守護霊さんの住むところ/エッセイ
本当に、私、目からうろこの真実を知りました。
幻聴の原因が「病気」でも「霊」でもなく「銀歯」だったというのです。
銀がラジオの電波をキャッチし、ラジオの話声がする・・・誰もいないのに話声が・・・なんなんオバケ!? 私がおかしいの!? ってなりますよね。知らなかったら。
こんな風に、「今の科学では説明がつかない」現象も、今世紀中には科学的にある程度解明できるのではないかなあ、と思ってます。とはいえ、完全に否定はしたくない気持ちもあります。
霊感があるといわれる森公美子さんによると、「霊の出る条件」は
①電波がある
②磁波がある
③霊自身の出たいという気持ち
なのだそうです。①②は、なんとなく、わかる気がします。ラジオやテレビが出来たのは結構さいきん、ここ一世紀ほどであり、それより前の時代の人間がテレビを見たら「箱の中に人がいる! オバケ!」って思うかもしれませんよね。
そして、③はなかなか、情緒的ではありませんか? 霊にも「心」があるのですね。③があるために、私たちの暮らしに彩りが備わっているように私には思えるのです。とは、言いすぎでしょうか。
小学生の頃、幼馴染の仲間内で守護霊さんが流行っていた。全国で主流だったのはコックリさんの方だが、呪われると怖いので自分たちは守護霊さんをしようということになったのだ。私たちの認識ではヤバさレベルがコックリさん>>守護霊さんであった。いや、同じものやねんけど。
守護霊さんの方法としては、まず、ボールペン1本を全員で握って、白い紙の中央にペン先を下にして立てる。次いで、リーダーが呪文を唱える。
「守護霊さん守護霊さん、居られましたら、奈良県〇〇・・・(住所)の若林家の居間の、白い紙の上に降りてきて下さい」
すると、ボールペンが勝手に動き出すのだ。それから、質問をしてゆく。まずは小手調べ。
「さきちゃんのお母さんの名前は何ですか?」
じ ゅ ん こ
ボールペンがゆっくり、小刻みに動いて文字を綴ってゆく。ペン先を紙から絶対に離してはいけないので、続き文字になり判別しがたいがちゃんと、「じゅんこ」と読める。合ってる・・・。初めてやったとき、本当に興奮した。
だがこの現象は、今ではこう説明できる。さきちゃんのお母さんの名前が「じゅんこ」なのは全員、わかっている。全員の脳にある潜在意識がボールペンを動かしているのだと。不覚筋動(僅かな筋肉の疲労が動いた方向へ力を無意識に動かす)のせいなのだと。だが、ちょっとつっかえたりして、たどたどしく、いかにも「守護霊さんが考え中」のような動きをボールペンがするので、私たちは夢中になったのだ。
こうして私たちはしょっちゅう、誰かの家に集まっては守護霊さんに興じていた。学校では禁止令も出たが、構わなかった。誰も一緒にやってくれないときは、ひとりでもやっていた。ひとりでもボールペンは動いてくれた。
姉とふたりでやっていた時、私は姉をからかってこんな質問をした。
「おねえちゃんの好きな人の似顔絵を描いてください」
マセガキの姉は、学校のS先生を慕っていた。すると守護霊さんは、メガネをかけ、痩せて「ミズカマキリ」とあだ名されていたS先生の特徴をよく捉えた絵を、描いたのである。以下が、その絵を再現したもの。
私と姉は、ボールペンが動く間、恐々として顔を見合わせていた。「私が動かしたんちゃうでッ!」姉は本当に怯えていた。もちろん私が動かしたのでもない。今でこそ科学的な説明はつくけれども、あの絵に関しては、今でも割り切れないものがある。
別の日、姉とふたりでやっていて、こんな質問をした。
「明日の朝ごはんの味噌汁の具は何ですか?」
守護霊さんの回答は
み ど り の く に
「みどりのくにって何・・・?」
「ネギ?」
「うちの味噌汁にネギ入りはあまり無いで」
「ワカメちゃうか?」
「せやな、ワカメやわ」
翌朝、本当に「ワカメと豆腐の味噌汁」が出たのである。私と姉は驚愕し、ますます守護霊さんにハマっていった。しかしこれも簡単に説明できる。「ワカメと豆腐の味噌汁」がしょっちゅう、若林家の朝ごはんに出たからである。私と姉の脳裏の隅っこに「ワカメ」が存在していただけのことだ。
別の日、こう質問した。
「守護霊さんはどこに住んでおられますか?」
守護霊さんの回答
み ど り の く に
「またみどりのくに? どういうことや」
「ワカメに住んではるってことかな」
「ちゃうで、緑とか自然に囲まれた、天国みたいなところってことやろ」
「せやな。じゃあ、味噌汁の具のみどりのくにはどういう意味なんやろ」
「わからへん・・・」
それからは何を質問しても、「みどりのくに」としか答えてくれなくなった。怖くなって、私たちは守護霊さんをやめた。
これも今となっては、「みどりのくに」というワードが強烈に私たちの頭にインプットされていただけ、と説明できる。だが・・・最初に「みどりのくに」を考えついたのは? 味噌汁の具を問われてこのような詩的なワードをひねり出す能力が当時の私たちにあったとは、とても考えられない。今の私でも考えられない。
これは、やはり、「いずれの時代かの、詩を愛したご先祖様の霊」のなせる業だと思いたい。