オウム病。インコやニワトリなど、鳥との飛沫・接触感染からヒトへ移る感染症。
こんにちは、翼祈(たすき)です。
オウム病とは、呼ばれる細菌とウイルスの中間の生物学的性質を持つ微生物の一種であるオウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)に感染することで発症する呼吸器疾患で、オウム・インコ類の疾病として1893年に初めて発見され、世界中で発症している感染症です。
日本では2001年以降、相次いで動物展示施設で集団でのオウム病の発生事例が複数例報告されていますが、鳥を飼育していない福祉施設での集団発生も報告されています。
現在、日本では推定およそ300万世帯がトリを飼育しているとされています。
病原体のオウム病クラミジアは、鳥類やヒト・猫・犬などの哺乳類、さらにカエルなどの両生類まで広く感染し、多様な疾病を引き起こす、潜伏期間は1~2週間の人獣共通感染症です。
ペットとして飼育している鳥類から感染し、家族内で複数人がオウム病に感染した事例の報告もあります。
オウム病の病原体が、オウムから初めて分離されたことでオウム病と名付けられましたが、ガチョウ、ニワトリ、アヒル、ツル、シチメンチョウ、キツツキ、インコ、ハトなどオウム以外の家禽類、愛玩鳥、野鳥に関してもオウム病クラミジアに感染したトリが確認されています。
ほとんどの患者さんの初発症状として、ほぼ必発で、38度を超える突発性の発熱、頭痛、全身倦怠感、悪寒などのインフルエンザ様の症状で発症します。病気の種類に関係なく、一般的に高熱が出ると脈拍も上がることが多いですが、しばしば肝機能障害が出現することや、オウム病では発熱しても脈拍がそんなに上がらない「比較的徐脈」が見受けられることが特徴です。
また咳も必発で当初は乾性でやがてたんを伴うという経過を辿ります。「肺炎型」では血痰(けったん)や咳を伴ったり、「全身型」のオウム病の重症例では意識障害を生じたりすることもあります。
感染源としてトリとの接触歴は重要で、オウム病は通常トリの感染症で、保菌していても一見健常に見えます。弱った時やヒナを育てる期間にオウム病クラミジアを排菌しやすく、セキセイインコなど国内生産されるトリにおける汚染が見受けられ、また、自然界に棲むトリにも蔓延しています。
ドバトのオウム病クラミジアの保菌率は20%程度と推定され、ヒトへの感染源となります。
日本では、オウム病の感染源の60%がオウム・インコ類で、その中のおよそ3分の1はセキセイインコとの調査データがあります。
主にヒトへは鳥類から感染し、肺炎や気管支炎などの呼吸器疾患が主で、極めてまれに亡くなる場合もあります。
オウム病は、4類感染症(全数把握)の届け出伝染病となりますが、特殊な検査が必要なことから、実際にはかなりの症例が確定診断をされずに、異型肺炎や風邪症候群だと診断されていると考えられます。
今回はオウム病の症状、合併症、感染経路、予防策について多角的に取り上げます。
▽症状
◉ヒトの場合
軽症:激しい咳(たんが混じることも混じらないこともある)、熱、頭痛、食欲不振、全身倦怠感、関節痛、筋肉痛など。
中等症:下気道感染が出現し、異型肺炎の症状も生じます。身体内への酸素の取り込みが十分でなくなり、粘膜や皮膚が青紫色になる状態のチアノーゼが出現する場材もあります。
重症例:全身症状を伴った異型肺炎で、全身臓器に病変が認められる様になります。特に、脾臓や肝臓、心臓が炎症を引き起こし、さらに、意識障害や脳神経に異常をきたして亡くなることもあります。
大人が発症することが多く、小さい子どものオウム病の感染は少ないとされています。
◉トリの場合
①おしゃべり、さえずり、水浴びが少なくなるか、全くしなくなる。
②飛翔が低下し、活動性が落ちる。
③水や餌の摂取量が減って少なくなる。
④脚と翼の麻痺と振せんが認められる。
⑤元気、食欲消失で痩せていく。
⑥羽毛を逆立て、口、肛門、眼孔の周りが浸出物で汚れる。
⑦糞便が白色水様便・血便・緑白色便になる。
⑧不顕性感染といった、無症状の場合も。
⑨体温低下・結膜炎・呼吸困難・鼻炎・脾臓の腫れ・肝機能障害 など
トリはオウム病クラミジアに感染しても、極めて軽症で回復するか、あるいは全く症状が出ない不顕性感染で終わることが多いです。ですが、回復したトリや不顕性感染のトリは長期間、または断続的に糞便中にオウム病クラミジアを排泄し、ヒトへの感染源となる場合があるので注意が必要となります。
▽合併症
オウム病クラミジアは気管支から身体内に吸入されると、細胞内で増殖し、血流に乗って全身に拡大します。風邪程度の上気道炎症状しか出現しない軽症例から、呼吸困難や咳を伴う「肺炎型」や、全身の臓器に拡大して色んな症状が出現する「全身型」まで、臨床症状はとても多彩です。
肺炎の中でオウム病が占める割合は高い水準ではありませんが、原因菌不明の重症肺炎ではオウム病発症の可能性があると考える必要もあります。
