鰆木

小説家志望。 魔の平成4年生まれ。

鰆木

小説家志望。 魔の平成4年生まれ。

最近の記事

どうして書くことが好きなのか

 Wordの白紙ページを目にしただけで、 「ああ!文字で埋め尽くしたい!」 という衝動に駆られるのだけど、これって創作好きな人にとってはあるあるだと思う。  ふと、この衝動はどこから生まれているのだろう、と気になった。    そこでよくよく考えてみると、私はスマホのメモ帳を開いても、原稿用紙を手にしても、それと同じような衝動は感じないことに気付いた。  ということは、私のこの欲求は、「物語を紡ぎたい」というより、「ひたすらタイピングをしたい」というものなのかもしれない

    • 比べるなんておこがましいけど

       凪良ゆう先生の「滅びの前のシャングリラ」を読んで、素晴らしすぎて胸が震えたんだけど、それと同時に自分のセンスのなさを改めて感じて、ぽっきり心が折れてしまった。あー、面白いってこういうことだよなぁ、逆立ちしたって自分には書けないなぁ、と。  物語の構成についての指南書を読んだりしたけど、上手く自分のものにできないというか、なんだか余計に混乱して、書くことが苦行になってきた。だからと言って、感覚だけで面白いものが書けるわけでもない。詰んでる。  小説現代長編新人賞に応募した

      • 推敲しんどくない?

         書いてる時はあんなに楽しいのに、いざそれを一から読み返し、誤字脱字や矛盾点等々を見つけて直していくこの"推敲"という作業が、正直怠くてしょうがない。  しかも、何度読み返しても必ず訂正箇所が見つかるから、終わりが見えなくてしんどくなってくる。  でも、この作業を省いたら、とてもじゃないけど人に読ませられない。だからやるしかないんだけど、いやもうほんとに面倒くさい。代わりに推敲してくれるAIが早く開発されないかなぁ、とか考えるけど、実際出来たら出来たで、自分の作品を委ねられ

        • 大切な人との関係に値段をつけるとしたら

           川上未映子先生の作品は、中学生の時に「乳と卵」を読んだぶりだった。  大学生の時に人から薦められて「ヘヴン」を読もうとしたけど、内容の重さに耐えきれず、序盤で脱落してしまっていた。  「黄色い家」もまた、なかなかベビーな話だった。というか、心理描写や情景描写が、ここまで書くかってくらい生々しくて、それが余計に重みを増しているように思う。一気に読み進めるのはしんどくて、中盤で一回休憩を挟んで別の本を読んでから、意を決して最後まで読んだ。  テレビのインタビューで、川上先生

        どうして書くことが好きなのか

          明るい小説っていいね

           やっとこさ、「成瀬は天下を取りにいく」を読み終えた。読みやすい文章で、キャラ造形もしっかりしていて、共感できるところがいくつもあって、万人ウケするのも納得の内容だった。  テレビ番組の特集なんかを見ていると、成瀬もしくは島崎について語られることが多いように思うが、わたしは圧倒的に大貫ちゃん推しだ。  高校入学当初の、あの思春期の終わりきらない感じとか、不器用なくせに自分を達観していると思い込んでいるところとか、周りを気にして目の前の相手を蔑ろにしてしまっているところとか、

          明るい小説っていいね

          純文学を諦めた

           ここしばらく、文藝賞に出そうと思って純文学系の話をこつこつ書いていたけど、最後まで書ききったところで「あれ、これ面白くねーな」と思ってしまった。いや、本当は途中から薄々気付いていた。この話、くそつまんねぇって。  もともとわたしは純文学作品を読むことが多くて、だから自然と、自分も書くなら純文学だと思っていた。でもいざ書いてみると、途中から書くこと自体が退屈になってきて、ただただ苦しい作業になってくる。書きはじめた頃はあんなにも楽しかったのに。  昨年の小説現代長編新人賞

          純文学を諦めた

          誰のための弔い

           「マイ・ブロークン・マリコ」めっちゃ面白かった。  話の核となる部分は激重なのに、淡々としてるというか、むしろシュールで笑えるところが多かった。  主人公のシィちゃんがいい感じにやさぐれてて、セリフも独特で好感が持てる。個人的には、「直葬」「産地…?」ってところと、「死んでちゃわかんねぇだろ!」ってところがたまらなく好きだった。  回想のマリコが、最初は他愛ない会話や微笑ましい姿が描かれているのに、記憶が掘り起こされていくうちに彼女の癒やしようのない傷やゾッとするほどの

          誰のための弔い

          SNSで話題の絵本

           息子がまだ小さいので、本屋に立ち寄ると必ず絵本コーナーもチェックしている。  自分が子供の頃に持っていた絵本を見つけて懐かしくなったり、最近出たものでも気に入って衝動買いしてしまったり、とにかく絵本コーナーはこの歳になってもわくわくする場所だ。  先日も絵本コーナーをぷらぷらしていて、「SNSで話題沸騰!」みたいな感じの帯が目に留まった。表紙の絵が可愛かったこともあり、手に取って読んでみたのだが、そこで私は衝撃を受けた。  こんな絵本、自分の子供には読ませたくない。

