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床屋を行く

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日本で、そして台湾で。 昔ながらの床屋に通った記録。
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台湾・初の散髪

台湾・初の散髪

日が暮れかけていた。
午後6時過ぎ、訪れた理髪店の入り口はガラス張りだった。
中を覗いてみると、奥のソファでおばさんがテレビの方を向きながら寝ていた。
「請問…(すみません)」と声をかけてみても起きる気配はなかった。
その日は諦めて店を後にした。

翌日、今度は6時前に向かった。
ガラス張りの入り口からまた中を覗いてみる。
昨日と同じ姿勢でソファに深く座っていた。
今日も寝ている?と思ったがよく見

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かくして床屋通いは続く

かくして床屋通いは続く

なんということだ、この記事を書いてから早3年半が経とうとしている。
連載として書こうと意気込んでいたものの、当時の私は文章を書く気になれず、あっという間に月日が流れてしまった。(他のことは書いていたものの……)

あの記事のその後はというと、福岡では本当に床屋に通い詰めていた。
「真心込めたカットの店 ドリー夢」にも実際に何回か足を運んだ。

最初は“女性のショートカットヘアー”の容貌で床屋の戸を

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かくして私は床屋へ足を踏み入れる

かくして私は床屋へ足を踏み入れる

今まで私は、おしゃれな美容室に縁のない人生を送ってきた。

私は佐賀県伊万里市という田舎に生まれ育った。
幼少期は家の真向かいにあった、「前田のおばちゃん」の美容室に連れて行かれていた。赤いベルベッドのソファ、フランス人形、折り紙で作ったモビール、色褪せた柄の床、パーマ液のにおい、くるくるパーマの前田のおばちゃん。そんな場所だった。
小学校に入ってからは、母の知り合いの美容室に親子で通っていた。か

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