図らずも二軒の住宅とも今から約100年前の設計で建築家の手になるものです。 二つの住宅の設計者は聴竹居が藤井厚二、シュローダー邸がヘリット・リートフェルトで同じ年の生まれです。 これは1920年代の世界的なデザイン芸術運動に影響された設計と言えるでしょう。片や遠方に居て影響された人、リートフェルトはまさにその運動の中心人物という違いはあるものの同時代人ということです。 1920年代はデザイン・芸術にとって画期的な10年でした。ドイツのバウハウスやオランダのデ・
写真:西村良栄 著 [ 京都「木津川」のお昼ごはん ]文化出版局 (昭和59) より ローマに3年半暮らした私の経験からまずイタリアの住宅について見ていきたいと思います。 古代ローマより住宅は石やレンガそして天然のセメントを原料としたコンクリートで作られてきました。その組積造の壁式工法による住宅は、もちろん日本の木造軸組み工法のそれとは大きく異なります。 イタリアでは木は十分には育たず、建築に使う材料は豊富に存在する石やレンガ、コンクリートが適当であると言えます
映画 『麥秋』(松竹映画 1951年) 脚本 野田高梧、小津安二郎 監督 小津安二郎 麥秋 (shochiku.co.jp) キャスト、あらすじ 参照 鎌倉に住まうお医者さん一家の話です。医者夫婦と子供2人、医者の両親(老夫婦)と妹(小姑)の七人が木造二階建ての伝統的な日本家屋に暮らしています。一階は台所、ふろ洗面所があり、皆の集まる茶の間、医者夫婦と子供のスペースとなっています。二階は老夫婦と小姑の部屋があります。そこで起きる家族の出来事です。 以下の写真は映画よ
化学物質過敏症の人のため家 湘南の家-Ⅰでは立体的ワンルームのいきさつについて述べました。日本人のため家の計画では大切なことで、特に子育てのためには個室を作らないことは大切なことと思われます。 ここではもう一つの要望である化学物質過敏症のご主人のための対応について述べてみます。 ご主人は、古い家の掃除をして埃を吸い、突然、化学物質過敏症になりました。当時、問題になっていましたが、新建材の接着剤や塗料の溶剤や、材木の防腐剤、などに反応して喘息のような症状を起こして
立体的ワンルームのある家 もう、だいぶ前の設計です。夫婦と小学校低学年の姉妹 4人のための住宅です。 与えられた条件は土地と予算、*1 子供が帰ってきて自分の部屋に入っても気づかないような家の構造ではないこと。 *2 化学物質過敏症の夫が普通に暮らせる家であること。でありました。 土地と予算の条件から、必要な床面積を得るには3階建てにすることが決まりました。また、建物の構造は、木造で3階建ても建てられますが、防火の制限上、窓が大きく取れないため鉄骨造としまし
古家にこそ個性を生み出す可能性がある。 令和4年4月20日の投稿「新築ばかりが選択肢ではない」では建築費の高騰や、IT革命により雇用の先行きが見えず、20年30年のローンの利用が現実的に不可能と考える人が増え、より安く家を手に入れるには中古住宅の購入が一つの選択肢となりえるのではないかと分析しました。 現在、800万戸を超える空き家が日本には存在します。しかし、より古い住宅はデザイン的にも環境的にも現在のものより劣ったと考えられています。しかし、その分、購入価格は
( Instagram : 8028.arcanova もご覧ください。) 今から30年ほど前の設計です。 『婦人公論』(1994年6月号)にグラビア記事、2世帯住宅はおもしろい「カラフルで楽しい家」と掲載されました。その記事を引用してみましょう。 (以下、引用) 広い食堂に集う 世田谷の砧は、東宝撮影所のあるところとして知られています。N氏は、父親が撮影所
設計家の悩み事 これまでの投稿(Note)で、長い間家づくりの基本だったことの多くが、新築の住宅では軽視されていることに、疑問を提示しました。設計する側が当たり前に配慮するべきことが、価格競争などの理由で、無視するか、安易に代替え案を採用する傾向にあり、家の耐久性への不安や、住人の健康や子供の成長に問題があるのではと憂慮されます。その不安項目を簡単に箇条書きにまとめてみました。 1) 雨の多い高温多湿な気候の家とは。 2) 土に密着した家とは。 3) 日本人の家族
