感染症の発症で起こりやすい、熱性けいれんの症状や原因、予兆、治療法などは?
こんにちは、翼祈(たすき)です。
今回は感染症の合併症でよく聞く、「熱性けいれん」について書こうと思います。
ここからは、「熱性けいれん」の症状などについて説明します。
▽熱性けいれんとは?
38℃以上の急な発熱に伴ったけいれんで、意識障害などを引き起こす病気です。継続時間は5分以内が多いことが大きな特徴です。発症しやすい年齢は、6ヵ月~6歳で、子どもさんの8~9%と高い頻度で見受けられます。日本では10人に1人ほどの子どもさんが経験するとされている疾患です。
けいれんを同じ日に繰り返すケースや、けいれんが15分以上継続するケースでは、髄膜炎、脳炎などの発症の可能性も疑われます。
一般的に38℃以上の発熱時で急激に体温が変化する時に発症し、半数近くが繰り返して起こりますが、成長に伴った6歳前後でほとんど起こらず、経過は良好だと言えます。日本では小さい子どもさんのおよそ8%、西ヨーロッパでは3%くらいに見受けられます。一部3~5%がてんかんに移行すると言われています。
熱性けいれんが再発する確率は15%と言われています。また男の子にやや多い様です。熱性けいれんは、良性の病気で多くの場合治療も必要とせず、脳へのダメージも残りません。
発熱の初期に発症する場合が多く、けいれんで発熱に気付くこともあります。一般的な症状は意識がなくなり、白目をむき、けいれんを起こします。一般的に“ひきつけ”と呼ばれるものですが、それぞれタイプがあります。
間代性けいれん、強直性けいれん、強直・間代性けいれんなどがあり、身体全体にけいれんが起こったり、半身とか四肢の一部に起こったりします。また手足に力は入らずにダラッとして意識だけが喪失することもあります。
この様な“ひきつけ”の時に、目は見開いて虚空を見つめ、焦点が合わなかったり、左右に偏っていたりします。
けいれんは基本的に2~3分で収まりますが、20~30分と持続することもあります(けいれん重積症)。けいれんが収まった後、ボーッとする時期がありますが意識は元に戻ってきます。症状や起こり方が多様なことから、けいれんの持続時間が長い時や1日に何度も発症するけいれん、身体の一部のみのけいれんの時には入院治療が必要な場合もあります。
熱性けいれんが起きた後、2~3ヵ月間隔を空けて予防接種をすることを推奨するガイドラインがありますが、アメリカやヨーロッパではとくに基準は明確に設けていません。
ワクチン自体は全て予防接種を受けて問題ありませんが、ワクチンごとに副作用など違うことで、接種時期を含めてかかりつけ医と相談して決めましょう。
◉症状
・初めは硬く突っ張るが、だんだんピクピクと身体を震わせる(強直・間代性けいれん)
・ある日、手足を固くして突っ張らせる(強直性けいれん)
・手足をピクピクと震わせる(間代性けいれん)
・顔色不良
・嘔吐・失禁を伴い、呼吸は十分にできないことで、唇の色が悪くなる状態(チアノーゼ)
・意識消失
・手足の脱力感
・白目をむく
など
◉原因
熱性けいれんは発熱により急激に体温が変化することで発症します。
ご両親の熱性けいれんの既往、1歳未満で熱性けいれんを発症した、発熱して1時間も経たずにけいれんした、39℃以下でけいれんした、のいずれか1つでも該当する場合は、熱性けいれんを再発する確率は30%とされています。
突発性発疹、インフルエンザ、夏風邪(手足口病やヘルパンギーナなど)など、急な発熱を伴った病気が原因で熱性けいれんが起こります。
◉予兆
・手足に力が入らずに意識を喪失するとき
・両手足を硬く突っ張った後に、両手足をガクガク震わせるとき
・唇が紫色になるとき
・目の焦点が合っていない、白目をむいているとき
・失禁や嘔吐を伴っている場合もあるとき
・名前を呼んでも反応をしないいとき
◉熱性けいれんの種類
①単純型の発作
・年4回未満
・1回15分まで
・全身に左右対称にけいれんが起きる
・全て38度以上でけいれんが起こっている
②複雑型の発作
・年4回以上
