(完)大人にならないと決めた私が大人になった話


(続)報われなかった努力に救われた


ー 全部、良かった。と




25年かけて私は、逃げる事、自分を守る事、人を頼る事を覚えた。
簡単なようでとてつもなく難しい事。

黒田さんと茜さんとバイバイする覚悟も決めた。
周りの理想で出来上がったサトミも捨てた。


ずっと生きる事が怖かった。明日が来る事が怖かった。

だけど明日なんて来ない。明日なんてただの理想郷。時間はずっと止まらないから明日も明後日も幻。現実は今。今しかない。現実は死ぬまで続く。死んだらやっと幻になる。だからいいの、たとえ死にたがりでも。楽しくてもしんどくても。笑おうが泣こうが怒ろうが関係ないよどうせ全部幻になる。


何もかもハッピーエンドの伏線だから、劣等感なんて必要ない。コンプレックスも何にも無い。出来ない事も何ひとつ無い。楽しくない人生は要らない。世界は私の為にある。


後悔だけしなければいい。
どんな選択をしたとて、その選択を受け入れる勇気さえあれば。
こんなはずじゃなかったって思ったら負け。
そんな事言ったら私が必死に生にしがみ付いてきた25年間が無くなっちゃうから。
ただの死に損ないになっちゃうから。
お願いだから自由に生きて。
もうこれ以上、自分で自分の首絞める必要なんて無いんだよ。


人に生かされた命を私は殺そうとしたし、それを悪い事だとも思えず10年以上経ったけど、助けてくれる周りの人たちにはたくさんの感謝があります。
事故当時、心配蘇生をしてくれた先生たちには頭が上がりません。
あの時少しでも対応が遅れていたら、今私は生きていない。もしくは意識のないままただ心臓が動いているだけの肉体になっていたかもしれない。

どっちも素直な気持ちです。誰も悪くないです。
どうせ死ぬのに生きている私たちはとってもえらい。

生き返って現実を知った時の絶望感は今でも忘れられなくて、それ以来生きているのが怖くて明日が来るのが当たり前じゃないって知って、毎日怯えるくらいなら生き返らなきゃ良かったのに、って思ってた。
生き返りさえしなければ、絶望も悲しさも悔しさも知らなかったのに。
生まれてさえこなければ、こんな世界で生きる必要さえ無かったのに。

前を向く事が苦手だけど、下を向く事は嫌い。
横を見る事はもっと嫌い。
後ろを向けば葛藤に苛まれるし、上を向いたって涙は溢れる。
どこを向けば良いかわからないから現実を見るけど絶望ばかりで結局夢ばっか見ちゃう。

理想と夢が独り歩きして、置いていかれないように現実をおんぶして必死に走ってきた。
理想も夢も見れば見るほど現実に殺されるから。


なんにもうまくいかない、やろうと思えば何かに躓き、できたと思えば否定され。
押し潰されても、‘ 悔しい ’だけを原動力にして生きてきた。
地に足つけてるんじゃなくて、地にしか足をつけられないから、地に付けられる足があるから、そうでもしないと生きていけないだけで、結果なんて結果でしかないから。


正直まだ突発的な希死念慮は消えていない。
自傷の衝動に襲われる事もある。
過食衝動、拒食期も。
全部ぶち壊したくなる事だってある。

でも死ぬよりマシ。
本気で死のうとしていたあの頃よりはずっとマシ。

生きるからにはそれなりの覚悟持って生きてるつもり。


「あ、死に損なって良かったな。」
って思えるのが当たり前になるまで私は生きるよ。

繋げて星座できそうなくらい焼いた痕あるし、バーコードみたいな切った痕もあるけど、もう消えないからこれからも背負って生きていくよ。
私が生きようとした証だから。

睡眠障害、摂食障害、フラッシュバック、自傷癖、解離、希死念慮、全部吹っ飛ばして笑ってやるよこれからも。見てろ。


自己肯定感皆無だった私が、自分を愛したいと思えるようになったのは紛れもなく周りの人たちのおかげなんだよなあ。
私には大好きな人たちがいるから頑張れるんだよ生きていけるんだよ。
もしも11歳で命を落としていたら、死のうと思った時に命を絶っていたら、
楽しい事も嬉しい事も知らなかった。いろんな人に出会えなかった。
ライブハウスっていう最高な居場所も見つけられなかった。
幸せの不感症になるのが怖くて、ちょっとした嬉しい楽しい幸せが恐怖だったけど、おかげさまでポジティブな気持ちを素直に受け入れられるようになってきた。

みんな、ありがとう。本当にありがとう。

‘ 生きていて良かった ‘
の理由が人間である事、私の誇りです。

生きていて良かった、って先の未来でも思いたいから。
これからもどうぞよろしくね。







ー 今までの私へ





生きていてくれて、ありがとう。




ー これからの私へ





あなたはひとりです。
ひとりで生きて、ひとりで死んでいきます。
もう黒田さんも茜さんもいません。
ひとりで生きてください。


ひとりだけど、大切なもの、大切な人、ちゃんといます。
だから大丈夫。それを守ってください。
私の事を守ってください。
大切を大切だと言える今を、どうか守ってください。

大切を守る事。それが強さです。

生きる覚悟決めたんなら、その覚悟を守り抜いて。

私は一生、私と一緒だから。

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