ナルミニウム(麻花兒)

現在地📍台北 ✉️ 763nium@gmail.com

ナルミニウム(麻花兒)

現在地📍台北 ✉️ 763nium@gmail.com

マガジン

最近の記事

かくして床屋通いは続く

なんということだ、この記事を書いてから早3年半が経とうとしている。 連載として書こうと意気込んでいたものの、当時の私は文章を書く気になれず、あっという間に月日が流れてしまった。(他のことは書いていたものの……) あの記事のその後はというと、福岡では本当に床屋に通い詰めていた。 「真心込めたカットの店 ドリー夢」にも実際に何回か足を運んだ。 最初は“女性のショートカットヘアー”の容貌で床屋の戸を叩いていたが、快く受け入れてくれるお店は決して多くなかった。 「うちは男性の髪し

    • 你好,再見

      投稿の止まったSNSアカウントを交換するのは、私とその人の間に関係の記憶という細い糸を伸ばすかのようだ。 外を歩くだけでもクラクラするくらい暑かった台北の夏は、中秋節を過ぎたあたりからはいつの間にか涼しくなっていた。 日本に住んでいるみんながあのぎゅっと冷たくてあたたかい風吹く秋の始まりをSNSで知らせる中、こちらは日々梅雨のように雨が降っていた。 9月17日(四)は中秋節だった。 新月を1日とする旧暦の8月15日、新暦(太陽暦)との齟齬がうまれ毎年中秋節の日はバラバラで

      • 語学、言語、言葉、人、人、人

        台北という新たな土地での暮らしをまるで映画のようだと感じていたのは、登場人物の少なさにあったかもしれない。 少しずつ、少しずつ、私の生活物語の登場人物は増えていた。 登場人物が増えるとそれは生活になっていく。 語学学校が始まって2週間が経つ。 中国語を学びに世界各国からたくさんの人が集っているという、今までの私の人生で全く出会わなかった初めての光景に圧倒された。 母語が違う私たちが中国語を勉強するという、同じ目的のために集う同學の存在は鼓舞させるようだ。 師範大学の語学学

        • 台北流行音楽中心|アジア音楽フェス「JAM JAM ASIA」

          アジア音楽のフェス「JAM JAM ASIA」 二回目の禮拜天(日曜日)、台湾に来て初めての音楽イベントに行った。 「JAM JAM ASIA」は台湾を中心に日本、韓国、タイ、ベトナムなどのアーティストが集結するアジア音楽のフェス。 場所は台北市の少し外れにある「台北流行音楽中心」で行われ、会場は室内メインという、まだまだ夏が続く台湾ではありがたい形で見られるフェスだった。 「台北流行音楽中心」の立地と会場の雰囲気は東京でいう有明のような感じで、コンサートホールに複数のラ

        かくして床屋通いは続く

        マガジン

        • 床屋を行く
          2本
        • 台湾生活記
          4本
        • アジア音楽探訪
          1本
        • 推察
          12本

        記事

          禮拜一から禮拜天

          地下鉄の駅を出たら夏が続いていた。 飛行機に乗ってしまったらもう降りられない。始まるしかない新しい生活は飛行機の機体がバック走行ができないのと同じようなものだ。 川が流れていくように身を任せ、辿り着いた台北という場所では感傷さえ忘れるほどけたたましいバイクの音が鳴り響く。 太陽が照りつける時間、歩いているだけで何かを吸い取られていきそうなくらい暑いこの地での一週間はあっという間に過ぎた。 シェアハウスに着いた日にルームメイトの2人が同時に家を離れた。8月の終わり、学期の終わ

          雑記 家鄉にて

          いつもの時間になって勉強用のノートを開けどなんだか今日は何もする気になれなかった。最後の夜だからなのか。 実家での約2ヶ月は案外悪くなかった。 山の麓にある新興住宅地は知らない間に全ての区画が埋まっていて、幼き私に暗闇をおしえてくれていた真っ暗な夜もいつの間にか街灯がついて明るくなってしまった。 だけど星々は今日も空いっぱいに瞬く。それが私の決して良くはない視力でもはっきりと見える。 夜は暑いけど窓を開けて扇風機で過ごす。寝ていると虫の声が聞こえてくる。のぼる朝日も沈む夕日

          SEVENTEENという櫂でわたしの舟を漕ぐこと

          3月30日。 私は街のど真ん中で泣いていた。この街に唯一残っていた私の心のオアシスが、75年の歴史に幕をおろす前日のことだった。 その映画館で私は最後にチャップリンの黄金狂時代を観た。SEVENTEENのライビュですら満席にはならなかった劇場は、最後になって初めて満席になった光景を見た。上映中はそこかしこから笑い声が聞こえ、"THE END"の後には拍手が巻き起こった。 今ここにいるのか、過去の亡霊になってしまったのか、感情移入か、はたまた自己愛か、わからない私がひたすらに泣

          SEVENTEENという櫂でわたしの舟を漕ぐこと

          Vernon of SEVENTEEN論考

          これは約1年前、私がBeg For Youリリース1周年記念に寄せた記事の中で書いた冒頭の一文である。 これはどういうことなのか、 私はBeg For Youの記事で答えを出していない。 当記事はVernonがアーティストとして創造する音楽の先に何があるのかを模索する試みであり、私個人がVernon of SEVENTEENに見た世界の共有である。 まずはじめに、Vernonが我々に提示する音楽は常に時代とともにある。彼の音楽を読み解くには時代の話から始めなければならな

          床屋探訪の記事等でフォローしてくださってる人には申し訳ないんですが、まだまだSEVENTEENのことしか書けないなと思うので気軽にフォロー外してくださいね。 ちなみに床屋には通い続けています。いつかはまた床屋探訪記再開できたらいいなと思ってます。

