【わかりやすく解説】DX時代の新たな営業アプローチ「バイヤーイネーブルメント」。現代のセールス活動に求められるワケとは。
はじめまして、法人営業支援SaaS「GRiX」を開発している株式会社AimyTechの青木です。今回の記事を皮切りに、弊社が推進している「バイヤーイネーブルメント」をはじめとした法人営業に役立つテーマに関して、幅広く、情報を発信していきます。第一弾は、あらためて「バイヤーイネーブルメントとは何なのか」について、概念が誕生した課題背景も含めてあらためて解説します。弊社の支援先の実践例も紹介しておりますので、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです!
現代のセールス活動に求められる「バイヤーイネーブルメント」とは?
バイヤーイネーブルメントの概要
「バイヤーイネーブルメント」とは、購買担当者が製品やサービスを購入する際の意思決定プロセスを支援するための戦略やツールを指す概念です。重要なのは、従来の営業手法が売り手主体であったのに対し、バイヤーイネーブルメントという概念のもとでは顧客主体のアプローチが求められる点にあります。顧客を「主役」として、自ら情報を収集し、比較検討を行い、最終的に購入を決定する過程をスムーズに進められるように、営業担当者は「購買までの案内人」になることが求められているのです。
現代の購買担当者は、インターネットを利用して膨大な情報を入手し、自分自身で製品やサービスの比較を行います。これにより、担当者は自らのペースで意思決定を進めることができますが、同時に情報過多によって購買プロセスが複雑化してしまい混乱も生じやすくなっています。ここでバイヤーイネーブルメントが重要な役割を果たすというわけです。
製品を販売する企業は、顧客が必要とする情報をタイムリーに提供し、購買プロセス全体を支援することで、顧客満足度を高め、成約率を向上させることができます。実際、バイヤーイネーブルメントの考えを営業活動に取り入れることで、成約率が3倍以上となったケースもあるようです。また、購買プロセスを推し進めるためにも、顧客がどういう購買ステータスにあるのか、どういった問題を抱えて意思決定が停滞しているのかを把握することも「バイヤーイネーブルメント」の重要な要素となります。
データで見るバイヤーイネーブルメントの重要性
バイヤーイネーブルメントという考え方は、海外のIT業界を中心にトレンドとなっており、データからも効果が実証されつつあります。Forrester Researchの調査によれば、B2Bバイヤーの74%が自分で問題を特定し、解決策を検討し、最終的に製品やサービスを購入するというプロセスを重視しています。また、Gartnerによれば、バイヤーイネーブルメントを導入した企業の営業担当者が、導入前に比べて約4割程度も効率的に営業活動を行えるようになったと報告されています。
さらに、HubSpotのデータによると、パーソナライズドコンテンツを提供する企業は、そうでない企業に比べて顧客エンゲージメントが20%以上向上していることが分かっています。このように、データドリブンなアプローチが、バイヤーイネーブルメントの成功に不可欠であることが示されています。つまり、これまで以上に能動的に製品の情報収集や比較検討を行っている顧客の購買活動を理解すること、そして最適なタイミングで意思決定に必要な情報を提供したりタッチポイントを設けることが「効率的に営業成果を出す」ために大切になっているのです。
「バイヤーイネーブルメント」誕生の背景
購買プロセスの複雑化による離脱リスクの上昇
では、なぜバイヤーイネーブルメントが必要になってきたのでしょうか。弊社としては、「購買プロセスの複雑化」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)の普及」がバイヤーイネーブルメントが台頭してきた大きな要因だと考えています。
第一に、製品の多様化とインターネットの浸透によって、購買プロセスが非常に複雑化していることが挙げられます。現代の購買担当者は、非常に多くの選択肢に囲まれています。また、インターネットの普及により、製品情報を簡単に入手できるようになった一方で、膨大な情報を整理し、適切な選択肢を導き出すことが困難になっています。このような情報過多の状態は、顧客の製品導入に係る負担を重くし、結果として購買プロセスからの離脱を招いてしまいます。
