのがほんとうに上手だ。

障がい者役を演じられていた、上甲にかさんは、実際にハンディキャップを持っておられる方。ゆえに、セリフにリアリティさと生々しさがあった。全身全霊でこの役にぶつかっておられる感じを受けた。

障がい者に雇われている介護ヘルパー役は、宮沢りえさん。初めて拝見するが、宮沢さんは七色の声をしていた。そして、美内すずえの漫画「ガラスの仮面」に出てくる姫川亜弓のお母さん、姫川歌子のよう。自分の才能を存分に出すことも抑えることもできる、細やかなコントロール。すごい。

この舞台のテーマは「弱いのは、誰か」や「強さとは、なにか」、「人を愛するとは、どういうことか」、「家族とは」というふうに受け取った。受け取る側の人生経験や精神性が問われる、とも感じた。

同じような感想を抱いたのが、最近読んだハン・ガン著の「菜食主義者」だ。これもまた、家族の話だ。激しく、悲しく、エロティックでありながら、次第に人間の持つ震源地が現われだす。そしてまるで、絵画作品を見ているような気持ちになってくる。

日本語訳が分かりやすく、加速度的にすっきり読めた

彫刻で掘られた、緻密で巨大な石像を見上げて近づくと、その地下には、もっともっと巨大で壮大な世界が広がっている。ハン・ガンさんの文章は、そんなふうに美しく、圧倒される。

この話のテーマは「家族とは」や「狂っているのは、なにか」ということだと思った。佐藤さんの作品にも少し通じるものがあると。

スタッフさんの「よい一日を!」の一言がすてき

二作品とも、どちらもかなり濃厚でリッチな気持ちになれる。そして不思議と見終わったあとは、さわやかだ。世田谷パブリックシアターからの帰り、三軒茶屋から錦糸町まで移動して、おいしいコーヒーをテイクアウトして、帰った。


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