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海外での広告の掟”Representation”とは

社会意識が高まり、日本でも環境に配慮したり、今まで注目を浴びなかった属性の消費者や実態についてアプローチする広告が出てきています。今まで60案以上の海外の炎上広告を市民の声を聴いて作りなおしてきました。

イギリス広告業界、社会団体と協同した経験やイギリス大学院や論文で広告倫理について学んだ経験からの知見から、
DEI(多様性・公平性・包括性)の企業コミュニケーションでの掟ともいえる”Representation”について解説します。



日本で全く聞かない!Representation(レプレゼンテーション)とは何か

Representation=代表性・表象です。
「メディアのRepresentationが大切」「多様な人種を入れてインクルーシブな”Representation”にしよう」というような使われ方をします。

今までのメディアが芸能人や理想化された非現実的な美を見せてきた。
このせいで社会にステレオタイプやよくない社会通念が生まれてしまった。
だから、今後は、社会の実態を反映して、現実世界とメディアの表象を近しくする事が大切だ、というのが広告業界やメディア業界で言われています。

例:MeDi:メディア表現とダイバーシティを抜本的に検討する会 2018年


日本のRepresentationの現状は?

この、英国で合言葉のように頻繁に聞く「Representation」ですが、
日本ではまだまだなされていません。

日本のメディアにおける「リプレゼンテーション」は、実際の社会の多様性を十分に反映しておらず、特に女性や高年齢層の表象に偏りがあります。また、メディア組織内部の多様性も不足しており、これがコンテンツの偏りにつながっていると指摘されています。

例えば、日本では広告やテレビで、男性は広い年齢層の人が起用されるのに、女性は20代が圧倒的に多いです。
それは実社会で20代女性が多いわけではなく、
メディアに出るには若い女性がいい、というメディア制作側の固定観念が反映された結果です。

日英の対比事例:乳がん検診の広告

日本は若い美女や芸能人が広告で起用されがち。イギリスでは一般市民を映します。

引用:ピンクリボンの炎上広告 ハフポスト日本版編集部 2022年


2023年のデータから見る日本のリプレゼンテーション実態

テレビ番組全般の出演者の男女比
女性と男性の比率はおよそ4:6で、男性が多い。
この比率は日本の総人口における男女比と比べると大きな違いがある。
年代別の出演者の特徴
女性は20代をピークに年代が上がるほど数が少なくなる。
男性は30代で女性を上回り、40代が最も多い。
50代以降の男性も一定数おり、「中高年の男性と若い女性」という構図が見られる。
職業分野別の特徴
「アナウンサー・キャスター・リポーター」と「タレント・モデル」のみ女性が男性より多い。「アナウンサー・キャスター・リポーター」では、女性は20代、30代に集中し、40代以上は男性が多い。
社会の実態との比較
政治家、学識者、医師などの職業において、ニュース番組に登場する女性の割合は、実際の社会における女性の割合よりも低い。
参考:NHK

NHK https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/20240501_6.html


具体的な使用シーン


Representationには以下を対象として語られることが多いです。

  • 人種

  • 民族

  • 性別

  • 年齢

  • 障害の有無

また、Representationは、人種や年齢だけでなく、モノの表象でも使われるワードです。例えば、生理用品。

生理用品の広告:日英の対比

日本とイギリスの広告の違いを見て、どんなRepresentationの問題があげられるでしょうか

⓵理想化されている日本の生理用品の広告

キラキラで生理の実態が理想化されている広告

特徴としては、
・多様性のないRepresentation
 表現・ターゲット・シーンが固定されています

・実社会との乖離:美化されがち
 生理のつらい実態は映されない、衛生用品文脈の欠如

イギリスのリアルなRepresentationの生理用品広告

イギリスの広告は生理の実態を映す

日本の広告に比べて、イギリスの広告は
赤い血、多様な女性の体形を見せ、生理の実態を映していて、Representationが配慮されているといえます。

日本の広告でもたくさんの広告が「理想化」されていることが原因で、生理の実態の誤認を生むとの批判が集まり、広告が炎上する事例が多いです。

昨今はRepresentationが重視された改善に向かっています。

もっと知りたい方は生理用品広告の炎上分析記事や、女性製品のマーケ支援者の対談動画をご覧ください!

Representationはなぜ大切か

  1. 社会的影響力: メディアは教育として機能するので、適切なRepresentationは、社会の多様性への理解に寄与

  2. ビジネス利点: 多様な消費者層に訴求することで、ブランドの市場拡大につながる

  3. 自己肯定感の向上: 特に若者や少数派の人々にとって、自分に似た人物がメディアに登場することは社会の一員として認識されているという感覚を持てるので大切

Towards Changeプロジェクトの展覧会でのスピーカーセッションでも、広告におけるRepresentationの改善に焦点が当てられました。

Representationは、英国の広告&メディア業界では最もよく話されるトピックで、イギリスで私が行った炎上広告の作り直しプロジェクトの有識者コメンテーターを務めたマッキャンのクリエイティブダイレクターもその重要性を語っています。



消費者に受け入れられるRepresentationのために

事実にそぐわないメディアのRepresentationはステレオタイプの強化になってしまいます。

実態をメディアに反映するには、ターゲットや市民のリアルな声を聴くことが有効です。

間違ったRepresentationを含んだ炎上広告の分析や、市民の声を聴いて広告の改善案をつくってきた経験を活かし、企業向け支援を行っております。
もし自社広告、発信内容に不安がある方はお役に立てますので、ご連絡ください。


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