8028.arcanova (Instagram) アルカノーバ 建築どこでも設計団 日本にない、日本の家 健康で和やかに暮らす家 日本の自然と伝統に基づく でも、新しい たった一軒の家 お問合せはInstagram : 8028.arcanova のDMにお願いいたします。 日本の自然と家の形。健康に暮らす家。和やか暮らす家。など、時代の変革につれて変化する家の形
便利になるとは、何か捨てたものがあるということ (写真は Enoteca online 日本 より引用) 敗戦後、長い間続いた伝統的で理にかなった方法を捨て、工場での大量生産、テレビに流れるCMにつられた大量消費の時代へと大きな社会変革が起きました。スーパーやデパートなどの新しい商業形態の成立に促されるように、生産の計画性を重視する形態に移行しました。 我々消費者は「古いものは打ち捨てられるべき」という観念が植えつけられ、新しいものが未来を作るという催眠術に掛けられた
日本の食は大丈夫 以前、和歌山の物産を売るマーケットで梅干を買おうとして、包装に貼ってあるラベルを確かめた。たくさん並ぶ梅干の中で保存料の入っていないものは一種類しかなく、唖然とした。梅干は完璧な保存食で正しく作ったものは腐ることはない。何年もたって干からびて、塩が結晶となっているものも食べられる。 保存料が入っているのは、正しく作ってないか、あるいは、最近の習慣で機械的にそうしているからだと思う。 スーパーへ行くと、どの食品加工品にも何らかの添加剤が入っていま
イタリアの食とアート 私はイタリアのローマに3年半暮らしました。もうだいぶ時間が過ぎ‘昔は’という言葉が相応しいくらい昔になりました。最近はYouTubeはじめインターネットに海外の映像や情報が溢れ、外国が身近になったような気がします。 生活して体験したことを基にそれらの情報を見てみると、イタリアの変化は大変に緩やかなように感じられます。日本と違い戦争による断絶がないので、より変化が少ないのかもしれません。 マンジャーレ、カンターレ、アモーレ(Mangiare
子育ての家 前回「最近の流行り-Ⅰ」で高気密高断熱の家について考えを述べました。本来、家の温熱並びに空気環境はCO2 の排出量で決めるべき問題ではないと思います。その時々で建築の仕方に不都合がある部分を暫時改良してゆくことで環境を確かめながら進めるのが本道のはずです。 昔、壁は土壁でした。断熱効果、湿度の調整効果も適度にありました。遮音もでき、その環境中で日本人は長い間、馴染んで暮らしてきました。自然環境と家に日本人の体は作られてきたのです。 それが高度成
住宅を冷暖房費で評価? 最近の家づくりでは高気密高断熱住宅が流行である。CO2の排出量の削減が国際的な公約となっており、政府の政策に則って高気密高断熱住宅が盛んに作られ、その性能が高ければ正義のようである。断熱性能は数値での差別化が簡単であり、宣伝効果が大きく、住み手はそれを住宅取得の判断基準にしているようです。 高気密高断熱住宅で冷暖房費が安く、快適(?)に暮らすことが評価の全てでしょうか?(もちろん、デザイン的に満足する住宅であっての上のことです。) 今
形(ハード)より住まい方(ソフト) 健康に暮らす家で土に接した生活が大切なことを述べました。土に接して体を電気的に地面と同調させ、地球の持つ磁場のエネルギーを受け何十万年の時を掛けて体を作ってきたのが人間です。しかし、最近都会では高層のマンション暮らしも珍しくなくなり、体を作ってきた環境から外れ、めぐりが狂って慢性病になるのではと考えてしまいます。健康を維持するには5階以上の高層階に住んではいけないという意見もあります。 ローマ近郊テヴェレ川河口の遺跡オスティアに20
日本人の住まい方 昭和26年(1951年)の小津安二郎の映画「麦秋」を見た。70年前の映画とはいえ、小津は日本人の家族を見事に描き切っており、小津と共に脚本を書いた野田高梧をもって「『東京物語』は誰にでも書けるが、これはちょっと書けないと思う。」と言わしめた作品であり、世界に誇る小津映画の傑作である。 この鎌倉に住む医者の家庭を日本人の家族の原型とみなせないだろうか。もちろん当時の庶民の生活からすると裕福な家庭であり、農家の生活とはかけ離れてはいます。しかし、電車で