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ロボコン部員たちの青春③ 「僕は本番まで、勝てると思ってた。」ー高専ロボコン四国地区大会の話

その②の続きです。


 僕は、8月頭には「これは!」と思ったかな。
 僕は飛ばすところの設計だったんで、どれくらいのパワーで飛ばすか、とかを計算して、計算通りに機体を組んで、ペットボトルで重さを再現したのを飛ばした時に、ほんとに計算値通り飛んでくれて。「ああ、これは100点とれるわ」と思って。

と話すのは、Aチームの設計を主導した、脇さん。

 僕は9月頭くらいには、「これはいけるな」と思った。
 僕はその
(脇さんたちが飛ばす試験をする)過程は見てないので、だんだん全容が見え出した頃。後輩の方も飛ばせてる様子で、その時点で「これは今年は!」と思いましたね。それが9月の頭くらい。というか僕は本番まで、勝てると思ってた。

と話すのは、Aチーム、Bチーム双方のロボット制御プログラム作成を主導した、守屋さん。

 今年の「ロボ研」を主導した彼らの感触では、「今年は、全国に行けるかもしれない。」という予感がありました。
 雲行きが怪しくなってきたのは、本番前日の9月28日。出場ロボットと出場メンバーが、四国地区大会の会場である香川高専高松キャンパスに到着した後のことでした。

 現地に行って、計測をしたんですよ。そうしたら、サイズオーバーしてるんですよ。サイズオーバーしてたら、大会にそもそも出れないんですよ。
だから、間に合うかギリギリのタイミングで急いで加工して、機体を小さくして、というのがあったので。その辺りで急に雲行きが怪しくなってきた。かみなり雲どころじゃない感じになってきて。まじで終わったと思いました。出れんのじゃないん?という。
 結局、ちょっと棒を切るだけでよかったんですけど、その加工方法に気づく前に「ロボット本体の長さを変えないと!」というのをみんな思ったので。そんなことを現地でやると精度が出ないので、「ああ、終わった」と思ったんです。ちょっとの加工で済んだので助かりました。

 本番前日の、想定外のサイズオーバー。しかしこれは、現場の部員たちの機転で、最小限の加工で済んだ。しかし、「怪しい雲」が晴れたわけではありませんでした。

 開発期間中はどこも、基本的には情報を明かさないですね。僕らも情報漏洩には気を付けて、「お前ら、絶対に言うなよ!」と箝口令を敷いてるので。でも、毎年X(旧Twitter)で「高度な情報戦」っていうハッシュタグでいろいろポストが上がってるんです。それが今年は上がってなかったので、「ああ、今年はどこもやばいんだな」という勝手な想像をしてたんです。けど、ふたを開けたら、前日練習を見たらみんな動いてて。結局やばいのはうちだけっていう。
 僕らの中ではまあまあの出来栄えで出来てたので、「これは今年は!」と思ってたんですけど、会場で他の高専見てみたら、僕らなんか全然で。しかもサイズオーバーとかもあって、まあ、それを含めて終わったな、と。高松や詫間
(香川高専高松キャンパスと詫間キャンパス)が例年すごいのは知ってるんですけど、想像を超えてくるという。毎年あんな感じで、ボコボコにされるんです。

 「高専ロボコン」では大会前日に、ロボットのすべての機能を披露する「テストラン」が行われます。その場で、想像を超えてくる完成度を見せつけてくる、強豪ライバル校。「ロボットを飛ばし、帰還させる」という課題の難易度やSNSの投稿状況から感じていた「今年はどこもやばい」という想像は、この時点で覆されてしまいます。
 そして、本番当日。宿泊先のホテルで微調整を行ったパーツが取り付けられ、「本番に出場するロボットが最終形になった」という、本番当日の公式練習。ロボットが、チームの熱意に応えます。

 練習で、着地で100点出して。しかも、箱も返って、ボールも返って、というのを見たので。それ見て、「めっちゃポテンシャルあるじゃん!」とは思いました。「これは来たー!」と思って。他の高専のロボット見て、あんまり動いてなかったので。
 準優勝した去年は、10%くらいは勝てるぞ、という気持ちがあったんですけど、今年は、6割くらいは勝てるかな、と。まあ、高松(香川高専高松キャンパス)には無理だけど、推薦枠でいける確率は6割くらいはあると思って。

 2023年から、優勝校の他に2チームが「審査員推薦」という形で全国大会への切符を手にすることになった四国地区大会。1つの高専からは2チームが出場しますが、どんな成績であっても、全国大会に進めるのは「1つの高専(キャンパス)から1チームだけ」という慣例がありました。
 出場する2チームの両方が、大会本番でも突出したパフォーマンスを見せた「香川高専高松キャンパス」は別格として、残り2枠。

 あのとき100点出してたら詫間(香川高専詫間キャンパス)に勝ってたし、なんなら決勝リーグ行けてたし。だから、ポテンシャルはあったんですよ。でも結局、40点と10点だったら、行けないよ。

 予選リーグでは、【Aチーム】は1勝1敗。【Bチーム】は1点も取れず、0勝2敗。全国大会への切符は、優勝の香川高専高松キャンパスと、決勝トーナメントに進出していた香川高専詫間キャンパス、そして予選リーグ敗退ながら一定の得点能力とデザインのコンセプトが評価された阿南高専が獲得。
 「ポテンシャルあるじゃん!」という期待は、「ポテンシャルはあったんですよ。」という落胆に変わり、新居浜高専ロボット研究部の「高専ロボコン2024」は、幕を閉じました。


その④に続きます。

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