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試行錯誤の青春展 新居浜でがんばる未来のエンジニアたち

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2024年11月16日(土)から2025年2月2日(日)を会期として、あかがねミュージアム1F「新居浜ギャラリー」で実施予定の企画展の内容を紹介します。 工業都市・新居浜で「モノ…
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#ロボット

紹介する各種「プロジェクト」の概要

 「試行錯誤の青春展」では、当館の立地する愛媛県新居浜市内で、モノづくりに青春を燃やす学生にスポットを当てています。とりわけ今回は、市内に立地する唯一の高等教育機関である新居浜工業高等専門学校(新居浜高専)で「高専ロボコン」「鳥人間コンテスト」「Hondaエコマイレッジチャレンジ(エコラン)」「超小型衛星【KOSEN】プロジェクト」に取り組む学生さんたちの「青春」を取り上げました。  ここでは、それぞれのプロジェクトの概要を簡単に紹介します。 高専ロボコン  高専ロボコ

「悔しいのは、頑張りたいという意思に変わりましたね。」 -同級生と見据える、僕らの未来。

前編から続きます。  こう語るのは、ロボコンBチームでリーダーを務めた2年生・山本陽永さん。小学校から「ロボット開発技術者になりたい」という夢をもつ彼は「まずは学校に慣れてから、ロボコンに専念したい」と、1年生の最後の頃に入部した経歴を持ちます。そんな彼がリーダーを務め、2年生と1年生が中心のチームで作った自チームのロボット「ポップコーン」は、十分に機能を発揮できず敗退。その悔しさが「来年」への意思に変わった、と言います。  一人のロボット開発者として、またチームリーダー

なげやりくん奮闘記② -「これで僕のロボコン人生終わるんだ、と思って見てますから。」

その①の続きです。  大会直前でのロボット作り直しや、当日の計測でのサイズオーバーなど、数々の困難を乗り越えて試合当日を迎えたAチームの面々。部長の末永さん、箱回収ロボットの菊池さん、発射ロボット操作の高市さん。そして、ピットに控える5年生の守屋さん。  予選ブロックは3校総当たり。1試合は2分半。それは、メンバーによって「長い」とも「短い」とも感じられる、緊張の2分半でした。  と振り返るのは、部長の末永さん。ピッチングマシンのようにボールを発射するロボットと、そこにボ

「なげやりくん」奮闘記① ー「まずい、僕のアイデアが全部ポシャった。」

曰く、「ロボ研」の部室はパラダイスなんだそう。  こう語るのは、「高専ロボコン四国地区大会」では「Aチーム」の一員としてロボットのコントローラーを握った、新居浜高専3年生の末永好一(よいち)さん。部員からは「好一さん」と親しみを込めて呼ばれ、笑顔も絶えない頼れるロボ研の部長です。  「Aチーム」の、ボールを回収するロボットの設計・製作に加え、チームのロボット名「なげやりくん」の名付け親である彼は、「なげやりくん」命名の経緯をこう話します。  他の部員や顧問の先生の受け止め

「3Dプリンタの音が心地いいんだ、とか意味の分からないことを言いながら、寝てますね。」 -「ロボ研」を見守る教員たち

 新居浜高専から毎年「高専ロボコン」に出場している「ロボット研究部」には、3名の顧問教員がいます。  中でも、学生との接点が一番多いのが、電子制御工学科の松友真哉准教授。2005年の新居浜高専着任以来、高専ロボコンとの付き合いはまもなく20年となります。  顧問教員として積極的にロボット製作を指導・助言をすべきか。学生の自主性に任せるべきか。「今でも分かんない」と語る松友先生は悩みながらも、最近は後者の「見守り」スタンスを取ることが多いようです。  他のところで紹介した通

バカなことを真面目に、技術的にやっちゃうというのがおもしろいんでしょうね。 -顧問教員が語る、「高専ロボコン」の真髄。

 『高専ロボコン2024ルールブック』巻頭言の、結びの一文です。  「見る人をあっと言わせるアイデア」。単なる得点競争の競技会ではなく、アイデアを競う大会として長く運営されてきた「高専ロボコン」の魅力を、端的に表しているのではないでしょうか。  「高専ロボコン」は、アイデア勝負である。このことは、実際の出場者である新居浜高専の面々にも、強く意識されています。  このように語るのは、2005年の新居浜高専着任以来、ロボット研究部の顧問を務める電子制御工学科の松友真哉准教授。