          SNSで話題の絵本

          誰もが持つ、自分だけの物語

           小川洋子は天才だ。  私がそう肌で感じたのは、「薬指の標本」を読んだ時だった。  いったいどういう話なのか?と聞かれても上手く説明できる自信はないし、じゃあなぜ小川洋子を天才だと思ったのか?についても同様だ。私はこの作家の良さを切り取って表現するだけの言葉を残念ながら持ち合わせていない。  今回、「人質の朗読会」を読んで、改めて私は小川洋子の凄みに触れた。  柔和で繊細で、誰にとっても理解しやすい言葉が使われているのに、「この表現しかない」という堅固な意志を感じさせる。

          誰もが持つ、自分だけの物語

          見つけてくれて

           今村夏子先生の「星の子」がすごく好きで、映画も見に行った。主演の芦田愛菜さんも他の俳優さんたちも演技力が高くて、原作読んでないと理解しづらい部分もあるけど面白かった。  私はこの小説を、まだ「2世信者」という言葉が広まってない頃に読んだ。そして、面白い以上に、悔しくて、救われた。  私はとある新興宗教の3世として生まれた。私の意思とは無関係に、祖父母と両親がそれを信仰しているからという理由で、当然のように私も入信させられた。  身を滅ぼすほどの献金を要求されたり、詐欺

          見つけてくれて

          プロット書けない問題

           私は未だにプロットをどう書けばいいのかわかっていない。  さあ、プロット書こう!と意気込んでみても、起承転結の"承"でもう詰まる。だからと言っていきなり本文を書き始めても、想像は膨らむが途中で収拾がつかなくなる。  最近、どうにかこうにかラストまでプロットを書いてみたが、なんか面白くない。道筋を通すことばかりに気が散って、キャラクターの心情や物語の起伏がおざなりになっているのが自分でもわかる。  プロットの段階で細かな設定を決め、物語を構築するにはどうすればいいのか。

          プロット書けない問題

          お酒はいくつになってでも

           私の父は大の酒好きで、毎晩飲み潰れるまで飲んでは翌日二日酔いのまま仕事へ行く、という生活を長年過ごしていた。  家で飲む分にはまだよくて、外で飲んできた日なんかは夜中に騒々しく帰ってくるわ、トイレと間違えて寝ている私の部屋に入ってくるわ、機嫌が良すぎてうるさいわ、鬱陶しいことこの上なかった。  そんな父に似て私もアルコールには強い方だけれど、胃腸が弱いため、記憶を無くしたり我を忘れたりするほど飲むことはなかった。  昨年の大晦日、私は初めて日本酒を飲むことになった。

          お酒はいくつになってでも

          書いてもいいし書かなくてもいい

           9月末締切だった文學界新人賞になんとか一作送ってからというもの、うだつの上がらない日々を過ごしている。  書きたいものも、最後まで書けそうなものも思いつかず、小説読んだり漫画読んだり寝たりしながら、たまにノーパソに向かって中途半端にプロットらしきものを書いたりした。  小説現代長編新人賞の講評が出て、お褒めの言葉も厳しい言葉もいただいて、なんだか満足してしまった。  小説を書き始めて1年、「書かなきゃ」という使命感に近い思いで書き続けてきたけど、それが今やもう「書かな

          書いてもいいし書かなくてもいい

          【短編小説】あの女

           くだらない男だと思った。  会社のエントランスで待ち伏せされていた時点ですでにうんざりしたが、強引に連れていかれた飲み屋で延々と愚痴を聞かされて、とうとう愛想笑いすら作るのをやめた。先輩といっても部署は違うし、恨まれたとしても実害はないだろう。 「嫁さんがさ、子供のことすんげー可愛がってるんだよ。いや、いいんだよ? 母親として頑張ってくれてるんだし、それが不満ってわけじゃないんだけど。でもさぁ、おれに対する態度が明らかに冷たくなってんだよ。ひどくない? おれだって毎日仕事

          【短編小説】あの女

          【短編小説】落雷

           ついに落ちた。  さっきから腹の虫のような唸り声が響いていて、それはこの町一帯の寝室を一つ一つ揺さぶりながら少しずつ移動していた。時折、気まぐれにその触手を地上に下ろしては、鋭い光と轟音を放った。  わたしはパイルが伸びきったくたくたのタオルケットの下で膝を抱えながら、自尊心の膨れた生き物のごとく傍若無人に振る舞うそれに耳を澄ましていた。  一方で、わたしの体はすっかり怯えてしまい、心臓が早く、強く、鳴っている。薄目を開けて、青白い光が透けるカーテンを見つめながら、他人

          【短編小説】落雷

          幼い私は世界を背負う

           小1か小2の時、私はドラえもんを見ていて衝撃を受けた。  それは、のび太が過去に戻ってまだ子供だった両親と接触し、二人の出会いを邪魔してしまう、という話だった。その中でドラえもんが言った「二人が結婚しないと君の存在は消えてしまうんだぞ!」という台詞(うろ覚え)が、幼い私の価値観を見事にひっくり返した。  両親が結婚してなければ私は生まれていなかった。  人間が誕生するメカニズムを知っていればそれは当然の理なのだが、当時の私はそんなの知らないし、そもそも自分という存在に対

          幼い私は世界を背負う