世田谷の家
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今から30年ほど前の設計です。
『婦人公論』(1994年6月号)にグラビア記事、2世帯住宅はおもしろい「カラフルで楽しい家」と掲載されました。その記事を引用してみましょう。
(以下、引用)
広い食堂に集う
世田谷の砧は、東宝撮影所のあるところとして知られています。N氏は、父親が撮影所に勤務していたことから、この地で生まれ育ちました。近所とのお付き合いも古くから続いています。黄色いドアーとブルーの屋根がおしゃれなN氏邸は、周囲の人たちにも人気だとか。
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家族は、夫婦とN氏の両親の4人。住み慣れた家を建て替えるに際し、カラフルで若々しい印象の二世帯住宅をけいかくしましたが、両親夫婦は、今までの暮らしを大切にしていきたいと、部屋の様子を以前のまま、そっくり移すことを要望しました。そのせいか、まだ建て替えて間がないにもかかわらず、両親の寝室となっている和室は、しっくりと生活になじみ、落ち着いた雰囲気が感じられます。
飲食関係に勤めているN氏夫婦は、どちらかというと夜型の生活パターンになりがち。そのため夫人も、週2~3回くらいしか料理を作れないということでした。しかし、友人が多く、家族で一緒に迎えられるよう、台所・食堂を思いきり広くとりました。
またシステムキッチンに関しては、共用する母親と夫人が一緒にショールームに出かけ、選びました。台所・食堂の天井は、トップライトにしているため、柔らかい光にあふれています。床は木のフローリングで床暖房となっているので、暖かく清潔感があります。
2階の夫婦の寝室の横には、洗面台のとなりにサブキッチンを設け、夜遅くなっても簡単なものなら作れるようになっています。また、2階には、来客用の和室があり、重宝しているそうです。
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N氏の家族は、2世帯住宅というよりは、1世帯に近い使い方をしています。台所・食堂がパブリックスペースとなっていて、両親夫婦と時間のズレをカバー、友人もここで迎えるという気楽さが、カラフルで軽やかな家づくりに結びついたといえます。
(以上、引用)
N氏とその両親、夫人の同居という課題に、限られたスペースではありましたが、大変合理的に設計されたと思います。
また、N氏は学生時代デザインの勉強をしており、ここに建っていた古い家の夫婦の部屋をピンクとブルーに自らペイントして暮らしていました。
そこで家の設計に色を使うことの抵抗がないと考えキッチンのグリーンとイエローを基調の色彩計画を提案しました。
また、ガラスブロックを使いたいとの思いを、階段で実現しました。
デザイン的には流行りのモチーフは使わず、窓や扉、ガラスの間仕切り、手すりや庇を自分なりに工夫しました。稚拙な部分もありますが、おかげで、今見てもさほど古さを感じさせない家に仕上がっていると思います。
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