名古屋大学発のベンチャー企業「Craif」が、「脊髄性筋萎縮症(SMA)」の検査キット開発!
こんにちは、翼祈(たすき)です。
この記事で行われることは、「新生児マススクリーニング」です。2023年に所属する会社のサイトに記事を書いたのですが、改めて説明したいと思います。
「新生児マススクリーニング」とは、生後5~7日(日齢4~6日)の全ての赤ちゃんを対象に、先天代謝異常症など先天性の病気の可能性があるかどうかを解析する検査となり、日本では1977年に開始されました。
先天性の病気の中には、赤ちゃんの時から治療を受けることで病気を発症することや障害の重症化を予防できるものがあることで、自治体(都道府県・政令指定都市)が行っています。検査する費用は無料です。
検査では、赤ちゃんのかかとからごく少量の血液を採取します。検査を行った病院から血液を染み込ませた専用のろ紙が検査機関に郵送され、2週間程度で検査結果が病院に届く仕組みです。
検査をして、病気の疑いがなければ一般的には1ヵ月健診で親御さんに伝えられますが、病気が疑われる時には健診前に連絡をします。
長い間先天代謝異常症4疾患(メープルシロップ尿症・高フェニルアラニン血症・ガラクトース血症・ホモシスチン尿症1型)と内分泌2疾患(先天性副腎皮質過形成症・先天性甲状腺機能低下症)を対象に続けられてきましたが、タンデム質量分析法(通称「タンデムマス」)という新しい検査技術の導入を受けて、2013年からは「尿素サイクル異常症」「脂肪酸代謝異常症」「有機酸代謝異常症」が追加され、総数25疾患(その中で7疾患は「二次対象疾患」)に拡大されました。
“「新生児マススクリーニング」の結果=病気の確定”ではありませんが、“病気の恐れがある”という判定だった時には可能な限り早期に精密検査を受けて下さい。精密検査をして、診断が確定してもほとんど症状が現れない“軽症例”や、実は病気ではなかったことが分かること(“偽陽性”と呼ばれる)となることもあります。
居住地によっては、「新生児マススクリーニング」の追加検査に該当する“拡大新生児スクリーニング(オプショナルスクリーニング、拡大スクリーニングなどと呼ばれることも)”を受けることができます。希望したい人は全額自己負担で検査を受けることができますが、居住地によっては無料であったり、助成金を受けられたりすることがあります。
拡大新生児スクリーニングでは、「新生児マススクリーニング」の対象疾患ではない以下の9つ(女児は7つ)の病気の可能性がある疾患の検査を受けることができます。
詳しい内容は、下記の記事と、巻末の参考サイトを読んで頂きたいと思います。↓
その、「新生児マススクリーニング」ですが、上記の疾患で、ある検査キットを開発した大学がありました。
全身の筋力が少しずつ衰える難病「脊髄性筋萎縮症(SMA)」に関して、名古屋大学などは発症する可能性を早い段階に検知可能な新しいスクリーニングキットを開発し、2025年頃に実用化をしたいと明らかにしました。
今回は、名古屋大学などが開発した「脊髄性筋萎縮症(SMA)」の検査キットの概要について発信します。
「脊髄性筋萎縮症(SMA)」の検査キットの詳細
SMAは、近年は飲み薬や点滴などによる治療で改善がみられる様になりましたが、病気が進行した後の治療効果は限定的なことで、早期発見が求められてきました。
2024年8月23日に熊本県熊本市中央区にある熊本城ホールで開催された「日本マススクリーニング学会」で、研究を主導した名古屋大学発のベンチャー企業「Craif(クライフ)」が新しいスクリーニングキットに関して説明しました。
これまで検査期間1~2週間を1時間半に短縮できるとし、血液ではなく唾液で検査することから生まれたばかりの赤ちゃんの心身の負担軽減に繋がることを述べました。Craifによると、新しいスクリーニングキットは生まれたばかりの赤ちゃんから採取した試薬と唾液を混ぜてSMN1を増幅させ、特殊な紙に流し込んで判定します。
参考:新生児2万人に1人が発症、難病「SMA」を1時間半で検知…名古屋大などが新キット開発 読売新聞(2024年)
研究を担当した名古屋大学の平野雅規・特任講師は、
「新しいSMAのスクリーニングキットの実用化に向けて、積極的に検査を行います。すぐに導入できる検査方法ですので検査を導入していない産科クリニックでも活用して頂きたいです」
と語りました。
難しい線引き
SMAに関しては、以前別のnoteの記事で触れさせて頂いたので、下記のリンクを貼っておきます。↓
新生児マススクリーニングなどこういう検査に関しては、常に難しい線引きがされています。それが最近ですと、着床前診断です。
2024年8月28日、日本産科婦人科学会(日産婦)は、受精卵の段階で重い遺伝性疾患の有無を解析する着床前診断に関して、対象を拡大した新たなルールの下で実施を許可した病名を初めて明らかにしました。
72件の申請に対して、神経の難病や遺伝性の目のがんなど36の病気で、58件が認められました。今まで対象外だった延命できる治療法がある病気や、成人後に発症する病気も含まれていました。
今回公表されたのは2023年中に審査されたもので、申請72件はこれまでの平均のおよそ3倍でした。認められた主な病気は、細胞の中でエネルギー産生が低下して異常を引き起こす「ミトコンドリア病」や遺伝性の目のがん「網膜芽細胞腫」、免疫不全となる「細網異形成症」などです。
難病情報センターなどによりますと、「網膜芽細胞腫」は小さい頃の発症である一方、治療によっては10年生存率が9割とも言われてます。「先天性赤血球形成異常性貧血1型」は、治療法の発達で亡くなることは珍しくなってきています。「球脊髄(せきずい)性筋萎縮症」は30~60代の男性が発症する場合が多いです。
着床前診断に関しては、いつも命を選別していると議論に挙げられています。
私は今のところ、出産する予定もありませんが、既往歴が2024年で4つ増えて、今10個抱えているので、もしそういう予定があるなら、着床前診断をするかもしれません。
やっぱり、生まれてくる子に、同じ辛い思いをさせたくないので。
この記事の冒頭で、先天性甲状腺機能低下症のことを知って、私は甲状腺機能低下症の当事者なので、「遺伝とかするものなんだ…」と思うと、言葉を失いました。
逆に、新生児マススクリーニングは生まれてから検査するものなので、何か疾患に引っかかっても、適切な治療を受けることで、その子が将来も生きやすくするための、支援の幅が広がる。
同じ難病などを検知する検査なのに、全然議論の声の大きさなども違いますよね。
私も「やっぱり自分の子どもが欲しい」という夢は、特に強かった20代の頃から消えていませんし、それが親のエゴだと言われるかもしれません。
それでも、希望する誰でも「子どもが欲しい」という夢は、仮に実現できなかったとしても、そういう希望があるという想いまではかき消して欲しくないとも思っています。