愛慕
自惚れていた。
叶いそうで叶わなかった恋。
叶うはずだったのにが正しいだろう。
そうやって小学生の時の恋愛の失敗を夜に
思い出しては涙するのが日課になっていた。
中学生にもなって未だに初恋の相手を忘れられずにいた自分がいたことにまだ気付けていなかった。ここで初恋の相手をSさんと仮定しよう。
小学生五年生の始業式の時、僕は同じクラスのSさんを好きになった。Sさんは僕より少し背が高く、足が速くて、綺麗な黒髪だった。幼稚園から一緒だったが好きになる前まではそこまで気になっていた訳ではなかった。ただきっかけはある。
それは、小学三年生の時の給食の時間に僕はその子の近くで食べていた時に、隣に座っていた友達が「Sって〜好きな人いたりするの〜?」と小学生あるあるな話題になった。その話題になった瞬間僕は思わず口に含んでいた牛乳を吐き出しそうになった。正面には当時クラスで二番目に可愛いと言われていた女の子がいたので、前に向かって牛乳を吐いていたら明日からの学校は四面楚歌だったと思う。本当に安心した。
そして、牛乳を吐き出しそうになるのを耐えながらチラリとSさんを見てみたらSさんは少し頬を赤らめていた。
「あれ?あれれ?Sなんか顔少し赤いな、気のせいかな」と疑問に思いつつ二度見した。
勿論Sさんはそう簡単に好きな人を言わなかった。でも隣の友達は諦めていなく
「え〜絶対いるじゃ〜〜ん!絶対!絶対!」とSさんに問い詰めていた。しかし、Sさんも負けじと「いないよ〜?!」と少し濁して答えていた。そんな小学生の可愛い押し問答が繰り返されてついにSさんが折れ、好きな人を答えようとした。
流石の僕も気になって仕方なかったので、箸を止めてSさんに集中した。Sさんは少し恥ずかしそうに口を抑えて僕の方を指差した。この話を聞いていた五、六人は僕の方を見て驚いた。
しかし、一番驚きたいのは僕だ。開いた口が塞がらないとは正にこのことを言うのだろうか。
僕は嬉しさのあまり、思わず席を立って廊下を走ってトイレに駆け込んだ。指を差された時からもうSさんと目を合わすのが難しかった。給食の後の授業でも僕たちは上手く目をあわせられず、会話もなんだかぎこちなかった。
それ以降僕はSさんのことが気になり始め、小学五年生の時に同じクラスになり運命を感じて好きになってしまった。
ほろ苦く淡い恋がメリーゴーラウンドのように
ぐるぐる僕の頭の中を回った。
目を覚ますと目覚まし時計はは6:00だった。
7:00から部活の朝練があるので、いつもこの時間に起きていた。「やべ!今日朝練ランメニューじゃ〜ん!まじ最悪やんけ」と文句を垂れながら起きた。リビングのテーブルにはご飯が用意されていた。「いただきます!」と手を合わせて言い、箸を持って野菜から食べた。
「あれ?夜寝てた時なんか夢見たけど気のせいかな〜?Sに恋していた時の夢だったような、、、
まぁ気のせいか!」なんで給食の時間中に告白された時、「僕もSが好きだったんだよ!」と言えなかったんだろう。と考える時はたまにある。
でもあの時に「すき」という二文字が喉の奥で詰まって言えなかった。もし言えたらこの恋は叶っていたのだろうか、と後悔していた。
朝ごはん中に考えることではないと切り替え、白米を箸で取った。白米はまだほんのり温かかった。
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