・38度以下でもけいれんが起こる事がある
・左右非対称にけいれんが起きる
・けいれんが身体の半分、一部など、局所的に発生している
・発作が15分以上続いている
・一度の発熱で、24時間以内に複数回発作を繰り返す
特に下記の3項目の内1つでも該当する時は複雑型です。単純型は熱性けいれんのおよそ8割、複雑型は2割程度で発症します。両者は治療や経過が異なってきます。複雑型やけいれん重積症では、けいれんの治療やそれ以外の疾患との区別のために入院治療が必要となるケースが多いです。
◉診断基準
熱性けいれんは、発熱に伴ったけいれん発作で、髄膜脳炎やてんかんなど鮮明な原因を否定することで確定診断をします。熱性けいれん以外の病気が原因ではないか解析するために血液検査や場合によっては頭部画像検査(MRIやCT)、髄液検査、脳波検査が実施することがあります。
熱性けいれんと確定診断するためには、同じく高熱の出る、「細菌性髄膜炎、急性脳炎、急性脳症、電解質異常、てんかん、低血糖、脳腫瘍、高アンモニア血症」などの重篤な疾患ではないことをきちんと区別して判断しなくてはいけません。
正確な確定診断をするためには、熱性けいれんの特徴を把握しておく必要もあります。
◉類似している病気
熱性けいれんは発熱に伴う付随的な症状です。まず発熱の原因を調べることが必要です。その反面、病気そのものがけいれん、発熱、意識障害を生じる疾患は多くあって、それ以外の疾患と区別するための検査が必要です。
例を挙げると、髄膜炎、脳炎はけいれんや意識障害が起こりますし、循環器疾患、低Ca血症、低血糖症、先天性代謝異常症、なども同じく意識障害、けいれんを起こします。このことから血液検査、CT、髄液検査、MRI、心電図などの検査が必要です。
◉治療法
熱が大して高くないのにけいれんが起こった時でも、1時間の内に熱が出てきたら、熱性けいれんと考えて良いと思います。
なお、解熱鎮痛剤を使うことは、けいれんを防ぐことにはなりませんので注意が必要となります。
熱性けいれんを頻繁に発症する可能性が高い場合は「ダイアップ(ジアゼパム)」と呼ばれる坐薬を活用してけいれんを予防する必要があります。ですが、熱性けいれんを発症したことのある子どもさん全員が、「ダイアップ」が必要ではありません。熱性けいれんの60~70%は通常一生に1回しか起こらず、単純型の熱性けいれんの時には脳障害や知能低下を起こしません。
また、「ダイアップ」は神経や脳に作用する治療薬なので、興奮やふらつきをして夜眠れないといった副作用が出現する可能性もあります。
「ダイアップ」を使うことを推奨される場合
「15分以上の遷延性(せんえんせい)発作」を起こしたことがある。または下記の2つ以上該当する熱性けいれんを2回以上繰り返した場合は、「ダイアップ」を処方します。
・熱性けいれんが出現する前から、神経学的異常・発達遅滞が認められるとき
・焦点性発作がある、または24時間以内に反復する発作が認められるとき
・近親者に熱性けいれんまたは、てんかんが既往歴のある人がいるとき
・発熱した後1時間以内に発作を起こしたとき
・初回発作が生後12ヵ月未満のとき
・38℃未満での発作のとき
◉親御さんが行うべき対応
・周囲に危険なものがないか、平らな場所で頭部を横に向けて静かに寝かせて、呼吸が楽に行える様に、衣服の胸元をゆるめて下さい。(口の中に指や物を入れないで下さい。強く舌を噛むことはなく、嘔吐する原因になったり、呼吸がしづらくなったりします。)
・嘔吐したものを気管に飲み込んでしまう誤飲など、吐きそうな場合、顔を身体ごと横に向け、嘔吐したものが「喉」に詰まらせない様にして下さい。口の中にものをつっこむのは、逆に危険なので止めて下さい。
・その後、けいれんが始まった時刻を時計で確認します。
・けいれんが起きている様子を確認します。(片方の手、足、眼だけがけいれんしていないか?などを確認)
・けいれんが落ち着いたら、けいれんが何分間継続したかを確認し、体温を測りましょう。
・初めて熱性けいれんを発症した時は短時間で落ち着いても、すぐ救急搬送で病院を受診しましょう。