          床屋探訪の記事等でフォローしてくださってる人には申し訳ないんですが、まだまだSEVENTEENのことしか書けないなと思うので気軽にフォロー外してくださいね。 ちなみに床屋には通い続けています。いつかはまた床屋探訪記再開できたらいいなと思ってます。

          キャンセルカルチャーに思うこと―Lizzoの件に寄せて

          フジロックに行った。 3日間のどれがベストアクトか選べないくらい多幸感あふれる豊かなライブの最後に、全ての記憶を塗り替えるくらいLizzoのステージに感動し号泣した。 生きる希望と勇気を、心のハグを、大きな愛をもらった時間だった。 配信がなくてよかったと思った。現地の、あの空気感のライブならではの感動がたくさんあった。 ライブ中、モーメントとなるようなこともたくさんあった。 それを見ながら、きっと後でTwitterで拡散されるだろうなと思ったと同時に、情報となって広まることで

          キャンセルカルチャーに思うこと―Lizzoの件に寄せて

          道化とわたし―JUN 'PSYCHO'に寄せて

          2023年7月4日1:00(CST 0:00) 脳天を撃ち抜かれる衝撃だった。 内臓が焼き尽くされ自分が灰になったようだった。 何かを言葉にしようとすると何もかもが陳腐で声が出ず、他者の声すらしばらく塞いでしまった。 まるで世界がPSYCHOと私だけになったように、一歩も動けずずっと時に閉じ込められている。 鼓動はずっと速いままだ。どうやら私は生きているらしい。 訳 PSYCHOを前に私は無力だった。 JUNが紡ぎ歌う中国語の美しさに心奪われた。でもそれはただ単に「中国

          道化とわたし―JUN 'PSYCHO'に寄せて

          水無月の晴れ 月夜の晩のBaby

          ジュンさん 欲しいものなんてそんなにないよ、何にもないよ。 この広い地球上で幼き青年の日のあなたがPledisと出会い、中国は深圳から韓国・ソウルに渡り、12人の仲間たちと切磋琢磨し、SEVENTEENになって邁進しながら大人になっていった年月の先に、日本に住む私という1人の人間の人生と重なり、今日あなたの誕生日を祝うことができる奇跡だけで十分すぎるんだ。それが全てなんだ。 でもそう言えるのは、私たちファンがジュンさんにいつも沢山のものを貰っているからで、なんて身勝手なことを

          水無月の晴れ 月夜の晩のBaby

          2023.5.18 SEVENTEEN 2023 JAPAN FANMEETING 'LOVE' OSAKA

          怒涛の日々を過ごしていたらいつの間にか5月16日の深夜になっていた。 服やスキンケア用品に加え、ペンライトとうちわ、せっせと作ったソンムル、そしてチケットを、次々とキャリーバッグに押し込んだ。 連泊する旅行でも大体バックパック1つでどこにでも行く私がキャリーバッグを使うことは滅多になく、バックパックにはとても収まりきれない目の前の荷物を見つめながら、SEVENTEENに会いに行く自分のCARATとしての存在を実感していた。 5月17日、住んでいる街も大阪も見事な晴天で、SE

          2023.5.18 SEVENTEEN 2023 JAPAN FANMEETING 'LOVE' OSAKA

          Beg For You/CharliXCX(A.G.Cook & VERNON OF SEVENTEEN Remix)[feat.Rina Sawayama]とは何だったのか

          Vernonにおける音楽とは精神性だ。 そう感じてやまないのは彼のソロ曲である『Black Eye』の発表以降より強くなった。 彼の音楽について言葉を付随することはナンセンスなことかもしれない。 作品を通して「勝手に論じるな、ただ感じろ」と言われているような気もする。 それでも私はこの記事を書きたい。 なぜなら、彼の作品を語ることはVernonという人物自体を捉えることを意味すると思っているからだ。 今から綴る文章は作品を通じてVernonという人物の輪郭を捉えることを

          Beg For You/CharliXCX(A.G.Cook & VERNON OF SEVENTEEN Remix)[feat.Rina Sawayama]とは何だったのか

          2022.11.26 SEVENTEEN WORLD TOUR [BE THE SUN] - JAPAN in TOKYO DOME

          暗転した。 笑顔で歌う彼らがサイドの大画面に映し出され、音量が上がる。 DreamのMVだ。 会場は一瞬で熱を帯びた光の海に変わった。 見渡せば天まで光り輝くCARAT棒の海に、夢のような現実をみた。 Dreamの歌詞の意味をやっと理解した瞬間、私は彼らの登場前に号泣していた。 そこは新境地だった。 私が人生で初めて訪れた東京ドームという場所は、彼らにとっても初めての場所だった。 まるでコロンブスのように、SEVENTEENとCARATは共に未知を切り拓いたのだ。 なん

          2022.11.26 SEVENTEEN WORLD TOUR [BE THE SUN] - JAPAN in TOKYO DOME

          zine『推察の推察』振り返り

          昨年の10月に、友人の世菜さん と共作で「推し」にまつわるzineを作りました。 私はK-POPアイドルグループSEVENTEENの“箱推し・布教欲オタク”、世菜さんは某声優の“ガチ恋・同担拒否オタク”という、ジャンルも違えば推し方もまるで真逆の2人が、互いの違いや共通点を発見しながら、時に孤独に、時に共に、葛藤し、喜び、自己に気づかされながら「推し」という手の届かない他者を思うことに向き合った、合計9万字超え熱量120%のzineになりました。 そして今年の4月、第2弾と

          zine『推察の推察』振り返り