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バカなことを真面目に、技術的にやっちゃうというのがおもしろいんでしょうね。 -顧問教員が語る、「高専ロボコン」の真髄。

想像をはるかに超えるロボットが登場し、見る人をあっと言わせるアイデアを披露してくれることを、今年も期待しています!

 『高専ロボコン2024ルールブック』巻頭言の、結びの一文です。
 「見る人をあっと言わせるアイデア」。単なる得点競争の競技会ではなく、アイデアを競う大会として長く運営されてきた「高専ロボコン」の魅力を、端的に表しているのではないでしょうか。
 「高専ロボコン」は、アイデア勝負である。このことは、実際の出場者である新居浜高専の面々にも、強く意識されています。

 アイデアと得点力、どっちに走るか、ということでいうと、新居浜は伝統的に、アイデアに走るのはあると思います。勝ち負けではなくて、おもしろさとかアイデアに走る傾向は伝統的にあると思いますね。
 だから、勝つためには最適ではないかもしれないけど、おもしろいよね、というところですよね。

 このように語るのは、2005年の新居浜高専着任以来、ロボット研究部の顧問を務める電子制御工学科の松友真哉准教授。
 「勝つためには最適ではないかもしれないけど、おもしろい」ことをしたい。しかし、最近まで全国大会への進出枠が「優勝校が1・審査員推薦が1・合計2」だった四国地区大会では、そのように得点力ではなくアイデアで勝負するのは、「全国大会」が遠のくかもしれない選択でした。

 他の学校との方向性の違いはありますね、やっぱり。これは地域性もあるんですけど、四国地区は詫間(現・香川高専詫間キャンパス)がずっと強くて。詫間さんは「勝つ」ロボットを作って来るので、たぶん考えとしては「四国大会優勝を経て全国に行くロボットを作ろう」というのが強いので。
 四国地区から全国に行けるのは長らく2チームで、だから面白いことやってもいけるかどうかは分からない。だから四国はガチでやってるというか。得点で言えば、レベルは全国的には高いところをいってるんじゃないかと思いますね。遊び心じゃない、全国行くには勝つしかない、というね。そういうところはありますね。
 それが去年(2023年)から3つになって、次の時代になるのかな、と。「面白いことやるのもアリだな」となるのかな、と思いますね。優勝チームは絶対で、あとの2つは審査員の推薦なので。四国も色合いが変わって来るかもしれないですね。遊び心が出てくるというか。推薦狙いで、会場盛り上げて「バカだよねえ」というのが生まれる余地がね、できたんじゃないかと。

 「アイデア勝負」にも舵を切りやすくなった、四国地区大会から全国大会への進出枠の増加。しかしその全国大会には、「アイデア勝負か、得点力勝負か」という二分法では測りかねない、ツワモノが揃っているようです。

 とくに全国大会なんかは、驚きがありますよ。いつの年も。他を見ててもおもしろいな、と。
 たとえば箱積みの競技。普通に考えると、1つ積んで、その上に2つ目を積んで、という感じですよね。四国地区大会もみんなそんな感じだったんですけど、全国に行くと、積んでるやつを持ち上げて、その下に箱を入れる。それを延々繰り返すから、どこまでも高く積める。ああ、このアイデアは四国では見たことなかったな、と。
 かつ、全国大会では、積んだ箱の前に「来たぞ国技館」みたいなのを立てるところがあって。楽しませるのも相当長けてるな、というね。地方大会では「行くぞ国技館」なんですよ。全国大会で「来たぞ国技館」。それは、得点には関係ないじゃないですか。そういうところが「おもしろいな、勝負だけじゃないな」とね。
 そこまで行くと、ロボコンの本質というか、よくそんな馬鹿なアイデア、本気で作ろうと思ったね、というかね。そういうのがおもしろいですよね。

 独創的なアイデアがある。しかもそれが、勝利に直結する確かな得点力を備えている。なのに、得点には関係ないエンタメ要素も盛り込んでいる。全国大会に進出するような強豪チームがこのように、「アイデアか、得点力か」ではなく「アイデアも、得点力も」というロボットを仕上げてくるのは、「高専」ロボコンならではだと言います。

 やっぱり、一番‘競技’に走ってないと思うんですよ。
 ルールを見ても、競技として考えてみると「穴」がある。ざっくりしたテーマを出してくるので、そこから「おもしろいものを作ればいいんでしょ」というね。だから、もしかしたら「勝ち負けにこだわってるのは卑しい」みたいな文化もあるかもしれないですね。面白いモノ作ってこいよ、チャレンジしろよ、というね。技術的にも、「なんでそこで、そんな難しい技術使うの?余計めんどくさいだろ」と思うようなことも、たぶん学生たちはやりたくなったら、チャレンジするでしょうし。

 高校ロボコンや大学ロボコンなど、学校種別に応じてそれぞれ開催されている「ロボコン」競技会。それらの競技会と比較して、‘一番、競技に走ってない’と感じられている「高専ロボコン」。その魅力を、松友先生はこのようにまとめます。

 バカなことを真面目に、技術的にやっちゃうというのがおもしろいんでしょうね。そこが他のロボコンとも、はたまた産業用ロボットと違うおもしろさですかね。工場のロボットは効率がすべてなので。そうじゃなくて無駄なプロセス、人を楽しませる部分、というところを入れて。
 高専ロボコンは競技なんだけど、一見バカなことを技術的に一生懸命作る面白さ、なんでしょうね。

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