・2回目以降の熱性けいれんで短時間に落ち着いた時は通常の受診でも大丈夫です。
◉注意点
・けいれんが5分以上継続した時は、救急車を呼んで病院を受診しましょう。
・1回の発熱でけいれんを2回以上起こしたとき
・けいれんを起こす前から意識がおかしいときや、けいれんが止まってからも意識が回復しないとき
・目が一方だけに偏っている時とき
・けいれんが左右対称でないとき(片方だけのけいれんのとき)
・けいれんの後にまひ(足や手、顔の一部などが動かせない)が残ったとき
・はじめてのけいれんが6ヵ月未満または6歳以上で起こったとき
・神経障害や発達障害を既に持っているとき
・家族にてんかんの既往歴を持つ人がいるとき
・けいれんが起こる24時間以上前から高熱が続いていたとき
また、やってはいけないこととして、
・子どもさんがけいれんを発症した時、口に箸やタオルなどを入れてはいけません。けいれんを発症している時に舌を噛まない様に無理に口の中へ物を詰め込んだり、顔色が悪いからといって口に物を詰めると逆に窒息します。
・親御さんがパニックにならずに、なるべく冷静に子どもさんへの対処ができる様に意識しましょう。
・身体を強く押さえ込んでもけいれんは止まりません。
・急に人工呼吸したりするのは避けて下さい。けいれんを起こした後に、人工呼吸によって嘔吐した物が気道へ入ると、肺炎や、窒息して命を落とす恐れがあります。
・身体を強く揺さぶるといった、余計な刺激を与えないで下さい。
◉まれにてんかんへの移行も
熱性けいれんは予後が良好な病気です。年齢が上がるに伴って再発率は下がり、起こりづらくなります。小学校に入学する頃にはほとんどけいれんが無くなりますが、場合によっては8~9歳になってもけいれんを発症することがあります。熱性けいれんから将来3~5%の子どもさんがてんかんに移行すると想定されていることから、てんかんへの移行が考えられ、脳波検査や抗てんかん剤の内服薬を飲む治療が必要になるケースがあります。
熱性けいれんの既往歴がある子どもさんが、後に誘因のない無熱性発作を2回以上繰り返す、熱性けいれん後てんかんの発症率は2.0〜7.5%程であって、一般人口への該当はてんかん発症率(0.5〜1.0%)に比較的高い水準です。
特に複雑型熱性けいれん、家族に無熱性けいれんの既往歴がある時、1歳未満での初発の時にはてんかんへの移行率が非常に高くなります。従ってこれらに該当する時は脳波検査を実施することが多くなります。
◉受診の目安
・発作が5分以上継続して抗てんかん薬の静脈注射が必要と考えられるとき
・発作してから30分以上の意識障害、髄膜刺激症状、大泉門膨隆が認められ、中枢神経感染症が疑われるとき
・発作が同一発熱器官に繰り返し認められるとき
・脱水所見が認められる、または全身状態が不良のとき
・上記以外でも診察した医師が入院治療が必要と考えるとき
参考サイト
熱性けいれん 医療法人社団 育心会 二子新地 ひかりこどもクリニック
私の経験談
私は、3歳の頃に熱性けいれんになりました。
突然高熱が出た後、目が片方の上方を向いて、白目を向いていて、身体を少しピクピクさせて、その場から動けなかったそうです。
てんかんを伴ったりしていないので、単純型の熱性けいれんだったと思います。
よくインフルエンザなどワクチンを打つ時に書く問診票で、「過去にけいれん(ひきつけ)になったことはありますか?」という項目が必ずあって、「なぜあるのかな?」と思いながら、「はい」と書いていました。
この記事を書いて、熱性けいれんも家族の既往歴に入ると書いてあったので、なるほどと思いました。
私はこれまで多くの感染症の記事を書いてきましたが、AKARIでは一旦区切りにします。
感染症の記事はおおよそほとんど書いて来たので、「まだ書いていない。でも流行っている」というのを、書き尽くしたためでした。
こういうことは考えたくないですが、もしまだ書いてなくて、新しく流行っているものがあったら、その時に筆を取ろうかなと思っています。