「全身型」では髄膜炎や呼吸窮迫症候群、ショック、心膜炎、脳炎、心筋炎といった多臓器不全が出現し、非常に重症化することがあることも認知されています。
この状態に陥ると、透析や人工呼吸器などを用いた集学的な治療が必要になることがほとんどです。
▽感染経路
・汚染された給餌器や水・飼料や鼻汁などに触った後に手を洗わずに飲食した場合や口移しでエサを与えることでの接触感染
・オウム、インコ、ハト等の乾燥した糞便が、羽毛やほこりなどと一緒に空気中に舞い上がり、含まれる菌を吸い込んだ場合での経口・飛沫感染
一般的に、ヒトからヒトへの感染はほとんどありません。
また、非常に珍しい事例では、オウム病に感染したシカの出産を助けた動物園の職員が、シカの胎盤や羊水の飛沫が気道に入りオウム病に感染したという、鳥類以外からの感染事例も報告されました。
▽診断基準
病原体、抗体測定、病原体の遺伝子検出で診断します。オウム病を発症する前に鳥との接触があったかどうかが診断を行う上で参考事例になります。
オウム病は、たんや血液などを用いて病原体であるオウム病クラミジアを特定することで診断をします。ですが、このオウム病クラミジアを検出するには細胞培養と呼ばれる特殊な検査が必要で、一般的な病院では行うことは不可能です。
そのことで、オウム病の診断は、咽頭やたん拭い液を用いてオウム病クラミジアに特徴的な遺伝子をPCR法という検査で検出したり、感染したことで上昇するオウム病クラミジアへの抗体を血液検査で検索したりすることが一般的な診断方法です。
インフルエンザとの鑑別が重要で、鳥類との接触がある患者で肺炎と高熱を認めた時には、まずオウム病を疑う必要があります。
▽治療法
オウム病の感染者への第1選択薬は、マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン、クラリスロマイシン等)、またはテトラサイクリン系抗菌薬(ドキシサイクリン、ミノサイクリン等)です。
ニューキノロン系抗生物質(シプロフロキサシン、オフロキサシン等)も有効ですが、一般的に感染した場合によく使われるセファム系抗生物質(ゲンタマイシン等)は効果はありません。
オウム病は、早期診断と早期治療で完治可能な病気です。
▽予防策
鳥用及びヒト用のワクチンは開発されていません。オウム病を予防するためのワクチンがないので、感染している鳥類への接触には注意を払って下さい。
・鳥を飼う時は、ケージ内の糞や羽をこまめに掃除しましょう。
・鳥との接触を避け、むやみに素手で触らない、食卓の近くにゲージを置かないこと。特に妊婦はオウム病の感染に注意しておきましょう。
・健康な鳥でもオウム病クラミジアを保菌している場合があるので、体調を崩すと唾液や糞便中にオウム病クラミジアを排出し感染源となることがあるので、鳥の健康管理に注意しましょう。
・糞尿は素早く処理しましょう。糞便が乾燥すると空気中に漂い、吸い込みやすくなります。ゲージは速やかに掃除をして清潔さを維持しましょう。
・鳥の世話をした後は、うがい、手洗いをしましょう。
・口移しでエサを与えたり、箸やスプーンの共用は止めるといった、節度ある接し方をしましょう。
・ペットも定期検診で病気の早期発見をしましょう!鳥の具合が悪い時には、動物病院を受診しましょう。糞便検査でオウム病の診断をすることが可能です。健康管理に注意しオウム病の早期発見をしましょう。
▽飼い主への注意点
飼育環境の清潔さを保ち、糞便の手早く処理をすることが重要な行動です。その上で、人獣共通感染症を防ぐためには、飼い主は鳥に触れた後には消毒を行うといった、衛生面での注意が必要となります。
トリを飼いたい時には下記のポイントに注意します。↓
(1)口移しの給餌をしない、過度な接触、糞便の後始末に注意をすること
(2)トリにストレスをかけない様な飼育方法をすること
(3)トリが衰弱している時には早めに動物病院を受診すること
(4)テトラサイクリン系薬入りのエサを与えると、オウム病の予防効果が期待できます
(5)へい死したトリの扱い、ゲージの消毒などには注意が必要です
参考サイト
オウム病 Psittacosis 東京都感染症情報センター(2022年)
私と鳥
私が小さい頃にニワトリを飼育している養鶏場の方の家に行って、卵を貰って来たことがありました。
小学校の頃、学校でニワトリやシチメンチョウを飼っていて、シチメンチョウが怒って、襲って来たことがありました。シチメンチョウ、足が速いんです、結構。
今は居ませんが、近所の方がニワトリを何十羽飼育していて、朝方になるとしきりに鳴いていましたし、ちょうど鳥インフルエンザが騒がれ出した頃だったので、近所に住んでいて、鳥インフルエンザが出るのではないか?と、ずっと心配でした。
今は付き合いはありませんが、10年前知り合いだった人が、「家でインコを飼っていて、可愛いんだよ」とか言っていました。
こうやってまとめてみると、やはり感染症なので、重篤な症状も多かったです。この記事が鳥を飼育している方の参考になればと思い、執筆させて頂きました。