「寝るのは、明日できますから。」  ドキュメント120分 2024年9月27日(金)、新居浜高専体育館。

 9月29日の「ロボコン2024四国地区大会」を直前に控えた9月27日(金)。新居浜高専敷地内の体育館では、19時から21時の予定で、四国地区大会に向けた最後の練習が行われていた。 19時少し前  19時少し前に高専に到着すると、辺りはもう真っ暗。グラウンドで練習をしていたと思しき運動部の学生たちが、「何時の電車に乗るか」という話をしながら、足早に帰路についている。機械工学科棟の前には「高専ロボコン2024四国地区大会」と開催日を同じくする「海上自転車競走」出場を控える鳥

ロボコン部員たちの青春④ 仲間と、灰のように燃え尽きて。 ―後輩に託す全国への夢

その③の続きです。  5年間の「ロボ研」での活動を、充実感を湛えて語る、専攻科1年の脇さんと、5年生の守屋さん、沖野さん。2023年は準優勝ながら全国への切符を逃した雪辱を期して、一緒に典型的な‘ゲン担ぎ’をした3人です。  こんなやり取りに象徴されるような、「賑やかなロボ研」の雰囲気を作った張本人とも言える3人の‘全国’への夢はしかし、達成されることはありませんでした。  四国大会から2週間ほど経って行ったインタビューに、「ロボ研」のロゴの入った作業着を着て現れた沖野さ

ロボコン部員たちの青春③ 「僕は本番まで、勝てると思ってた。」ー高専ロボコン四国地区大会の話

その②の続きです。 と話すのは、Aチームの設計を主導した、脇さん。 と話すのは、Aチーム、Bチーム双方のロボット制御プログラム作成を主導した、守屋さん。  今年の「ロボ研」を主導した彼らの感触では、「今年は、全国に行けるかもしれない。」という予感がありました。  雲行きが怪しくなってきたのは、本番前日の9月28日。出場ロボットと出場メンバーが、四国地区大会の会場である香川高専高松キャンパスに到着した後のことでした。  本番前日の、想定外のサイズオーバー。しかしこれは、

ロボコン部員たちの青春② 「やばいな、と思いましたね。ほんとにヤバイな、と。」 ー2024年の高専ロボコン 難しかった「ロボたちの帰還」

その①の続きです。  「高専ロボコン」は、毎年4月中旬に大会の課題が発表され、ロボット開発が本格的にスタートします。2024年のルール発表は4月17日。発表された課題は、例年になく難しいものでした。  「高専ロボコン」の2024年大会の課題についてこのように印象を語るのは、顧問である松友先生。  今年の大会テーマは、惑星のかけらを地球に持ち帰ることに成功した小惑星探査機「はやぶさ2」などを意識した「ロボたちの帰還」。  具体的なルールは、ロボットを目標地点に飛ばすための【

ロボコン部員たちの青春① コロナ禍を乗り越えて、ふたたび動き出した「ロボットエンジニア」たち

 新居浜高専の「ロボット研究部」に入部した当時と現在を比べてこのような印象を語るのは、今年の「ロボ研」を主導する3名。  1人目は、今年開催された「高専ロボコン2024」で、主に上級生が主導する形となった「Aチーム」のロボットの設計を担当した、専攻科1年の脇麟太朗さん。専攻科生ということで大会には出場できませんが、快活な雰囲気でチームをまとめるブレーンです。  2人目は、同じく「Aチーム」で、ロボットの部品などの配線や結線をリードした、電気情報工学科5年生・沖野千畝さん。落ち

はじめに ー「試行錯誤の青春展」について

 2003年に公開された映画『ロボコン』の一幕です。    「高専ロボコン」に奮闘する学生たちの姿を描いた映画の佳境、全国大会の前夜。  重量オーバーとなった自チームのロボットの軽量化にチーム全員で深夜まで取り組んだのち、長澤まさみさん演じる主人公が、伊藤淳史さん、小栗旬さんらが演じるチームメイトと一緒に、顧問教員の用意したラーメンをすするシーンです。  「ずっと今日が続けばいいのに。」と感傷に浸る主人公に、ニヒルな天才設計士という役柄の小栗旬さんが「1回戦で負けたら、明日の