さらに、営業経験がある読者ならご理解頂けると思いますが、基本的に購買の意思決定は担当者1人ですることはありません。窓口となる担当者に加え、決済権限を持つ上長を含めた「組織」で購買しているという事実が、購買プロセスの複雑性に拍車をかけます。Gartnerによると、一般的な購買部門は6〜10人で構成されており、各自でリサーチを行うのと並行して、それらの情報を共有・稟議にかけたうえで意思決定する必要があるようです。このように、購買活動にかかっている膨大な工数を削減し、購買ファネルからの離脱を最小限におさえるためにも、バイヤーを丁寧に「ナビゲート」する必要がでてきたというわけです。
DXの普及による顧客状況の可視化
また、営業する側の観点で捉えれば、「DXの波」がバイヤーイネーブルメントを実現するハードルを下げたとも言えます。DXの進展により、デジタル上における企業と顧客との接点が増加しています。オンラインのチャネルを通じて、企業は顧客の行動データを収集し、リアルタイムで分析することが可能になりました。こうした環境の変化は、営業担当者は、顧客の購買意欲や検討状況をより正確に把握し、適切なタイミングで情報を提供することができるようになったことを意味します。
「バイヤーイネーブルメント」の実践と事例
データドリブンなアプローチ
では、実際にバイヤーイネーブルメントを読者の組織で実践するにはどうすればよいのでしょうか。まず、「顧客が購買ファネルのどの位置にいるのか」を正確にトラッキングするためにも、顧客の状況に関するデータ収集と分析が不可欠です。購買までの道のりにおいて、担当者がどこにいて、どのような理由で迷子になっているのかさえ把握することができれば、営業担当者がとるべきアクションは明確になります。
具体的には、ウェブサイトのアクセスデータ、メールや資料の開封状況、商談の履歴などを活用し、顧客の興味関心をリアルタイムで把握します。これにより、顧客が求める情報を「まさに今、その情報が欲しかった」といったベストなタイミングで提供し、購買活動を強力に推進することに繋がるでしょう。顧客の行動データを把握することで、パーソナライズドコンテンツの提供が可能となります。これにより、顧客のエンゲージメントを高め、成約率の向上を図ることができます。
成功事例から学ぶデータ活用の重要性
最後に、実際のケースをもとにバイヤーイネーブルメントの解像度を高めたいと思います。弊社が支援したSaaSプロダクトを展開するF社は、VCからの資金調達後に営業人員を大幅に拡充したにもかかわらず、思うように売上高が伸びていませんでした。そこで、バイヤーイネーブルメントを営業活動に取り入れるため、以下の3つのアクションを実施しました。
・システムを活用した顧客状況のトラッキング:弊社が提供する「GRiX」を導入することで、「提案資料の不明点」や「社内における資料の展開状況」などを把握できるように。商談後に購買担当者が置かれている状況を解像度高く把握することが可能になりました。
・カスタマージャーニーの細分化と各フェーズで提供するコンテンツの制作:顧客が現在置かれている状況から、次のフェーズに移行したり意思決定することを促すための資料を充実化しました。例えば、類似ソリューションの相場や機能の違いを知りたいと考えている顧客に対して「比較表」を作成したり、導入後のイメージが掴めていない上長向けに「導入事例」を準備しました。
・営業メンバーのトレーニング:導入したシステムを用いて、顧客の課題や購買フェーズを可視化・管理するために、製品知識や課題ヒアリングの方法や営業フォローの仕方についてトレーニングを徹底しました。顧客の「課題やステータス」と「営業が取るべき打ち手」がセットになるように意識付けを行いました。
これらのアクションを実践することで、F社は成約率を2倍に向上させることに成功しました。さらに、SaaS企業にとって最もクリティカルな数値である「解約率」を大幅に下げることにも繋げることができました。バイヤーイネーブルメントが顧客満足度の向上と営業効率の改善に大きな効果があることを示すケースだと考えています。
まとめ
バイヤーイネーブルメントは、購買活動が複雑化する現代のビジネスシーンにおいて、営業活動の効果を最大化するための重要な戦略です。デジタルツールによる顧客情報の取得や可視化、パーソナライズドコンテンツの提供、営業チームのトレーニングなど、多岐にわたる手法を駆使することで、「モノを売る営業」から「買うことを支援する営業」への転換が求められているのです。
弊社は、バイヤーイネーブルメントという考えを導入することで、既存の営業活動をアップデートすることが、企業の持続的な成長を支える事に繋がると信じています。
本稿では、バイヤーイネーブルメントの基本概念についての解説を目的としているため、具体的な実践方法については触れませんが、弊社は営業活動の生産性向上をテーマとした情報を積極的に発信してまいります。少しでも興味をお持ちいただいたら、是非当アカウントをフォロー頂ければ幸いです!