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note限定小説集

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僕のnote限定小説集です。
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曇りのち布団

曇りのち布団

 明日は布団が空から降ってくるんだって!
その何気なく可笑しい一言が頭の中をよぎり我に返った。
「おい!玉木!授業中に寝るんじゃ〜ねぇ〜!
分かったな?!」こう僕に怒鳴ってきた先生の名前は華宮先生だ。華宮先生は授業中に寝たり、窓の外から景色を見て授業を聞いていないとすぐに怒ってくる。しかも他の学生よりも当たりが強い。
 夏がまだ始まって間もなく、蝉の鳴き声が窓から教室に響き渡る。そして僕の耳にまで

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愛慕

愛慕

自惚れていた。
叶いそうで叶わなかった恋。
叶うはずだったのにが正しいだろう。
そうやって小学生の時の恋愛の失敗を夜に
思い出しては涙するのが日課になっていた。
中学生にもなって未だに初恋の相手を忘れられずにいた自分がいたことにまだ気付けていなかった。ここで初恋の相手をSさんと仮定しよう。

 小学生五年生の始業式の時、僕は同じクラスのSさんを好きになった。Sさんは僕より少し背が高く、足が速くて、

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おかえり

おかえり

 そうやっていつも甘い言葉に騙されてきた。
きっと僕が君の元に真っ直ぐに帰ってきたとしても、君は「おかえり」の四文字を言ってはくれないだろう。もう一度、最後でもいい、嘘でもいい、心に込もっていなくてもいい。もう一度だけ僕に言ってくれないだろうか。

 そんな淡い期待をして家に帰る。でも玄関にはいるはずの君がいない。なぜなら僕は君と少し前に喧嘩をしてしまって、君が家を出て行ってしまったんだ。僕が浮気

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ぐるぐる回る

ぐるぐる回る

 ぐるぐると何回転しているか覚えていないくらい回っていた。回りながら今日の晩ご飯の事を考えていた。今日は部活がオフだった。なんせテスト週間だったから。高校生の部活のオフは最高だと思った。
「今日は餃子が食べたい気分だから〜餃子が食べたいな〜、」
回っているとなせだか頭が冴えて沢山考えられるんだよね〜と小学生の時に友達が言っていたのを思い出した。なぜ今それを思い出したのかは分からない。そして、僕は「

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自死への道

自死への道

四月十九日
 今日から二週間僕のある過程を日記として書き留めようと思う。
日々僕が思っている感情や言葉が飛び交う混沌とした日記になりそうだが、まぁそこは気にしなくてもいいだろう。

四月二十日
 最近暑いのか、寒いのかどちらか分からない。
はっきりしてほしいものだ。親がしつこく大学の勉強をしなさいと言ってくる。

四月二十一日
 何でもない日が続くと憂鬱な気分に襲われ、死にたくなる。まだ春のはずな

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肌黒ない?

肌黒ない?

 ある日電車に乗っていた時のこと。
ある駅で止まって、ベビーカーを引いた
夫婦が入ってきた。探せばどこにでもいる
ような夫婦かと思えば少し違った。

それは、ベビーカーに乗っていた子供のお肌が
少し黒かったのだ。いや少しどころではなかった
かもしれない。だからつい、「え?この子肌黒ない?」と思い、すぐに日本人ではなく日本とどこかの国のハーフなんだろうと予想がついた。
ちなみに母親の方は日本人であっ

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鈍く光る

鈍く光る

 古いデジカメのレンズの向こう側の景色は少し錆びていて、鈍く光っている。美しいと言えるのか分からない世界が広がっていた。自分でもなんと説明すればいいか分からない。どんな言葉を使って表現していいのかも分からない。でも"凄い"や"いい景色"と簡単に言いくるめられる世界とも言えない。朝、学校の登校をしていると、この景色を嫌と言う程見る。実際にはデジカメのレンズの向こう側の景色なんて見た事ない。

 この

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旅路

旅路

"可愛い子には旅をさせよ"
昔の言葉か、最近作られた言葉かは分からない。
僕は14日と15日友達と四人で一泊二日の下呂旅行に行った。下呂は思っていた以上に都会ではなく、人の手が届いていない自然が周り沢山広がっていて見ていると力が湧き上がる。愛知とは比較にならない程自然の力は素晴らしいのだなと思った。自然を見たり感じたりするのが昔から好きだった僕からしたら下呂旅行は本当に行きたかった所だ。

 一泊

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疲れる

疲れる

死のうと思った。
生きた心地がしない。
生き甲斐を失ってはいないが
本当の自分を見失っている気がする。
いまいち日常に溶け込めない。
自分の場所は最初からないのではないかと、
そう考える日があった。
もう疲れた、疲れ切った。
だから死のうと思った。

でもたまにはいいじゃないか。
生きるのに疲れる時だって誰にでもある。
それが今ってだけで永遠に続く訳ではない。
常に全力で前向きだから疲れる。
かと

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先輩

先輩

 僕は大学一年の六月から愛知にある居酒屋のアルバイトをしている。今も同じ所で働いていて僕には憧れであり好きだった先輩がいた。
僕の三つ上の四年生の人で大人の女性のような人だった。僕は年上の女性の方とお付き合いをしたいと思っていたから、ちょうど僕のタイプの人がバ先にいて嬉しかった。

 その人との出会いは七月か八月のシフトが被った時に一緒にホールをしている時に少し話したの
がきっかけだった。「◯◯族

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朋友

朋友

仲の良い友達がいる。
小学校、中学校が同じで、大学も一緒だから十三年間同じということになる。
しかもお互い同じAB型と血液型が同じ。 
偶然だろうか、それとも運命だろうか、、、、

そんな親友にこの前酷い言葉を浴びせてしまった「お前まじでダサいよな〜」

多分その時の話で盛り上がりノリで言ったと思う。でも本人は相当傷ついた様子だった。

僕は普段あまり人の悪口を言わないし、馬鹿にする事もしない。勿

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平静

平静

「まま〜〜どうして大人の人たちは戦ってるの?」と六歳の子供が無邪気に聞いた。
それに対し母が「それはね正輝、、、、その人達にとって大切な人たちを守る為に戦ってるのよ」と答えた。正輝はお母さんを真っ直ぐに見つめていた。第三者から見たらそれは母を慕う子ではなく、先生と教え子のように見える。母はあまりに正輝の澄んだ綺麗な目を見ている内に本当の事を言えない情けなさに押し潰されそうになった。
本当は戦争とい

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日常の終わりに

日常の終わりに

 「あれだけ泣いたのは初めてかもしれない。」
歳を重ねるにつれて、あの日の出来事を鮮明に思い出せなくなっていく。そして、思い出す度に涙する自分に嫌気がさしていた。皆さんは身近の人の死を受け入れることができるか。鋼のようなメンタルを持っている人は別かもしれないが、、、
私はすぐに受け入れられない。一年半、二年も経てば流石に受け入れ慣れるのだが、それがどうにも怖い、怖いのだ。そう、まさに恐怖を目の前に

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